29話 独白――ポラリス
戦いは終わったのね、リヒトさん。
出撃した二十人の神殿騎士さまのうち、半分の十人が負傷した。その十人の中にリヒトさんもいたと聞いたとき、気がおかしくなりそうだった。
嗚呼。やっぱり私のせいじゃないの。
私が街を守れだなんて命じたからじゃないのって。
いくら後悔しても時間は巻き戻せない。だから未来に進むしかない。
でも。でもきっとリヒトさんのことだから、すぐに笑って会えると思っていたの。
いつもみたく、ペパーミントみたいに爽やかな笑顔を見せてくれるって、都合良く思い込んでいたわ。
私、甘かった。本当に甘かったね。
魔獣の中には『精神攻撃』を放つものもいるということすら、私は知らなかった。
巨大なイソギンチャク型の魔獣、そいつの触手に捕らえられたあなたは――助け出されるまでの数分間のあいだでひどい、ほんとうにひどい、ひどい精神攻撃を受けていたという。
おそらく過去の心的外傷に関わる攻撃を受けたのだろうと、リヒトさんを助けたエルさんはおっしゃっていた。助けてくれたエルさんには本当にほんとうに感謝しかない。
あなたはご両親のことでいろいろとあったから、そのことだろうとも。
よくがんばったわね、リヒトさん。ほんとうによくがんばって、生きて帰ってきてくれました。
あなたは今神殿付属の病院で、薬を投与されて眠っている。しばらく鎮静の必要があるからって。
いま、あなたは一人ぼっちで眠っている。本当なら今すぐあなたを抱きしめたい。あなたには抱きしめてもらってばかりだったから。
神殿長からは、明日からつきっきりで一緒にいることもできると言ってくれた。でも今日、私はあなたが寂しいんじゃないかってどうしても考えてしまう。一人で泣いているんじゃないかって。かつて小学校の図書室で泣いていたみたいに。
エルさんがおっしゃっていた。「今リヒトはちょっと幼くなっているんです」って。軽めの幼児退行の症状が出ているって。
私、それでもあなたのそばにいたい。
どんな人にも弱い部分はあるわ、あなたの脆い部分すべてを受け止めたい。
私の帰る場所は、あなたのいる場所だから。
あなたは私のリヒトさんだから。
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