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セントラリア戦記~元王族護衛騎士の戦い~  作者: ふふふ
第1章 天覧試合
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第1章 ⑤その男、作戦会議に参加する。


ノーシセス国一行とセントは、

王都の門の少し手前、王都への道に並び立つ、今は何も支えることのない柱の陰で集まっていた。


そこに待機していた僧兵団数人と合流し、いよいよ護衛任務についての会議を始めようとしていた。



その前に、スパネイアは正装へ、

フォーセ達、ノーシセス僧兵団は兵装へと着替えをしていた。




スパネイアは、飾りこそ少ないが、最高級品であろう法衣へと着替えた。

その法衣から発せられている聖なる魔力は、

幾人もの僧の祈りや、強力な結界魔法が込められていることが伝わってくる。

おそらく並大抵の魔法や武器では法衣に触れる前に跳ね返されるか消滅することになるだろう。



僧兵団もそれぞれの戦うスタイルに合わせた戦闘服や鎧などの装備を身に着けていた。

それらの装備の評価は、セントに渡されたものと同等くらいである。



フォーセは、羽根つき帽子に魔石や守りの装飾をあしらった頑丈な兵服にしっかりとしたブーツ、

腰にはレイピア、さらに左手のみにガントレットといった装備だ。

先ほどの鋭い一撃のこともあり、

素早い動きで敵を翻弄し一撃必殺で仕留める華麗な剣士という印象だ。



全員の準備が整い、作戦会議が始まる。

僧兵たちは全部で7人、スパネイアを加え8人のノーシセス神国一行。



そこにセントが加わる。


作戦会議中とあっても、

スパネイアの四方を固めるように4人が立ち、その後ろに2人が並んでいる陣形だ。

指揮を執るフォーセは向かい合う形だが、しっかりと陣の後方を警戒している。


セントは、自分がどこに立てば良いかわからず、その様子を少し離れて見ていたが、

フォーセに呼ばれた。



「まずは、新入りの紹介をする!」



「コルマティア王国内の案内役兼、護衛の補助を依頼した、セントラオンだ。

 “セント”と呼んでやってくれ。」



セントは一礼したが、陣形を組む僧兵は、全員警戒態勢を解かずにこちらを一瞥する程度だった。



構わずフォーセは続ける。

「我らは、ノーシセス僧兵団 神護兵団。総員8名。私が総長フォーセ、陣形を組んでいる者たちが、

 12時の位置から、ファース、カンド、サドウ、フィフだ。

 後列は右からシーク、ブンだ。」



自分たちの紹介されても警戒態勢を保つ僧兵たちに、

セントは仲良くやっていけるのか…と不安に思ったが、また一礼しておいた。



「では、作戦の説明をする。

 我らの主な任務は3つだ、

 1つ、スパネイア神王の警護、

 2つ、エメラルディア帝国軍のコルマティア王暗殺の阻止、

 3つ、天覧試合への参加。

 この3つの遂行は絶対だ。ノーシセス神の加護のもと命を懸ける覚悟で全うする。」



セントは、2つ目の任務を聞き間違えたと思い、フォーセにその旨を伝える。

しかし返事は期待したものではなく、質問は最後にしろと切り捨てられ、説明が続けられた。



「1つ目、これは普段通りだが、スパネイア様には傷一つ付くことは許されない。」


セントはうなずく。そして次の言葉を一言一句聞き逃すまいと集中する。



「2つ目、スパネイア様が国を発つ際に受けた神託によると

 エメラルディア帝国軍がコルマティア王の暗殺をするとのことだ。

 天覧試合へはエメラルディア帝国の最高戦力、

 帝護三将“インペリアルガード”が来るとみて間違いない。

 あちらが、どのような方法で暗殺をするかまでは分からないが、

 コルマティア王の暗殺のみならず、スパネイア様や他の王族の命をも狙う可能性もある。

 最悪全面戦争となることを覚悟しておくように。」



自分の耳が正しかったことは証明されたセントだが、

説明の意味は全く分からなかった。



天覧試合の開催中に王族が王族を暗殺するなど、あり得ない。荒唐無稽。

何の確証があって、どんな自信があってそんなことを言うのだ。

まず、どこから得た情報なのか。こればかりは、「神のお告げ」では済まされない。

王族に証拠もなく嫌疑をかけることなど自殺行為、糾弾されれば死刑は確実だ。



考えがめぐるセントのことなど気にかけずフォーセは続ける。


「3つ目、我ら神護兵団もノーシセスを代表して、天覧試合へ参加する。

 あくまで1つ目、2つ目の任務が最優先ではあるが、

 ノーシセス僧兵団の誇りにかけ、優勝を取りに行く。

 スパネイア様の護衛もあるので、試合へ出る人員は3~4名とする。

 以上だ。」


こちらも少し気にかかるが、2つ目の説明と比べれば取るに足らないことである。



「何か質問はあるか?」


と最後にフォーセが全員を見渡し、問う。



すかさず、セントが手を上げ

「おい!2つ目の暗殺の阻止ってなんの話だ!?聞いていない、というか信じられん!

 エメラルディア帝国がコルマティア王を暗殺すると言ったな?

 大昔からの人間族国家で一度も破られたことがない同盟関係だぞ?

 何の確証があってそんなことを言うんだ。

 流石に“神のお告げ”では、すまされないぞ!」



そう言い放ったセントを僧兵全員が睨みつける。


今まで警戒の態勢を解くことはなく、

少しの感情も見せなかった僧兵たちの変わりようにギョッとしたが、

ひるまずに、言葉を続ける。



「だいたい、暗殺の阻止ってのはどういうことだ。

 ノーシセスがやる必要はあるのか?

 自国の王が危ないならまだしも、コルマティア王のことは、コルマティアの兵隊が守るだろう!」



セントの言い分は、一般的な感覚であれば誰もが同意するだろう。



しかし、



「いや、信託は絶対だ。未来に起こる事実。その断片をスパネイア様が幻視するのだ。

 その事実を防ぐことは可能だが、何もしなければその事実が確実に起きる。

 しかしコルマティアの者はその事実を知らない。

 ならば我らノーシセスが助ける他ないだろう。

 救えるはずの命を救う、この暗殺により引き起こされる争いも防げるのだ。」



ノーシセスという特殊な国においては一般的な考えが通用しないこともある。

ということをフォーセから聞かされることになった。




ノーシセス神を絶対とする宗教国家、

神王にもたらされた神託を絶対的に信じ、戦争中であっても“正しさ”を貫き中立であった。

その最高峰の僧兵たちがセントを真っ直ぐに見つめる。




その真剣な目を見たセントは、

彼らが本気で暗殺が計画されていると確信していて、それを阻止する気でいる、

とそう思わされてしまった。




セントは自分の考えだけは伝えようと、フォーセを見た。


「…………本気で言っているのか?

 もし、……もし、暗殺の計画の証拠もなくエメラルディアにケンカを売るような真似をしたら、

 それこそ戦争になるぞ!?実行していないならば、暗殺計画をもみ消すことなど容易だろう。

 本当に起きるというなら神のお告げ以外に何かの証拠を突き出すしかない。

 そんなものを嗅ぎまわること自体危険だし、力尽くで勝てる相手でもない!

 だいたい、俺たちだけで遂行できるようなことなのか!?

 相手は世界最大の軍事国家だぞ!?」


不安や焦りから徐々に熱くなり最後には大声になってしまっていた。


フォーセは、真正面からその言葉を受け止めた。



そして自らの左胸に右の手のひらをあてる、ノーシセス神への忠誠を誓う所作をした、



少しばかり祈ったあとに、静かに、しかし熱を持ち言葉を放った。



「……そんなことは分かっている。

 だがやらねばならない!スパネイア様が平和のため我らを導いて下さっているのだ。

 エメラルディアと戦争になるかもしれないだと?我々だけで遂行できるか不安だと?

 そんな事は我らが一番分かっている!

 このような神託を告げられ、我々に教えなければならなかったスパネイア様が一番辛いはずだ。

 だが、勇気を持ち我々に告げて下さったのだ。平和を願う一心で!

 それに答えられない臆病者は神護兵団にはいない!」



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