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Glory Road(グローリーロード)~再生の楽園~  作者: CuriouSky
第1章「エデン地区編」
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第22話「One more chance」

「続け! ジュインとマスターを探すぞ!」


 アンジェラ率いる931小隊はアイン・ソフ・オウルの極秘施設へ突入していた。


 マスターが見つけた地下通路に入り、どんどん進んでいく。途中途中で信者たちが迎撃をしてくるが、皆奮戦し蹴散らしていった。


「きっと牢屋があるはずだ、それを探すぞ!」


「教団施設の地下に、こんな研究所があったなんて……」


「やつら、ろくでもねぇことをしてたに違いねぇな」


 部隊一塊で駆けていき、どんどん突き進んで行く。


「前方! 敵兵士複数確認!」


「砕けろ!」


 ウォレンは邪魔だと言わんばかりにブレンL4機関銃を乱射した。


 彼はやや細い体型ではあるが、かなり力があるため、難なくリコイルコントロールができた。力強い弾幕に敵が吹き飛ぶ。


「エネミーダウン! クリア!」


「なかなかやるじゃないか、ウォレン君」


「僕も……死地を切り抜けた兵士だからね、これくらいなんともないよゲイル」


 仲間になったばかりのウォレンの動きに、思わずゲイルたちは感心した。


「しかし……複雑な道だ。これじゃ牢屋も簡単にはみつからないぞ」


「早く見つけないとマスターさんが……!」


 焦りながらも道を突き進む。すると、アイリスがある部屋に注目した。


「ここ……! 武器庫じゃないですか?」


「……もしかしたら彼の武器があるかも!」


 931小隊が武器庫の中を漁ると、ガンラックから没収されたジュインのAK-202とマスターのM4A1とHR-63が見つかった。


「やっぱり! ここに捕まってる……!」


「急ぐぞ! 早くしないと2人の身が危ない!」


 2人の存在を確信した部隊は、さらにさらに奧へと進んだ。


 ――その頃。


「……クソッ!」


 牢屋の鉄格子を乱暴に叩き、頭を抱えて座り込んでいる哀れな堕天使がいた。


「守れなかった……また……また失う……」


「嫌だ……もう……」


 常に感情を圧し殺していた彼は、遂に声を上げて涙を流した。ニールとクレア、ミーティア。これ以上大切な人を失うまいと誓ったのに。


 ――また、過ちをまた繰り返してしまう。


 自分は、関わった人をすべてあの世へ送る死神なのだろうか。捨てきれなかった優しさを恨んだ。いっそのこと極悪非道なアウトローになりたかった。


 もう、できることはなかった。ただ牢の中で死を待つのみだった。


「……ごめん……ジュイン……ごめん……許してくれ……」


 ――だが、神はチャンスを与えた。運命を掻き乱すために。


「マスター!」


「……っ!?」


 牢屋に駆けつけたのは、931小隊のみんな。ようやくマスターを見つけ出した。


「アンジェラ! みんな!」


「探したぞ指揮官、生きていてよかった……」


 アンジェラは胸を撫で下ろした。涙が頬を濡らしているカレッジを見て、皆は驚いた顔をしている。


「おいマスター! ジュインはどこだ? 一緒じゃないのか!?」


「やつらに……連れていかれた……祝福を受けるとか……」


「……絶対ろくなことじゃなさそうだね」


 マグノリアのアークブレードが青く光り、電気を纏うと牢屋の鍵を真っ二つに切断した。


「さあマスター! 行くぞ! 装備はここにある、ジュインを取り戻そうぜ!」


「……君たちだけで行ってくれ」


 マスターが暗く呟く。


「……は? どういうこどだよ!」


「僕は……悪魔だ……堕天使だ……僕がいればみんなが傷つく」


「……俺なんかいらないんだ」


「おい、マスター」


「……?」


 ――バチーンッ!


「え……? 痛い……」


 マグノリアがカレッジの頬を思いっきりひっぱたく。鋭い痛みに彼は思わす呆然としていた。


「お前がいてくれたおかげで、どれだけの人が救われたと思ってる! ジュインも、ゲイルも、アイリスも! そして……私も」


「何があったか知らねぇが、くよくよするなんてお前らしくねぇ! 行くぞ!」


「そうですよ! マスターさん! あなたが一番信頼できる存在なんですから!」


「……みんなの言う通りだよマスター。私も、マスターに何度支えられたか……」


「これほどまでに部下に信頼されてるのに、裏切るのか? 君は」


「……」


 みんなの熱弁に押され、マスターはよろよろと立ち上がり、装備を整えた。


「わかったよ……もう一度、貰ったチャンスだ。絶対無駄にしない! 絶対ジュインを助ける!」


「……みんな、こんな指揮官を、どうか頼む」


「もちろんだ! 守護天使!」


「行きましょう! マスターさん!」


「私はマスターを支えるよ、あなたはひとりじゃない」


 ――仲間の思いを背負い、彼は再び心の中に武者震いを起こした。


「ジュインは教祖の所にいるはずだ! 救い出す!」


 マスターを救出した931小隊は、教祖ドゥクスの場所へ駆け出した。


 道行く信者を蹴散らしながら、必死になって通路を進んでいく。


 そして、たどり着いたのは最初にドゥクスと出会った大きな空間だった。


 しかし、今回は誰もいなかった玉座に彼が座っている。その脇に、先ほどもいたフードを被った謎の人物が立っていたが、皆の視線はもう片方の人物に向けられた。


「ジュイン!」


 マスターが彼女に駆け寄ろうとする。しかし――。


「うがっ!?」


 彼女は冷酷な様で彼を思い切り蹴飛ばした。マスターは数メートル程吹き飛ばされ、腹を抱える。


「マスター!? 大丈夫か!」


「うぅ……ジュイン! 何をするんだ! 一体どうしたんだ!」


「……」


 彼女の目は虚ろで、まるで生気を感じられない。ただぼんやりとマスターを睨んでいる。


「ジュイン! 私だ! マスターだ! 目を覚ましてくれ!」


「……」


 彼の声はジュインの大きな耳には届かなかった。


「フッフッフッ……実に面白い様だ」


「貴様……ジュインに何をした!」


「言っただろう? 祝福を与えたのだよ。今や彼女は私の立派な部下」


「マスター、ダメだ! 彼女は洗脳されてる!」


「私の右腕とも共闘させたいが……あいにく忙しくてね。君たちはエクリプスと……とっておきの玩具(おもちゃ)で始末してあげよう」


 すると、奥から大きな機械音を立てて何かが歩いてくる。


「……!? あれは……!」


 アンジェラとウォレンが戦慄する。目の前に現れたのは、厚い装甲に覆われた二足型の戦闘用アンドロイドだった。


「あのテロ組織が我々に分けてくれたのだよ。さぁ……精々楽しんでくれ」


 そう言うとドゥクスはフードの人物を連れてどこかへ消えていった。ジュインは操られたように、931小隊に襲いかかろうとしている。


「……マスターこんなの……勝てるんですか……?」


 アイリスが怯えた様子でマスターに話す。


AT兵器(対戦車兵器)じゃないとこんなのダメージが入りませんよ!」


 ウォレンも混乱した様子で叫ぶ。


「……大丈夫だ、コレがある」


 マスターは担いでいたレールガンを降ろし、弾を込めた。


「まずはアンドロイドが先だ。アンジェラ! アイリス! ジュインを頼む!」


「わかった!」


「任せてください!」


「待ってろジュイン……絶対、救ってやる!」


 ――すべてを賭けた死闘が、今始まった。

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