31.反省なんてしたことないわ!
コスモの目の前にクロスの顔があった。
「驚いているようね!」
コスモは攻撃を仕掛けるが、クロスはかわす。
そして、次の瞬間には、遠く離れた客席の椅子に立っていた。
「随分早いスピードだね」
「ふふん! これぞ私の新スキルよ!」
クロスは素早い動きで、コスモを翻弄する。
「新スキルって……スキルは1人につき、1つしか持てないんじゃないの?」
「そう、確かに私自身は1つのスキルしか持ってないわ! けどね、このスキル内臓の武器を装備することによって、2つ目のスキルを持つことが可能になったのよ!」
スキル内臓の武器……?
そんなもの聞いたことがない。
とは言っても、冒険者を目指していた訳でもないコスモ自身、そういった知識には疎いのだが……。
「スキル内臓の武器!?」
と、ここでユリが叫ぶ。
「あ、あり得ません! 確かに、おとぎ話などで、そういった武器のことは知っていましたが、実際にあるんですか!? いやでも、あのスピード……短期間で身につくわけがありません……ってことは本当に!?」
ユリは驚いている。
物知りのユリがここまで驚いているということは、本当に珍しいのだろう。
「どう? あんたを超えるこのスピード見切れるかしら?」
スピードだけなら、コスモ以上だ。
スピードだけなら……。
「クロス、確かにスピードは凄いみたいだけど、一体どんなスキルなの? 瞬間移動?」
クロスは割と自分から色々と話してくれるタイプだ。
駄目元で訊いてみた。
「よくぞ聞いてくれたわね! 新しいスキルは瞬間移動じゃないわ!
私のスキルは速度上昇系のスキル!
相手とのスピードが一定以上離れている場合、相手のスピードを数値化して、私のスピードに加えるわ!
つまり、必然的に私の方が速くなるスキルよ!」
答えを教えてくれた。
本来であれば、戦闘中に相手に情報を与えるべきではないのだろう。
「終わりよ!」
クロスが薙刀で突き刺そうと迫って来たので、素早く回転して、ガードした。
そして、あくまで上昇するのは速さだけだ。
防御面はそのままだったようで、クロスの手に握られていた薙刀は、遠く離れた地面にまで吹き飛ばされ、突き刺さる。
クロス自身も壁に叩き付けられる。
「だ、大丈夫!?」
コスモは慌ててクロスの元へと駆け寄る。
「ぐ……やるわね! はぁ……今回は負けよ!」
クロスは仰向けに寝転んだ。
前回より、大分潔い。
コスモも色々あって疲れたので、隣で仰向けになった。
「前回とは別人だね」
クロスを馬鹿にする意味はない。
むしろかなり大人になったな、と感じていた。
「反省かぁ……」
コスモは、なんとなく、そう呟いた。
自身に言い聞かせているという意味もあるのかもしれない。
「反省……? 私は反省なんかしてないわよ? 考えが変わっただけよ?」
「え?」
「一切反省してないわ!」
予想外にも反応された。
少し不機嫌そうだ。
それと同時に、どこか得意げであった。
「反省するってことはね、過去の自分を間違ってたって否定することよ?
私は生きていて、自分が一度でも、間違ったことをしたと思ったことはないわ!」
「え……」
「何かおかしい?
そもそも、反省したって言っていても、本当の意味で反省している人なんて、きっと極少数よ。
例え心から反省してると本人が思っていても、結局は客観的に良い人でいたいが為に、自分の考えを悪と決め付けて、無理矢理にでも反省しましたって自分に言い聞かせてるに決まってるわ!」
と、自分の考えを言えてスッキリしたのか、最後にドヤ顔でこう言う。
「ま、そもそも私のやったことは、私の中では全て善行に変換されるから、悪行を働いたことはないんだけどね!」
(……少しは反省して)
内心呆れたコスモであったが、何をされるか分からないので、言わないでおいた。
クロスは確かに強いが、おそらく、その強さと引き換えに何かを失ったのだろうか?
「さて、と。まだスキルを使いこなせていないことだし……次の戦いに備えておくわ! 絶対に次こそは勝つわ!」
そう言うと、クロスは薙刀を拾い、どこかへと去っていった。
おそらく次回か、長くても次々回で2章終了です。




