第四話 君を護れる強さを
少年は強くなる。
魔女を護れるようになる為に。
少年、ガイは幾度目とも知らない地面との接吻をした。
魔女、キースに教えを乞うて半日。
ガイは魔女に投げられていた。
魔女は見かけに依らず体術が得意なようだ。
しかし、いつまでも投げられっぱなしのガイでもない。
これでも不死性だけで魔女が封印されてるところまでついた身だ。
少しは筋肉もつき、力もある。
「うぉぉぉ」
ガイは叫びながらキースの胸ぐらを掴む。
そして、肘を相手の脇に入れ、腰に相手を乗せて投げた。
キースは背中から地面に落ちる。
砂埃が舞い、ガイはキースの心配をする。
「キース大丈夫か?」
「ゴホッゴホッ、君なんかの技で怪我をするほどやわじゃないさ。」
「ならよかった」
ガイは自分の弱さのお陰でキースが怪我しないのは、はたして良い事なのか?と疑問に思ったが口にはしない。
「出来れば魔法も教えて欲しい」
自分にはまだ早いかと思いながらガイはそう頼む。
体術だけではどうしようもない時もある。
そんな時に魔法があれば…と。
キースはそれを理解している。
しかし、その上でそれを断った。
「君にはまだ早いかな」
「なんでだ」
ガイは少し不機嫌になりながら理由を尋ねた。
「君はまだ魔法というものが何なのか何もわかってないからだよ。その本質を理解しなければ魔法は扱えない」
「魔法の本質?」
ガイはそのような事は考えたことない。
「そうさ、魔法の本質。何のために扱い、どんな事をし、どのような事になるか。それを理解しなきゃいけないね」
「何のために魔法を使うのか…」
ガイは悩む。
自分の身を守るため?相手を殺すため?それとも…
「君を護りたい」
「君に危険が及ばないように」
「君を安心させられるように」
「君を護りきれるように」
「そうか、君ってやつは」
キースはそう言って少し照れ、それを誤魔化すように話し始めた。
「分かった。君に魔法を教えよう。吸血種が使える血液魔法をね」
「分かった。ありがとうキース」
ガイは心の底から感謝を述べる。
「じゃあまずは短剣で指を切って」
ガイは言われた通りに指を切って血を出す。
「その流れ出てくる血に意識を向けて念じるんだ。自分がやりたい事、起こしたい事象を込めてね」
ガイは自分の血に意識を向ける。
自分のやりたい事。
魔女を護ること。
すると、ガイの血が腕の周りに垂れていき、その流れは全身に広がる。
腕、肩、胴体、脚、顔
その全てに皮膚の表面を伝い血の流れがゆく。
全身の表面に周りきった血は皮膚に染み込み、紅く光る。
「これが魔法…」
「これは珍しいね。君の護りたいって気持ちに反応して防御が上がったのかな?」
「これで君を護れるのか」
「ああ、勿論。その拳は相手を打ちのめす矛となり、その腕は僕を護る盾となる」
「さっきの獣にも勝てるか?」
ガイは先程の敗北を思い出しながら聞いた。
「勿論さ、もうあんな獣に殺される事も、時間稼ぎをする必要もない。君は強くなった。その事をもっと誇っても良いんじゃないかな」
ガイの視界が急に滲んだ。
雨が降って来たのだろうか。
頬に水滴が垂れる。
否、これは…
「そんな泣くほど嬉しいのかい」
ガイはそこで初めて自分が涙を流している事に気づいた。
今まで、不死性だけが自分の強みで、自分が弱いせいで人が死んだこともあった。
自分が力を手に入れた。
その実感が急に湧いてきた。
キースは立ち上がり、ガイに手を伸ばし言った。
「さぁ行こう。僕達の死を探す旅へ」
ガイはその手を取り、立ち上がる。
「ああ」
少年が護り、魔女が護られる。
その日はやってきた。
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