魔法訓練1
「それで、遅れたっていうわけですか」
ひとまずギルドに帰った俺は、どうにか合流できた少年に詳細を説明した。
「本当、忘れててごめんなさい…」
「いやまあ、ちゃんと依頼を達成できたというのなら別に文句はないんですよ。ええ、何も言いたいことなんてありません」
「それ、言いたいときのやつじゃん!」
「まあそれは置いておいて。そちらの方が言っていた協力者であっておりますか?」
そう言いつつ、少年はラクの方へ顔を向ける。それを感じ取ったらしいラクは、一息つくと、
「やあ、私はラキナという。ラクとでも呼んでくれ。君の名前を聞いてもいいかい?」
そう、少年へ答えた。よく考えたら俺も名前を聞いていなかったな。
「ああ、僕はクランと申します。単独で魔法も使わずジャイアントリザードを倒すなんてすごいですね。」
少年、クランはそう名乗ってラクにしっかりと向き合う。なんだかその目が何かを探るように見えるのはなぜだろう。
「まあ、早く宿へ行きましょう。そろそろ日も暮れてきましたし。食堂付きの安いところを知ってるんですよね。」
「だから、2部屋しか貸せないんだって」
目の前のおっさんはそう言った。
「そこをなんとか頼みますよぉ…ほら、いつも通り働いて返してもいいですからぁ…」
「それに関しては今間に合っている」
「そんなぁ…」
そうぐったりしつつクランが言う。どうやらさっき行ったクエストの報酬ではお金が足りないらしく、食事付きだと今ひとつお金が足りないらしい。
「コウタさん、あなたからも何か言ってくださいよ!」
「いや、俺は別にいいと思うけど」
「ええっ!?」
何せ、前世でも彼女どころか女友達すらできたことがなかったのだ。ラクと同じ部屋になれれば万々歳、クランと一緒でも情報収集くらいならできる。別に部屋の数が足りないなんてどうでもいいのだ。
「ラクさん…どうしたらいいと思いますか…?」
「私は流石に今日会ったばかりの人と一つ屋根の下は嫌だな」
「僕もですよ、こんな得体の知れない人とだなんて」
散々な言われようだなおい。
「はあ…仕方ないですね。僕がさらに一部屋分出すとしますよ。ああ、これで貯金が尽きてしまった…」
「へい、毎度」
あれ?
翌朝、俺はクランに呼ばれて外へ出ていた。
「さて、コウタさん。あなたの異能祝福は確か、魔法を強化するものでしたよね」
「あ、はい」
「それじゃあ、魔法を学ぶ必要がありますよね。と言うことで、今から実践をしてみましょう」
いきなりかよ。
ただまあ、魔法の練習をしてみると言うのは確かに面白そうだ。魔法、異能、それはロマンである。正直剣なんて一切使えないし、学んでおくに越したことはない。
「まずは、魔力が知覚できるか試してみましょうか。何となく体の中の方に集中して、体を巡ってるものを見つけてください。別に血とかでも間違ってはいないので、何か感じられるかとりあえず。」
「うーん…」
言われた通り、体の中の方に意識を向けてみる。血とはまた違った、何となくポカポカする何かが体の中にこもって、巡っているように感じる。
「なんかポカポカしてるんだが、これでいいのか?」
「あ、はい。それです。それじゃあ、いよいよ魔法を使ってみましょうか。それを手に集めて、火の球を作り出す感じで。魔法はイメージですから、より詳しくイメージできる方が簡単に使えるんですけど。」
そう言われて、手の方に魔力(と思われる何かしら)を手のひらの上に集めて、ボール状にするイメージをしてみる。そしてちょっと力を入れると、
「おお…初めてでここまで綺麗で大きいやつが作れる人、初めて見ましたよ。」
そう言われて自分の手のひらを見てみると、ソフトボールほどの炎の球が乗っていた。いや、正確には数センチほど浮いているのだが。
俺は何となく、それを遠くの方にあった岩へ投げつけてみる。
それは爆発を起こし、表面に大きなヒビを入れて焦げ付かせた。
「さすが転生者ですね…異能祝福自体はあんまり珍しいものじゃないのに、火力が普通のものより高い。」
「そうなのか?」
「はい。特に今くらいの時期に送られてくる勇者候補は強めの傾向にあるらしいです。」
そんな話があるのか。
「まあ、これで俺は大きな武器を手に入れたってわけだ。これでなら依頼の時もラクやクランに頼りっぱなしにならなさそうだな。」
「あ、でも、初めてにしてはよくできているとはいえ火力はまだ低いし発動にも時間がかかるので、あんまり調子に乗らない方がいいですよ。」
辛辣だな。
「だけど、何もできないっていうわけではないだろ? じゃあ、クエストとか行って試してみたいんだが。」
「まあ、いいですけど…」
俺はクランの言葉の続きを待たず、ラクを起こしに宿へと向かった。
俺たちは、また森の中にいた。前回のクエストで入った場所とはちょっと違う方向だが、ラクは地図も持たずにすらすらと進んでいく。
「すごいですねラクさん…獣人は森歩きに慣れているのはそうですが、それでも迷わずに進めるだなんて」
「確かにな…どうしてあんなに迷わないんだろう」
また今度、どうしたらああいう風に迷わず森を歩けるのか聞いてみるのもいいかも知れない。
などと考えていると、どうやら今回の目標の地点に辿り着いたらしい。そこにいるモンスターを見て、俺は思わず呟く。
「ちょっと待て、デカすぎるだろ」
そこには、超巨大なアリの巣があった。




