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25.王都へは行くな

「精神的に疲れたよ……」


 ライブが終わった。

 結局、コスモは口パクをし、アオリの動きを真似することにより、危機を脱した。

 会場は盛り上がっていた為、それらについては、誰も言及しなかった。


 今はイベントが終わり、会場である闘技場から退出している所だ。

 退出途中、コスモに対して、「なぜそんなに強いのか」などと質問する者もいたが、秘密にしておいた。

 それについても、深くは言及されなかった。

 アオリがSR冒険者だからという理由ではなく、アイドルとしてのアオリが好きなファンがほとんどだからだろう。


 コスモとユリはそのまま宿へと戻った。


「楽しかったです!」

「私はちょっと疲れたけど」

「確かに、コスモさんこういうの、慣れてなさそうですよね。いや、私もですけど」


 ユリが眉を八の字にしながら軽く笑った。


「またアオリンに会いたいな~」


 普段敬語のユリが、アオリンと呼んでいる所を見ると、余程ハマったのだろう。

 となれば、これから起こることに対し、ユリはきっと驚くだろう。


 コンコンと、扉をノックする音が聴こえる。


「誰でしょう?」

「きっと驚くと思うよ!」


 コスモは鍵を開ける。

 すると、変装したアオリがそこにいた。

 そう、ライブ終了後に、コソコソとした話し合いがあったのだ。


『ナナちゃん、ちょっと大事な話があるから、後で会えないかな?』


 このような提案があった為、こちらの宿の場所を教えておいた。

 アオリがあまり強くなかったので、まぁ、安全だろうというコスモの判断だ。


(それに、ユリも喜びそうだったしね)


 そして……。


「ア、ア、ア、ア、アオリン!?」


 実際に驚いていた。


「驚いたでしょ? アオリさんが話をしたいって言うから、ここに呼んだんだよ」

「そうなんですか!? なんだか、大人気アイドルがこんなに近くにいると思うと、緊張してしまいます!」


 アオリは2人にウインクを飛ばしながら、ピースを決める。


「改めまして☆ アイドルのアオリンこと、アオリです☆」

「おお!」


 ユリは拍手をした。

 ただ自己紹介をしただけだというのに、この拍手だ。

 これがアイドルの力か。


「……と、これで勘弁してね?」

「なにがですか?」


 ユリが首を傾げた。


「今日ここに来たのは、アイドルとしてじゃなく、SRランク冒険者のアオリとして、話があって来ました」


 先程とは違い、アオリは真剣な表情になる。

 だが、別に敵意を向けてきている感じではない。


「大事な話なんですね?」

「はい。とても」


 コスモがそう言うと、その真剣な眼差しを向けてきた。


「最初に言わせてください……ごめんなさい!」

「「!?」」


 予想外の行動であった。

 アオリは、何も悪いことはしていないと思うのだが……。


 だが、この行動は異常であった。

 初対面とほぼ変わらないような相手だというのに、床に頭をこすり付け、謝罪をして来たのだ。


「ちょっ、アオリン……いや、アオリさん!?」

「アオリさん、急にどうしたんですか!?」


 2人して、アオリに向け、顔を上げるように言うと、涙目でこちらを見上げる。

 しばらく経つと、ようやく普通に座る。


「何があったんですか? 少なくとも私達は、アオリさんに何もされていませんよ?」


 コスモがそう言うと、アオリが申し訳無さそうに口を開く。


「私の立場から、深く言うことはできません。ただ……ナナちゃんの気持ちを考えたら、罪悪感で一杯になって……」

「どういうことですか?」


 話が分からない。

 だが、アオリは泣いている。

 それに、アイドルのアオリンではなく、SRランク冒険者のアオリの立場から言えないこととなると……。


「王都には行かない方がいいです。逃げてください!」

「え?」


 王都には行かない方がいい?

 まさか、裏で何かが起きているというのか?


「私はある人を探しに、数日前に王都を出ました。詳しくは言えませんが、その人を王都へ連れてくるようにと、ある方から命令されました。ですが、私は知ってしまったのです。ある秘密を……」

「ある秘密?」

「はい。もっとも、私の立場上、その人に会ったら無理矢理にでも連れていかなくてはならないのですがね」

「そうですか……」

「あなた達に言ったのは、私の気まぐれ……罪悪感から解放されたいだけっていう理由だけですから、気にしないでください」


 アオリは立ち上がる。


「なんだかスッキリしました。私は人探しを続けなくてはならないので、これで失礼します」


 アオリは部屋から出ると、早歩きで外に出て行った。



☆ユリside


 ユリは1人、部屋から出ていくアオリを外まで追いかけた。


「待ってください! どうして、どうして王都に行っては駄目なんですか!? 多分、コス……いや、その人も、王都に行って魔王を倒しに行きたいと思っている筈です!」


 ユリが言うと、どこか悲しそうな表情で、アオリが耳元でつぶやく。


「コスモちゃんのこと、頼んだよ」

「え?」


 やはり、バレていたようだ。

 あれだけコスモが余裕そうな試合を展開したのだ。

 無理もない。


「多分、私が言っても、君達は王都に行くと思う。そうしたら、そこできっと、コスモちゃんは残酷な真実を知ることになる。だから、何があっても、コスモちゃんの心の支えになってあげて」


 残酷な真実とは一体?

 何者かの裏切りか?

 もしや、コスモが処刑でもされるというのだろうか?


「コスモさんは処刑されるんですか?」


 ユリも、コスモの耳元でつぶやいた。


「違うよ。裏切りとか、誰を殺すとか殺さないとか、そんなんじゃないんだ。私ね、色んな人と関わって来たから分かっちゃうんだ。コスモちゃんがどんな人かってのをね。だから、だからね、きっとコスモちゃんが知るには残酷過ぎる真実だと思うんだ」


 そして、最後に言う。


「改めて、コスモちゃんのこと、頼んだよ。きっと、君しかできないことだと思うから」


 アオリはその場を去っていった。

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