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第2話:彼は正直者

 おっはー、桃栗秋子です。古いとか言わないように。

 昨日知らない男の子が来ました。名前はクロウ君。可愛いです。

 なんでもクロウ君は魔法使いなんだって。凄くない? マギーさんのような手品士じゃなくて、ゲームとかに出てくるような魔法を使うんだよ。神秘的〜。

 実際に見せてもらったけど凄かったよ。ゴルフクラブのアイアンを振りかざしたら、ゴルフクラブの先から火の玉が飛び出したんだから。

 私は、

「わースゴい!」

 って言いながらビンタをくらわせてあげたわ。だってアパートが燃えちゃうじゃない。アパートの名前が『よくもえ荘』よ? めちゃくちゃ危ないじゃないの。だからこれは体罰じゃなくて正義の鉄拳だと思ってくれればいいからね。

 そんなクロウ君は今、コタツに入りながら宿題をやっています。ノートに何か書いてます。必死です。そういうの見てると邪魔したくなるんだよね〜。私ってお茶目。

 とりあえず耳たぶをつまんでみる。おぉ〜、ぷるぷるしてる。さらに引っ張ってみる。あはっ、ギリギリいってる!

「モモグリさん。ものすごく痛いです」

 うん、だって痛くしてあげてるんだもん。

「痛いなら回復魔法を使いなさい」

「そんなのないです」

 あらま、そりゃ残念。ホ○ミとかケア○みたいなものを実際に見てみたかったのに。

「じゃあ私が痛みを和らげる呪文を唱えてあげる」

「ウソッ! モモグリさんって普通の人間なのに魔法を使えるの! 回復魔法はないって言ってんのに使えるのもおかしいけど」

「痛いの痛いの飛んでけ〜」

「…………」

 うん、場の空気が冷めた。

「なんですか今の?」

「呪文」

「……おまじないじゃなくて?」

「ハッ!」

 それは盲点だったわ! あいたー!

「ただ、バリエーションは他にもあるんだからね!」

「ふうん」

「アブラカダブラ……」

「ボクは魔法のランプじゃありません」

「痛みよなくなれ〜痛みよなくなれ〜」

「モモグリさん。気持ち悪いです」

「開けゴマ!」

「傷口がもっと開けとでも?」

「死ねっ!」

「逆にボクのピュアなハートをズタズタに引き裂いてくれる見事な言葉ですね……」

 勝った……!

「ところでクロウ君は何をしてるのかなぁ?」

「宿題の日記です。集中してるのでテレビでも見てボクの邪魔をしないでください」

 日記ね……。案外小学校みたいな宿題ね。

 邪魔をしないでください? 無理。だってお姉さん、暇なんだもん。生意気言ってんじゃないわよ。

「ここは美女である私に任せなさい」

「あっ、ちょっと無理矢理取らないでよ……」

 どれどれ……?


――――――


 12月25日(晴れ)


 ボクはモモグリアキコさんという人のお宅に居候させてもらうことになりました。住む所があっさり見つかってよかったです。

 モモグリさんは自らのことを『美女』だと言ってます。たしかに美人だと思います。それは認めます。

 しかし、性格がおかしいです。どこかバカっぽいです。っていうかバカです。パンケーキにポン酢をかけて

「和風!」

っていうのはどうかと思います。


――――――


「こらボケ魔法使い。バカとはなんだバカとは」

「いや、その……。でも前半のくだりは良かったでしょ?」

「『たしかに美人だと思います』でこの私が満足するとでも思っているの! あらまぁありえない。お弁当のおかずに鯛焼きをぶち込むぐらいありえないわ。私を絶賛するなら、こう『世界中の誰もがモモグリさんに振り向き、ゆくゆくはハリウッドスターとの電撃結婚を果たし、最終的には歴史の教科書に名前が残るほどの超ウルトラ美女』とでも記述なさい。さあ、書きなさい!」

 クロウ君は

「え〜っ」

と言ってたけど、ビンタをして黙らせた。そのぐらい書いてくれてもいいじゃないの! もっと私の素晴らしさを全面的にアピールしなさいっての!

 ……うん、書いたわね。よしよし、偉い偉い。

 ――ッ!

 このガキめ! 端っこに小さく『※この日記はフィクションです』とか書いてんじゃないわよ! それじゃあまるで、本当の私は可愛くないって言ってるようなモンじゃないの!

 あ〜もう怒った。あんたが寝てる隙を見計らって、鼻に練りワサビを塗りたくってやるわ。覚悟しなさいよ!

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