表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

トカゲ天国

作者: 喜楽直人

 我が家の庭はトカゲ天国である。

 カナヘビも二ホントカゲもいる。 幼生の多い春~夏はカナヘビの赤い尻尾と二ホントカゲのメタリックブルーに輝く尻尾が、ニョロニョロうろうろしていて非常にカラフルだ。


*****


 ここ3日ほど、二階のベランダにまだほんのり尻尾の赤いカナヘビ君がいるようになった。 お腹がぽこんと膨らんでいてどこかユーモラスな姿をしている。

 黒い掃きだし窓の桟にへばりつくようにして、うっとりと目を閉じている。

 陽の光に温められているので離れられないのだろう。

 しっかりとしがみ付いて動かない様は非常に愛らしいのだが、如何せんそこは二階。個人宅のベランダだ。

 水はエアコンの配管から零れ落ちるそれしかないし、虫よけまで置いてある。餌も少ないんじゃないかと心配していた。


 そうして今朝だ。ぽっこりしていた腹がだいぶスマートになっている。 ヤバい。昨日までより更に動きが鈍い。


 このままでは不味いだろうと分かる。モズのはやにえ以外でカナヘビの干物を見るのは遠慮したい。


 だがしかし、どうすればいいのだろう。


 手で掴んで捕まえようとしたとして、失敗したら彼のまだほんのり赤い愛らしい長い尻尾は切れてしまうかもしれない。いや、間違いなく切れると断言できる。

 何故なら幼い私はそうやって、トカゲやカナヘビの尻尾を何本も奪ってきたのだから。

 何度でも綺麗に再生するのだから構わないだろうって?

 いいや。再生した尻尾には骨がなく、切れた場所が悪ければ二度目がない事も多いという。上手に切り離せなかった場合、まったく再生できないなんてこともあるらしい。


 そもそも尻尾が千切れるのは天敵である捕食動物たちの手に掴まった時に、動き続ける尻尾を置き去りにすることで本体が逃げる為のものである。


 それを私が我が家のベランダで死なれたくないからと千切ってしまっていい訳がない。彼等の寿命に係わることなのだ。


 箒と塵取りで追いかけ回し、なんとか捕まえて庭のグランドカバーにしているイワダレ草がまだ色濃く繫っている所を狙って落とす。


 ぽすん。がさがさがさー。


 どうやらちゃんと着地できたようだ。葉の陰で、元気に逃げていくその尻尾がちょろっと見えた気がした。



 それにしても、プラスチック製の塵取りの上で、足掻いても足掻いても足が滑って動けないと焦るカナヘビの子供は非常に愛らしかった。


 長くそのまま移動できそうになかったからそこから落とすしかなかったけれど。 尻尾も切れなかったし。


 ちょっとホッとした朝の洗濯物干しであった。



  おしまい




お付き合いありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 我が家の庭にも良くニホントカゲやカナヘビがいるので、お話の光景を思い浮かべることが出来ました。 夏には網戸のところにヤモリがやってきて、灯に誘われた蛾や羽虫を食べているのを窓ガラス越しに見…
[良い点] 失礼致します。 トカゲの健康状態を気にしつつ誘導する優しさに脱帽!尻尾が切れたら寿命も縮まるとか何とか??強い再生能力はプラナリアぐらいなモンか。 [気になる点] 空気の良さそうな環境で羨…
[良い点] トカゲと聞いてやってまいりました~(≧▽≦) 両方同じ場所に生息しているなんて、自然豊かな場所なのですね~( ´艸`) 尻尾のことまで気にされてほっこりしました(*´д`*) そろそろ冬眠…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ