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第五話 邂逅〜少年と聖者〜

少年と魔女は森を抜け、都市に着く。


そこは不死を赦さない、聖なる者の都だ。


その名は聖第六都市。





少年、ガイは丘から都市を見下ろし感嘆の声を上げた。


「凄いな、流石聖都市。王宮から随分離れているのに物凄く栄えてる」


「ここで一旦色々物を揃えようと思ってるんだ。だけど、幾ら僕との契約で存在を誤魔化しているからと言っても絶対じゃないから目立たないようにしてくれよ?」


魔女、キースはそう忠告する。


「分かりましたよ。大人しくしときます」


ガイとしても不死となってから一度も都市に入った事が無かったので見て回りたかったが、キースにそう言われてしまえばもう大人しくする他ない。




ガイとキースは都市門前で都市の壁を見上げた。


高さは約15m程だろうか、外敵の侵入を許さないという思いが伝わってくるようだ。


するとガイ達のもとに誰かがやってきた。


黒い軍服を来て剣を腰に刺している。どうやら門兵のようだ。


「お前達は何処から来た?この都市に入りたければ通行料も払うことだな」


ガイが返答に困ると横から


「僕達は遥か北のノスプラントから来た冒険者だ。通行料はいくらだい?」


「聖貨15枚だ」


ガイは聖国に入った事など無いので持っていない。


ましてや、長い時を封印されていたキースが持ってるわけがない。


しかし、キースはそれを懐から出し門兵に手渡した。


「いいぞ、通れ」


ガイとキースは門兵の横を通り過ぎ都市に入る。


都市に入るとそこは石レンガで出来た家が構成する下町があり、そして都市の中心には城のようなものがある。


「なんでキースが聖貨を持っていたんだ?」


ガイは疑問をぶつける。


魔女は少し悪い顔をしてタネを教えてくれた。


「僕が魔法で血液を変化させて作ったのさ。2.3日で戻ってしまうだろうから、それまでにこの都市を出ちゃおう」


「詐欺だったのかよ。まぁそれで助かったし良いか」


ガイはそれは良いことなのかと思ったが、それが無ければこの都市に入れなかったので、良いということにした。


「さて、僕はここら辺で買い物をしてくるから、ガイはそこでしっかりと待ってること。いいね?」


「ああ、分かった」


「なら良し、行ってくるね〜」


そう言って魔女は道を曲がり角の店に入っていく。


「そうとは言っても待ってるだけだと暇だな」


ガイは暇を紛らわす為に周りを見渡す。


人が沢山居るとその分変わった人も沢山居るのだ。


例えば、あそこの目に隈が出来ていて今にも死にそうな男。


例えば、そこにいる顔に白の粉を付け目の回りを赤くしている奇妙な男。


例えば、あっちの娼婦のような格好の鎧を着た冒険者の女。


そうしてガイが辺りを見回していると、急に目が眩んだ。


何が光って見えるのだ。


ガイはその光の発生源を探すと、すぐに見つかった。


白い軍服を着ており、腰に長い刀を差す白髪で初老の男だ。


この男が謎の光を発し続けてる。


その男の白い軍服を見てガイはその正体に気づいた。


白い軍服は聖国の中でも列強にしか着ることが許されない、聖者と呼ばれる者が着ている者なのだ。


ガイの目を眩ましたのは、聖者の高潔な魂の光だった。


ガイは正体がバレる事を恐れ、直ぐにそこを離れようとした。


しかし、その一瞬の動揺を見破られ、その男は近づいてくる。


「ちょっと良いかな君、そんなに驚いてどうしたんだい?」


ガイは内心の焦りを抑えつけ、出来るだけ平静を保ち相手をする。


「いや特には。こんな辺境で聖者様を見かけたので驚いた次第です」


「ははは、そんなに珍しいかな。目立つからこの軍服は辞めてくれと言っているのだけれどね」


聖者は笑っているが目が笑ってない。


鋭い獣のような目をしたままだ。


ガイの視界の端にキースがうつる。


どうやら買い物は終わったらしい。


「知り合いの買い物が終わったようなので、ここで失礼させて頂きます」


ガイはそう断り聖者のもとを去ろうとする。


「友人と買い物をしに来ていたのかい。それは失礼な事をした。呼び止めて悪かったね」


聖者はそう謝罪し、何処へ去っていった。


「おーいガイそんなに震えてどうしたんだい?」


キースが両手に袋を持ちながら駆け寄ってくる。


「早くこの街を出よう!」


そう言ってガイは今起こったことをキースに説明する。


「それは大変だね、吸血種だと言うことまでは分かってないだろうけど、こちらが怪しい事は勘付かれている。ガイの言う通り今日中に出るとしようか」


キースはそう言って歩き出す。


ガイは未だ先程の震えが止まらないままキースを追いかける。




これが長きに渡り戦う事になる少年と聖者、その邂逅である。

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