第15話:暇な休日
桃栗秋子です。
今日は休日。それなのに雨。まったく、気持ちがブルーになっちゃうわね。
クロウ君はというと、ひたすらに勉強勉強。ふん、つまらない。
暇。
あ〜、暇。
出掛ける気にもなれないし、テレビで面白い番組はやってないし。
あ〜、暇。
このままだとワタクシ桃栗秋子は『暇死』しちゃうわよ。虚しい人生のエンディングよ。
「モモグリさん、ブツブツうるさいよ。勉強に集中できない」
クロウ君め、優等生ぶっちゃって!
そんななんちゃって優等生には、伊達眼鏡をプレゼントしてやるわ!
「うわぁ! め……眼鏡?」
眼鏡をかけたクロウ君……わりと似合うわね……。写メール撮って紺ちゃんに送ってあげよう。
「モモグリさん、暇だからってイタズラするのは良くないよ」
「私はイタズラ好きな小悪魔よ!」
「…………」
「な・に・か・文・句・で・も?」
「文句ありません」
ふん、見苦しいものを見るような痛々しい視線で見ないでよね。
仕方なく黙って週刊誌を読む私。でも二、三ページめくったところで飽きた。だって一回見たんだもん。
ふう、本格的にやることがないわね。本当に暇すぎて死んじゃうわ。
フリージアちゃんがいたら馬鹿みたいな話をして盛り上がれたんだけどなあ。
やっぱりクロウ君をイジって暇を持て余すしかないか。
そう決心すると、私はクロウ君の帽子を引ったくって私の頭に被せた。
「プリティー魔法少女アキコ!」
「…………」
ああ、なにかなその視線。
分かる分かる、ものすごく引いているのよね?
でも無言ってのはよくないわね。せめて『プリティーじゃなくてビューティフルだろ!』っていうツッコミが欲しかったわね。
「モモグリさん、年をわきまえなよ……」
「パンチ!」
「ひぎゃッ!」
そっちのツッコミはいらないのよ。余計なお世話よまったく。
――あらっ……?
ん〜、どうやら私、いつの間にか寝ちゃってたみたい。それほど暇だったってことかな。
私の上には寒くないように薄い毛布がかけられていた。
クロウ君がかけてくれたのね……。お姉さん、その優しいピュアなハートに感動しちゃった。
時計の針は既に夕方の五時を過ぎていました。
台所からトントントンとまな板の上で包丁を動かす音が聞こえる。それと、何かを煮込んでいる音。
この匂いは……シチューかな? なかなか良いものを作るじゃない。
――おっ、今日初めて暇じゃなくなるかも。
「クロウ君、私も何か手伝おうか?」