4.ディナー
食事の席についてからずっと言葉は交わしていない。ティアは幾度かちらりとイヴァンを盗み見た。しかし、漆黒の瞳が感情を映すことはなかった。
空気でさえ、重苦しく感じた。
「………ティアは本が好きか?」
突然投げ掛けられた問い。いきなり呼び捨てで呼ばれたことも、驚きだった。
ティアは戸惑いながら、応える。
「はい。……マティンリ侯爵。」
「……………そうか。」
短い返事だった。イヴァンの口はそれ以上言葉を発しようとしない。
運ばれてくる料理をただ口にする。そんな食事が苦手なティアは、必死に言葉を紡ぐ。
「どうしてそのようなことをお聞きになるのですか?」
「明日になれば分かる。」「そうですか……。」
それ以上の問いを口にしてもいいのか、わからない。ティアはうつむく。本当は、本当に聞きたかったことがあるのに、聞けない。
‘どうして私なの?お姉様達だっていらしたのに。’実のところ、少しだけ期待もあった。もしかしたら、誰もが憧れるようなロマンスを自分は得られたのではないか、と。
貴族の結婚は家同士を結びつけることがほとんど。
マティンリ侯爵にとって、フェアリット男爵家が益をもたらすものはなかった。ある可能性が一つ。
望まれたのかもしれない。ティア自身を。
しかし、イヴァンはまるでティアに興味がないように見えた。少しでも、視線がぶつかったりすれば胸の中に安堵が生まれたかもしれないのに。
だから‘どうして?’という疑問ばかりが浮かぶ。考えているうちに、食事は終わってイヴァンは席を立ってしまう。
メイドの手を借りずに寝間着に着替え、ベッドの中考える。
私はやっぱり買われたのね…………。少しでも期待していたなんて。
微かなため息を漏らした。明日からどんなふうに過ごせばいいのかしら……。
寝室は月灯りだけ。ティアは心地の良いまどろみに誘われるままに、深い眠りに落ちていった。
遅くなりましたm(_ _)m
すみません。
実は、ティア嬢はかなり一人歩きをしています……。というか、二人とも(汗)?
うーん………。
難しいですね(._.)