第24話:勝手に肉じゃが試合
「ニンジンっ♪」
「ニンジン」
「玉ねぎっ♪」
「玉ねぎ」
こんにちは、桃栗秋子です。
今私は料理をしながら歌っています。クロウ君には復唱させています。勿論ノリが悪い方がクロウ君です。
「ジャガイモっ♪」
「ジャガイモ」
「お肉っ♪」
「お肉」
「お鍋でっ♪」
「お鍋で」
「煮込めばっ♪」
「煮込めば」
「ハイ出来上がりっ♪」
肉じゃがが出来上がりました。別にカレーを作ってたわけじゃないからね。
お袋の味代表肉じゃが選手、容器に盛り付けられて入場です。
に〜くじゃが! に〜くじゃが!
観客の声援で会場に熱気が溢れております。さあ桃栗選手とクロウ選手、箸を手に持ちました。
「いただきますっ!」
「いただきます」
そして今、試合開始のゴングが鳴りました!
桃栗選手、まずは牽制でニンジンを取った。そしてそれを口に入れる。
「お、美味しい……!」
ニンジン美味しいーッ! ニンジン自体の甘味、それに肉じゃがのつゆが染みて絶妙な味をかもし出している! 美味しいですっ!
「…………」
おおっと、クロウ選手は黙々と食べていやがります。美味しいとかそういう感想は一切なく、試合開始からずっと黙っています。テンション低いです。
ここで桃栗選手、攻撃に出ました。なんとクロウ選手が狙っていたジャガイモを素早く奪い取ったーッ!
クロウ選手、心なしか不機嫌そうな表情を浮かべております!
さあクロウ選手、今度は肉に手を出した。つゆが滴り落ちてとても美味しそうだ。
おおっと、またしても桃栗選手が動いた! 素早い箸さばきでクロウ選手の箸をはたき落としたーッ! 箸と箸が触れ合うのは食事中のマナー違反だーッ!
観客席からはブーイングが聞こえます! 反則だ、退場だなどとそういったヤジが飛び交っています!
さあレフェリーの判定は……セーフだ! 今の行為はギリギリセーフだッ!
観客からは再びブーイングが殺到します! しかし桃栗選手、観客などお構いなしに箸を進めます!
次はプレイに気を付けてほしいものです。退場になったら納豆ご飯を食べる羽目になりますからね。
さて、クロウ選手はご飯につゆをかけて美味しそうに食べています。
これは美味しそうだ。桃栗選手も同じ行動に出ました。
これは、これは美味しいーッ! 適度な甘味としょっぱさ、それにご飯が絡み合うのは反則級に美味しいッ!
あ……なんと! 桃栗選手、むせました! ご飯を勢いよくかき込んでいたせいなのか、ご飯粒が喉の変な所に入ってしまったようです! これはかなりのダメージだ!
「モモグリさん」
「ん、なに?」
「さっきから一人でなにをブツブツ言ってるの?」
「実況」
「は?」
……さて、
そろそろ普通に食べようかな。