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転生と出会い

「おお、幸太よ! 死んでしまうとは情けない!」

 そう、金髪の少年が目の前で叫ぶ。大仰に手を上げて見せて。

 …って、こいつ今何て言った?

 えっと、状況を整理しよう。俺の名前は山崎幸太。高校の卒業式からの帰りだったはずだ。友達と別れて、重い荷物を持って…

「なあ、俺って死んだのか?」

「そうだよ?」

 なんで疑問形なんだ

「えっと…俺は何で死んだんだ?」

「それはね〜。真昼間から飲酒運転してた軽自動車が突っ込んできて轢かれた」

「誰かを庇ったとかでなく?」

「うん。何なら君以外の死者はいないよ」

 嘘だろ。

「まあそれだけだと可哀想だなって思って、ちょっと異世界に飛ばしてあげようと思って。ちょうど魔王もいるし、勇者候補として何人か送ってるんだよね」

「待て、話の流れが見えないぞ。えと、つまり? 俺は死んで、お前はなんか天使的なやつで、異世界転生をさせられそうになってる、ってこと?」

「そうだよ。あと僕は神だから、間違えないでね」

 マジか。

「まあそういう感じで〜。普通のチートスキルはもう飽きちゃったし、とりあえず魔力適正の体質と魔法強化の能力でいこうか」

 いやそこはチートスキルをくださいよ。

 そう思いっきり叫ぼうとした瞬間に、俺の視界は眩い光に包まれた。


 そうしてその光が消えると、俺は街の中に立っていた。

 ザ・ファンタジーのような、中世ヨーロッパのような街並みだ。俺が今いるのはどうやら広場のようで、かなり人通りが多い。屋台を出している人だとか、馬車で荷物を運んでいる人だとかもいる。

 自分に目を向けると、服装だけはこの世界に馴染むようなものに変わったようだ。一応鉄か何かでできた剣も背中に収まっていた。

 けれど、この状況で最も欲しい説明書きのようなものはない。地図とか、この世界の常識の書いてある本とか、そういうものが欲しかったのだが。あの神は一体何を考えているのだろう。

 俺は仕方なく、近くを通りかかった優しそうな人に声をかけてみる。水色の目に緑が買った水色の少年だ。歳は多分俺と同じくらいだろうか?

「すいません、ちょっといいですか?」

「はい、いいですよ…って、見ない顔ですね。転生者ですか。そして更に、地図も何もないからギルドのような施設まで案内してほしい、というところまで読めましたよ。」

「すご…なんでわかったんですか?」

「まあ結構人と関わる職業してますから。それに結構転生者って多いですし、最近は魔王が出たので勇者候補が結構な数送られて来ていまして」

 まじか。

 なんか色々雑な神様といい、ちょっとずつ異世界への夢が壊されて来ている気がする。

「えっと、案内しましょうか?」

「あ、はい! お願いします!」


 そうして案内してもらったのは、いかにもギルドといった感じの建物だった。

 木とレンガで出来ており、かなり大きくオシャレな外見をしている。

 中に入ると、目の前には受付があり、周囲を見渡すとちょっとしたテーブルと椅子だとか掲示板だとかが目に入る。

「さて、貴方のような方は一番最初にギルドのメンバーとして登録する必要があるのですが、この際に手数料がかかります。」

「なんか不親切だな?」

「まあそうですね。ただ、ここで頼れる友人の出番です。僕がお金を出してあげますよ。出世払いで。」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 そうしてお金を受け取った俺は、受付へと向かっていく。幸いなことに、あまり多くのことは聞かれず、名前と希望する職業や依頼の内容などを言うとそれだけで会員証を作ってくれた。

「上手くいったみたいですね。それじゃあ、何か依頼を受けましょうか。ちょっと、どんな異能祝福(プラスギフト)か教えてもらえますか?」

「プラスギフト?」

 俺がそう問い返すと、丁寧に教えてくれた。

 この世界には、祝福(ギフト)異能祝福(プラスギフト)と言うものがあるらしい。ギフトが特殊体質と言われるもので、ほぼ全員が魔法が使えるギフトを持ち、それに加えてさらに別のものを持っている人もいるらしい。そして、プラスギフトは異能力などと呼ばれるもので、全員が何か一つだけ持っている、ギフトとはまた違った性質のもの…とのことだった。

「それで言うと、俺は魔力適正と魔法強化みたいなのをもらったな」

 俺がそうなんとなく言うと、少年は結構驚いた顔をしていた。

「どうかしたのか?」

「いえ…ただ、結構厳しいのが選ばれてしまったんだな、と思って。」

 俺がきょとんとしていると、少年は言い始めた。

「いいですか? 人間は祝福(ギフト)によって魔法を扱えると説明しましたが、正確には魔力を操るということなんです。そのためには、魔法についての知識と技術を持ち、様々な修練をする必要があります。そして、あなたがもらった祝福(ギフト)異能祝福(プラスギフト)はそう言った魔法を強化するもので…」

「魔法の修行をしないと、意味がない能力だっていうことか?」

「ええ…お気の毒な話ですが。」

「チクショおおおおぉぉぉぉ!」

 ついそう叫んでしまう。なんなんだよその役に立たない能力は。いやまあ、勉強すればどうにかなるんだろうが、それまで一文なしの俺が生活できるかが問題だ。

「まあ、それなら仕方がないですね。適当な依頼を見繕っておいてください。確か近くに一流冒険家の友人が住んでいたはずなので、彼を呼んできて三人でやりましょう。少なくとも、僕とあなたの今日の食費は稼げるはずです。」

 そう、慰めになっていない慰めを受ける。俺は俯きつつも頷き、少年に一旦別れを告げ、依頼の貼り出してある掲示板へと足を運ぶ。

 と、そんな時だった。

「あの…仲間に困っているということだったら、私が同行しようか?」

 そこには、獣人っぽい女性がいた。


 森の中の獣道を歩きつつ、先導するその人に尋ねてみる。

「あの、もしよかったら名前を聞いてもいいですか?」

「どうしてだい?」

 その人は足を止めて振り返る。白くて先の方が青っぽくなっているロングの髪に、同じような色合いをした猫のような耳がついている。目はコハクのように綺麗な黄色をしていた。

「いや、一応意思疎通とかのために聞いておいた方がいいかなって。何か失礼があったら困りますし。」

「そういうことなら別にいいけれど…私の名前はラキナ。みんなからは何故かラクと呼ばれているよ。まあ好きに呼んでくれ。あと、敬語は別にいいよ。」

「そういうことなら普通に…俺は幸太。よろしくな、ラク。」

 俺がそう言うと、ラクは微笑んで「こちらこそ、よろしく」と返してきた。そして、再び前を向いて歩き出す。

 俺たちが今回受けた以来は、森の奥深くに陣取っているジャイアントリザードの討伐だ。正直どういうやつか分からなかったけど、まあ名前からして巨大なトカゲだろう。多分なんとかなる。

「お、いたぞ。」

 ラクが足を止めてそう言った。俺も近寄って見にいくと…

 そこでは、想像の3倍はでかいトカゲがヤギを食っていた。

 どうやら気付かれたらしく、ゆっくりと首をこちらに向けてくる。

 途端、俺はラクの手を取って逃げ出した。

「おい、どうした。せっかく相手が食事中で隙を晒していたというのに、なぜ逃げるんだ。」

「そりゃあ逃げるだろあんなバケモン見たら! どうやって倒すんだよあいつ!」

 やはり異世界というのはあまり簡単なものではないらしい。これからは高額報酬の依頼には気をつけようと思う。

 なんてことを考えつつ必死で走っていると、後ろから重い足音が聞こえてきた。

「ジャイアントリザードが追って来たようだぞ。どうやらまだ腹を空かせているらしい。」

「なんだって!? というか足早すぎるだろあいつ!」

 一瞬後ろを振り向いてみると、その巨体に似合わないような速度で木や岩を壊しつつこちらへ迫って来ていた。

「なあ、頼むから止まってくれないか? というか、どうしてそんなに逃げるんだ。何か作戦でもあるのか?」

「ねえよそんなもん! 想像以上にデカかったからただ単に逃げてるだけだ!」

「じゃあ一旦止まってくれないか?」

「なんでだよ!」

 そんな問答をしているうちにも、どんどんトカゲとの距離が縮まって来ている。

「全く…ちょっとどうにかするから見ていてくれ。」

 そういうと、ラクが俺の手を振り解いて急停止する。

「ちょ、危な…」

 俺がそう警告しようとした刹那。

 そう、まさに刹那だった。ラクが一瞬のうちに拳を振るい、それがジャイアントリザードの脳天に直撃する。ただ、それだけで。ついさっきまで俺たちを追いかけて来ていたでかいトカゲは10mほど吹き飛ばされ、そのまま体から力が抜けてしまったように倒れこんで動かなくなった。

「…よし、死んでいるな。」

「なんなんだよ今のはあああぁぁぁぁ!」

 俺がそう叫んで詰め寄ると、ラクは明らかに不機嫌そうな顔をして言ってくる。

「だから言っただろう止まってくれと。私ならどうにかできそうだったのに、無駄に走らせて。もしも森で迷ったらどうするつもりだったんだ?」

 その正論に、俺は反論できず。

 結局、俺は考えるのをやめ、このトカゲの死体をどうしようかに思考を切り替えるのだった。

「…あれ、そういえば何か忘れている気がするな。」

「ギルドにいた君の御友人ではないか?」

 …あ。

 完全に忘れていた。

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