第七話聖者襲撃-2-
少年は白い世界で救いを見た。
魔女、キースが声を上げながら少年、ガイのもとに駆け寄ってくる。
走りながらキースは自らの手首を噛み千切り、その血液を口に含み、勢い良く吹き出す。
吹き出された血液は一瞬収縮し、そのまま鋭く尖った形へと体積を膨張させる。
それはグロースの身体へしっかりと突き刺さり 「グハッ」
グロースが声を漏らす。突き刺さった血液は敵を貫くだけで終わらず、グロースの肉体へ枝を伸ばし神経にまで達そうとしていた。
しかし、彼は止まらない。確実にここでガイだけは仕留めとくつもりだ。
迫る。迫る。迫る。キースの血棘を引き千切らんばかりの力を込め、ガイに向けて少しずつ近づいて行く。
遂に、ガイに肉薄する。
だが、――――
「そこまでだ」
キースは開いていた右手を握りしめた。
それと合わせるようにグロースの体に食い込んでいる血棘がより深く食い込み彼の意識を完全に刈り取る。
そしてグロースは白目を剥き膝から崩れ落ちた。
すぐにキースはガイに駆け寄り状態を確かめた。
「ガイ!大丈夫か!?」
「あぁ、ここは…?」
ガイは虚ろな目でキースを見る。
「大丈夫だ、先程の聖者は僕が仕留めた。」
「また護れられちゃったのか」
「この位ならいつでも護ってやるから…」
キースがゆっくりとガイの体を起こす。
そこでガイは気が付く、近付いてくる複数人の足音。また聖者が?と警戒心を強め、キースを見る。キースはガイを落ち着かせるように優しく首を横に振る。
「騒ぎを聞きつけた一般人だろう。見つかってはいけないから逃げるぞ。僕の肩を貸すよ」
そう言ってキースはガイを支えながら歩き出す。
キースはガイの不思議そうな顔に気づいた。
「なんだい?」
「聖者にトドメは刺さないのか?」
そこでキースは合点がいって、ガイに説明する。
「あぁ、僕の攻撃で神経をズタズタにしたからもう闘うことはおろか、日常生活でさえも介護無しでは厳しいだろうから」
ガイは納得すると同時に恐怖する。吸血種の自分でさえもそれをやられてしまったら一度死んでから生き返らなければならないだろうから。
背後がより一層騒がしくなってきた。
駆けつけた一般人達が倒れている聖者を見つけたのだろう。こちらに寄ってくる気配もある。
見つかる前にキースとガイは急いで街を離れる。
これが後に聖国での最高指名手配「少年と魔女」。
その1つ目の事件である。