10.夜空に瞬く
2011年初投稿が、重いです。
ちょっと残酷な表現があります。
苦手な方はご注意くださいませm(__)m
遅くなりましたφ(..)
ある女性が似つかわしくない建物へ、入って行った。華やかなドレスに、目鼻立ちが整った顔立ち。
瞳は少し勝ち気そうな灰紫。
入って行く建物は壮大だが、古めかしく灯りはあまりにも少ない。
「旦那様がお待ちかねです。」
掠れた執事の声に、その女性は頬を紅潮させた。
一番玄関から遠い部屋に向かう。
「お連れいたしました。」
中から返事が聞こえて、通される。
女性はうつむきがちで、何かを待っていた。
「下がれ。」
執事は足音も立てず、去った。
手を引かれ、女性の身体はソファーに投げ出される。男は馬乗りになり、露になった白磁の肌に、歯をたてた。
「…………や。」
痛みはほんの一瞬。そのあとの女性は恍惚とした表情を浮かべている。
悪魔にとって、人間の女の血は美酒だった。
「事は進んでいるか?」
「……はい…!」
男は含み笑いをほんの一瞬だけ漏らした。
女性はキスをねだるように、手を伸ばす。
「褒美だ。」
軽く音を立てて唇が重なり合った。
ティアはぼんやりと、自分が使っているリラックスルームのソファーに座っていた。
父の病の事実を知ってから、数日が過ぎていた。
明日には馬車で自宅に戻る手筈になっている。
病状については何も聞いていなかった。
いや、聞きたくなかったのだ。
お父様はきっと軽い病。
すぐに善くなるはず。そう信じたいのに…………。
あの日の胸騒ぎは止んでいない。
むしろ、ざわつきは大きくなっているような気さえする。
どうして、私はこんなにも無力なのかしら……。
何もできない。
ここに居ても、フェアリット邸に戻っても。
弱くて、ただ、祈るだけ。いつの間にか闇に包まれ始めて、柔らかな月明かりが一筋。
瞬く星はどこか儚げで………………。
神様、父をお守りください……。
「アスキス、奇妙だと思わないか?」
書斎で病状についての文書を見ながら、イヴァンは問いかけた。
「はい。聞いたこともない症状です。医者も首を傾げていると。」
「ああ。体中に紫色の痣ができ、その箇所からの出血。粘膜が極度に弱くなり、少々の刺激での出血。
それだけじゃない。男爵を隔離して治療しているわけでもないのに、新たに発病が確認されない……。」
そこで一旦、イヴァンは息を吐いた。
もし感染する恐れがあったなら、やはり彼女をここに留めようか、という考えもあったのだった。
「最後にフェアリット男爵に会った時、病の"におい"は全くしなかった。」
少しでも病の兆候がある場合、直感的に感じることができる。
互いに黙り込む。頭のある部分に、もやが存在しているような違和感。
「イヴァン様、推測ですが…………。」
「言ってくれ。」
「悪魔による故意なもの、術による呪いではありませんか?」
頭がすっきりと、もやが霧散したようだった。
それと同時に、イヴァンの顔から血の気が退いていく。
「何故フェアリット男爵に術をかける必要がある?」
出てくるのは疑問ばかりだった。
読んで下さる皆様ありがとうございます!
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タイトルはとても悩みました。3つの場面があり、迷いに迷い………。
『夜空に瞬く』に致しました。
これからも遅筆な作者にお付き合いくださいませ。