2.令嬢の決意
あの火事から数日後。幸いにして家族全員無傷だった。屋敷は燃え尽きてしまい、ホテルでの生活を余儀なくされた。
「お願いです。少しだけでもいいのです。」
「申し訳ないのですが、新しい事業を予定しておりまして。……一サータも融資できません。本当に…………。」
ルーベンス子爵は言葉を濁した。ホテルの壁は薄い。そのために応接間の父とルーベンス子爵の会話が聞こえてきた。
お父様、大丈夫かしら。何かできればいいのだけれど……。そう思っても、ティアにできることはあまりなかった。子爵の帰る音が聞こえた。ティアは応接間のドアをノックする。
「お父様……。」
ティアが声を掛けると、父はため息をのみ込んだ。
「大丈夫だよ。お前は心配しないでいいんだ。」
事業の失敗もあって、借金があることもティアは知っていた。
一人だけ融資をする、と言った侯爵の顔が思い浮かぶ。ティアを嫁がせるだけでいい。そんな思いに取りつかれて首を振った。父の葛藤を知らず、ティアは首を傾げた。
娘が五人と嫡子がいれば、お金がかかるわ。お嫁に行けばいいのかしら。しかし、持参金の用意ができないので相手は見つかるはずがない。
「お父様、私にできることはありませんか?」
父は厳しい表情のままに、口を開いた。
「…………婚約という形でティアを望む侯爵がいるのだ。融資の条件は、ティアと引き換えにというもので。多額の融資を約束してくれている。…………しかし、侯爵は人間ではない。」「どういうことですか?」「悪魔族だ。十年前の戦争で人間は支配されるようになった。悪魔族の男に嫁がせる訳にはいかない。」
「私が嫁げば、いくらほどの融資をいただけるのですか?」
「五千万サータだ。」
決意することに、時間はかからなかった。私が嫁げばフェアリット家は救える……。
「私、その方の所にお嫁に行きます。」
父は驚いた様子で、ティアをみつめた。その方が悪魔族でも大丈夫よ。きっと。「しかし、ティア。悪魔族だ。殺される危険だってある。」
「お父様………、私は大丈夫です。だから………。」
しばらくの沈黙。
「すまない、ティア。家を救うために嫁いでくれるか?」
父が涙ぐむ姿を初めて見る。きっと最初で最後だろう。
「はい。」
あの話し合いから四日後のことだった。
あはは(*´∇`*)
操作を間違えて、おかしなことになりまして〜。
やり直し。
詰め込み過ぎました。読みにくかったら、ごめんなさい。
サータは架空のお金の単位です。念のため。




