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第26話:下暮温泉リターンズその二

 土曜日になりました、クロウです。

 温泉に行くメンバーはモモグリさんの家に集まり、サワヤさんの大きな車に乗り込みます。

 運転手は勿論モモグリさん。他人の車を運転するのに興奮しているのかテンションが高いです。

「っしゃあぁぁッ! 出発するわよッ!」

「安全運転で頼むぞ」

 助手席にサワヤさんがいるので運転に関しては安心です。白バイに追われるような危険プレイはしないでしょう。

 だがしかし、後部座席にいるボクの方には心配の種があるのです……。

「ふっふっふ……もう逃がさないわよクロウ君……」

 不気味に笑いながらボクを抱きしめるシオダさん。苦しいし暑苦しい。会いたくなかった……。

「あ〜紺ちゃん、あまり激しいプレイは行わないように。クロウ君死んじゃうから」

「オッケーオッケー、そのへんの加減は理解してるつもり!」

 激しいプレイってなんのことでしょうか。とてつもなく嫌〜な予感がするんだけど……。

「クロウ君、まず手始めにポッキーゲームでもしよっか」

 …………。

 な、なんだってぇぇッ!

「無理です無理ッ! チューは無理ですってば!」

「チューじゃなくてポッキーゲームよクロウ君」

 そう言ってポッキーをくわえたシオダさんが近寄ってくる。

 いや、もうマジで無理です! 泣きたい! ポッキーアレルギーに今すぐなりたい!

 ふと隣を見ると、そこには青ざめた表情のリファがいた。

「どうしたリファ? 死にそうな顔してるな」

 心配になったサワヤさんが声をかけたが、リファは何も反応しない。

 まさかと思ってボクはリファの背中をさすってあげた。

「リファ、また酔ったんでしょ……」

「…………」

 リファは泣きそうな顔で頷いた。

 リファは昔から乗り物酔いが激しくて、特に車に弱かった。おかげで小さい頃に『泣き虫リファ』の他にも『ゲボリファ』というあまりにも直球すぎるあだ名をつけられたほどだ。

 別の誰かはリファのことを『ゲロマスター』と呼んだ。子供って残酷だ。っていうかこれは伏せ字にしなくてもいいのだろうか。

「大丈夫よリファちゃん。手のひらに『人』っていう字を書いて飲み込めば落ち着くから」

 モモグリさん、それは違うと思う。

「そうじゃないわよ秋子。『米』っていう字を飲むのよ」

 シオダさん、それはもっと違う。

 ……って、リファが必死になって『米』を飲んでいる……。こんな話を信じるなよ。


 しばらくして高速道路に入った。

 モモグリさんはサワヤさんの監視のおかげか、わりと安全な運転をしている。それ以上にリファが酔っているから無理な運転をしないんだと思う。ヘタに刺激を与えちゃマズいもんね。

 リファは涙目になりながら背もたれを倒して休んでいる。モモグリさんの安全運転によってギリギリ耐えているような状態だ。でも、さっきからピクリとも動かないのはなんでだろう。

 さて、残るのはシオダさんだが、シオダさんはボクを自らの膝の上に座らせている。小さな子供が親の膝に乗るような感じだ。

 で、さらにずっと抱きしめられている状態だ。苦しいし暑苦しいし動けない。幽霊になりたい気分だ。この腕をすり抜けたい。

「第一回ドラマチックしりとり大会〜!」

 突然モモグリさんが意味不明なことを叫んだ。

「ルールは簡単、ドラマにありそうな台詞をしりとりで繋げていってドラマチックに物語を作ろうというゲームよ。最後に『ん』が付いたり台詞じゃなかったら負けね」

 なんてしょうもないゲームだ。

 でもシオダさんはノリノリだ。サワヤさんもまさかのやる気満々だったりする。リファは当然始める前からリタイアだ。

「じゃあまずはわたくし桃栗秋子から! いきます!」

 ちなみにボクはやる気がないけど、この雰囲気からすると強制参加っぽい。なんてこった。

「『今日は彼氏と初めてのデート。ちょっぴり緊張しちゃうわ!』の『わ』! 次、和夫!」

 うん、まあ普通な感じの出だしかな。

「『わりぃ、遅刻しちまった!』の『た』で」

 おお、繋がってる!

 続いてはシオダさんだ。

「『タッ君たら仕方ないわね。でも私も今来たばかりだから大丈夫よ』。はい、クロウ君」

 彼氏の名前はタッ君らしい。

 次はボクか。とりあえず頑張ろう。

「『よかった、怒っているんじゃないかと思って心配してたんだ』……っていうのはどう?」

「オッケーよ!」

 よかった、なんとか切り抜けられたみたいだ。

 リファは参加していないのでモモグリさんの番に戻る。

「『大丈夫、私はタッ君に怒ったりしないんだから!』」

 で、サワヤさん。

「『ラーメン食いに行こうぜ』」

 と、唐突だね。彼女とデートなのにラーメン屋に行きたいのかタッ君。

「『絶対イヤよ。立ち食いそば屋の方がいい!』」

 いや、それもどうかと思うよシオダさん。

 ……っと、ボクの番か。

「『意味不明なことを言うな!』」

 今のボクの気持ちです。

 さあ、次はモモグリさんだ。

「『なんですって! 意味不明なことってなによ、も〜!』。次は『も』ね」

 なんか喧嘩になってるね。

「『もうよそうぜ、こんなくだらないことで喧嘩するなんてさ』」

 タッ君大人だなあ。

「『最低!』」

 いや、せっかく仲良くしようとしてるのに彼女最悪!

 しかもこの次はボクだし! どう切り抜ければいいんだ!

「『いいかげんにしてくれや』」

 うん、マジで。もっと良いパスをちょうだいよシオダさん。

 そしてモモグリさんだ。

「『やっぱり喧嘩はやめよう……。仲良く遊園地に行こう?』」

 お、仲直りの方向に進んでいるね。いい展開だ。

「『うん、そうだな』」

 よかった、仲直りしたみたいだ。

 シオダさん、今度こそナイスパスをちょうだい!

「『……なんてな! 誰が貴様とよろしくしてやるかってんだ!』」

 だからなんでいちいち破局への道に導くんだよッ! キラーパスをよこさないでください!

「『だから仲良くしようって言ってるだろ! まったくも〜!』。『も』で」

 さっきからボクの本心しか言ってない気がする。

 と、ここで休んでいたリファがゆっくりと手を挙げた。途中参加したいのかな? まだ気持ち悪そうだけど大丈夫なの?

「『も、もう、ダメです……』」

 大惨事になりました。


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