プロローグ
――人類は、幾千年にもわたって過ちを繰り返してきた。
その代償は、三度目の世界大戦により、ついに払われるときが来た。世界は瓦解し、文明の残骸が風にさらされ、地表には見るも無惨な光景だけが残った。
それでも――人間は、光を求める。救済を夢見る。
まるで自らの業を忘れたかのように。
欲深く、愚かで、傲慢で。それでも生き延びようと足掻くこの生き物は、本当に生きる価値があるのだろうか?
風に揺れる草原で、ウサギや馬たちが仲良く草を食んでいる方が、よほどこの世界にふさわしい。
それでも――彼らは、希望を見つけるために。
今日も歴史を繰り返す。
地鳴りが遠くで響き、広大な荒野の草がゆっくり震えた。
――少女は顔を上げた。
希望のかけらも見えない、灰色に霞んだ朝焼けが、彼女の瞳を照らしていた。
――青年は目を開けた。
何も見えない暗い部屋のカーテンを開け、今日を生きる覚悟を決めた。
かつて「楽園」と呼ばれた場所――エデン地区。
そこに集められた、恵まれなかった命たち。
そして、その命の行く末を導くひとりの男。
これは、「過ち」の果てで出会った彼らが、
希望を信じて歩んだ軌跡。
――ひとりの指揮官と、少年少女たちの、再生の物語。