第一話 君を助けたのが僕の罪
ーグゼ古代遺跡群地下700mー
少年が古代遺跡の地下を進んでいる。
少年が踏みつけた石畳がガゴッと下に沈むと前方から弾丸が6つ飛んでくる。
罠には銃撃魔法が仕掛けられていたのだろう。
それは少年が視認すらもする前に少年の体を撃ち抜き5m程吹き飛ばした。
常人ならばそこで屍となり朽ち果てる。
しかし、その少年は常人ではない。
ましては人なのかも怪しい。
その少年は不死なる者、罪を背負いし者、闇に生きし者、吸血種であった。
その少年の名はガイ。
ガイは煙を立てながら起き上がり言った。
「俺が常人なら死んでたぞ。ここの罠作ったやつ趣味ワリィな」
数十m先には白い扉があった。ガイはそれを見てニヤリと笑った。
「ここまで来た甲斐があったってもんよ。何があるかな?」
ここはグゼ古代遺跡群地下700m。
少年のように力が無くあるとすれば不死性だけの者が簡単に来れるところでは無いのだ。
ガイは歩きながら呟く。
「願わくば俺の罪を…………」
ガイは扉に辿り着いた。
その扉は石で作られており錠は無い。押すと軋む音を立てながら簡単に開いた。
ガイの顔が驚愕に満ちる。
扉の先には鎖で両手を拘束され眠った銀髪の女がいた。
その女は裸に布1枚というなんとも薄い装いだったが、ガイは警戒を解かない。
このような場所に女がいるはずが無いのだ。
いるとしたらそれは魔女だけ。
ガイはそっと近づく、するとその魔女が瞳を開けた。
魔女の瞳は青く蒼く碧く、その瞳にガイはなぜか母性を感じる。
「君は…僕の子か、よく来たね。僕を殺しにきたのかい?」
とその女が口を開く。
ガイは理解が出来なかった。
そしてまくしたてる。
「お前は誰だ!どうしてここにいる!魔女か!?」
その女は優しい顔で肯定する。
「ああ、僕は君達が言うところの吸血魔女姫さ。訳あってここに閉じ込められているがね。」
ガイは吸血魔女姫という単語に過剰に反応し、魔女に詰め寄り懇願する。
「お前が例の魔女なら…頼む、俺を…俺を罪から解放してくれ。お前が吸血種を生み出したのだろう?ならば解放することも出来るはずだ!頼む、頼む…」
魔女はガイを幾秒かじっと見つめた後答える。
「残念だが、僕は吸血種を生み出しただけであって君が吸血種になったのは私によるものではない。だから僕にもどうしようも出来ないんだ」
ガイの顔が絶望に染まる。
しかし、魔女は続ける。
「だけど罪を清算する方法が無いわけでもない」
「それはなんなんだ!」
「地獄の閻魔王、彼に会いに行くのさ」
ガイは驚く。
「地獄なんて死なないと行けないだろ」
そう言ってまた諦めた顔をするが魔女の言葉を聞き顔色を変える。
「行く方法があるのさ、死んだまま地獄に行く方法がね」
「それは?」
「それは……はるか南にある世界の深淵へすらも繋がるかもしれない深い穴、アビスを目指すのさ。そこには地獄への入り口がある」
ガイはそれを簡単には受け入れられない。
何故ならばアビスと呼ばれる大穴への道のりはとても険しいものだからだ。
「ここからアビスまではすごく遠いぞ。それに通り道に聖国がある。吸血種の俺じゃ通れない」
魔女はそこである提案をする
「僕と契約して存在を誤魔化す。吸血魔女姫の僕ならその存在を常人と誤認させるのもわけないさ。そのためには君にここの封印を解いてもらわなければならないけれどね」
「契約だって?」
「ああ契約さ、僕と君で契りを結ぶんだ。僕は君にここを出して貰う、その代わりに君をアビスまで送り届ける。良い条件だろう?」
ガイは迷う。この魔女は自分を騙しているのではないか。そもそも本当にアビスに地獄への入り口があるのか。だがこれ以外に道はないのだと言うことも同時に悟っていた。
「分かった、協力する。俺とお前だけの誓いだ」
ガイは宣言する。
魔女は少年を見つめ言った。
「ならここに血を垂らしてくれないかい?」
魔女がさしたのは自身の胸の谷間。
そこには赤い紋様がある。
「……………」
ガイは見た目に反して初心だ。魔女の谷間を意識したため固まってしまった。
「ええ、」
数分後、ガイが意識を戻す。
「ああ、分かったここに血を垂らせばばいいのだな。」
ガイは短剣で指先を切りそこから滲み出る血を魔女の胸元に垂らす。
すると魔女の手を縛る鎖が黄金色に光だし、亀裂が入り、そして砕けた。
魔女は解放された手を伸ばし立ち上がって言った。
「これで契約成立だ。そういえば僕の名前をまだ言ってなかったね。僕の名前はキース、吸血魔女姫のキースさ。君の名前は?」
「俺の名前はガイ。唯のガイだ」
こうして少年と魔女の奇妙な出会いからこの旅は始まった。
カクヨムで投稿しているものをここでも投稿する事にしました。