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セントラリア戦記~元王族護衛騎士の戦い~  作者: ふふふ
第1章 天覧試合
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第1章 ②その男、仕事を受ける。

ダリアの店「相合傘」の手伝いを始めたセント。

彼は、家賃を払えず借りていた家を追い出され、あの雨の中、野垂れ死のうとしていた。


ということもあり、住み込みで働かせてもらい、

できるだけ早く家を借りられるように便利屋の仕事も続けている。


雨季は終わり乾季になった。

ここ、コルマティア王国では、年に一度の天覧試合が、2週間後に王都ケイロアにて開催されようとしていた。


ケイロアには宮殿や神殿、天覧試合の行われるコロッセウム、その他には貴族の居住地があるのみで、門の警備は固く、一般人は基本的に近寄れない。

天覧試合の際には観客が入ることが許されるが、あくまで開催期間中のみである。


「相合傘」のある花都コラールは王都のすぐ近くで店や宿屋も多く、

そのため天覧試合目当ての観光客で、早くもにぎわい始めていた。

異国の者や魔族や獣人族も訪れており、「相合傘」のある通りも、いつもの10倍以上に人があふれていた。



「お、おいちょっと待ってくれ…!うわぁ!!」

――――――――――――――――ドっシャン!

勢いよく男が酒場から投げ出された。

「お客さん。暴れるなら外でやってもらいたいんだが。」

男を投げ飛ばしたセントが冷たく言い放つ。

悪酔いした客が騒ぎ立て、他の客に絡んでいたところにセントの制裁が入った。

セントに軽々と投げられた男は、とても敵わないと踏み、逃げていった。

「あ、待て!金払ってないだろ!!」

セントは食い逃げを許してしまったことに気付いたが、時すでに遅しというところだ。


「おうセント!今日も元気だな!」

店の前で一部始終を見ていた常連客がセントに声をかける。

「俺が用心棒になって、暴れた奴は今ので20人目だ。

 天覧試合のせいか日に日に変な奴が増えている。」


「まぁ、年に一度の祭りだし、コルマティアで開かれるのは初めてだからな。

 開催期間中はもっと忙しくなるだろうよ。」


セントが店を手伝い始めて1か月、

慣れない配膳や接客に苦戦しつつも、酒場でしっかりと仕事をこなしていた。

常連とも徐々に打ち解け、話せるようになり、少しづつ元気を取り戻していった。

そんなセントの変化をダリアは誇らしげに見守っていた。


ダリアはしみじみと、

「私の目に狂いはなかったね。いい拾い物をしたよ。」

と言うと、

「拾い物って……」と少し不満そうにセントが返した。

それを聞いていた常連達が笑う。騒がしくも平和な光景だった。


そんなにぎやかな酒場へ、風雲急を告げるかのように、

異国の風貌をした男が入ってきた。


その男は店の入り口から客席を見渡し、

「ここにセントラオンという男はいるか?」

と大きく言った。


セントが男のほうへ向かおうとする、


しかし、セントが動き出す前にダリアが

「ここは酒場だよ!何か聞きたいことがあるなら一杯注文してからにしな!」

と啖呵を切った。


異国の男は少し驚いた様子だったが、

「失礼した。じゃあホットミルクを一杯もらおうか。」

と言いカウンターに座った。


「はいよ。ホットミルクだ。

 で、なんだって?なんか探してるようだったけど。」

ダリアがミルクを出し男に尋ねる。

「セントラオンという男を探している。ここに出入りしていることは調査済みだ。」

と少し威圧的に言い放った。


それを受け流し、

「セント…ラオンねぇ。"セント"ならいるけど……」

ダリアはセントを見た。


セントは焦った様子で、

「セントラオンが俺のちゃんとした名前だよ。

 "セント"は、まぁ愛称みたいなもんでそう呼んでくれってだけだ。

 セントラオンなんて長くて呼びにくいだろ。

 で、俺をさがしてるあんたは何者だ?」

と早口に言った。


セントを一瞥し、ふぅむと少し考え、男は話しを始めた。

「俺はフォーセ、ノーシセス神国から天覧試合を見物に来たある方と共に、3日前にこの国に入った。

 "セント"……で良いんだったな。あんたにノーシセス神国の要人の警護を頼みたい。

 今は便利屋なんだろ。報酬は、それなりの額を用意する。

 聞くところによると王国の兵士だったんだろ?

 しかも、元王ぞk---」


そこで言葉を遮るようにセントが割り込んだ。


「ちょっと待て!そんな情報どこから仕入れた!?

 しかもノーシセス神国の要人だと?なんで異国の人間に護衛なんか頼むんだ。

 信頼のある自国の奴に任せるもんじゃないのか!?」



フォーセは、にやりと笑い言葉をつづけた。

「そんなに慌ててどうした?護衛に関しては、もちろんノーシセスの者もいるさ。

 だが勝手がわからない異国内だと、何が起きるかわからないだろ。

 下調べはしているが地元の奴にしかわからないこともある。

 そこで、現地の奴を案内役で招き入れようってわけだ。

 さっきも言ったが報酬はかなり多いと思ってもらっていいぜ。

 まず前金で20万ルドだ。

 日給は5万ルド、それを天覧試合開催期間中、毎日支払う。

 無事帰路に着けたら成功報酬50万ルド出すって話しだぜ?

 計算は自分でしてくれ。」


セントは戸惑いながらも、

「お、おい勝手に話を進めるな!

 俺には店の手伝いもあるし…

 って、なんだその金額!?依頼人は貴族かなんかか!?

 なんだって俺に依頼なんて……」

と状況をしっかり把握しようと努めていると。


傍らで聞いていたダリアが、

「セント、やってきなよ。それだけあれば家も借りれるじゃないか。

 店は何とかするからさ。もともと一人でやってたんだし。」


セントは少し寂しそうに

「え…、だ、大丈夫か?まだ天覧試合の前だってのに客も増えてきてるし。

 変な奴も…」

と意義を唱える。


「いつまでも店で寝泊まりって訳にもいかないだろ?便利屋としてのチャンスじゃないか!

 やってきなよ。」


とダリアに肩を押されセントは静かに覚悟を決め、

「じゃ、じゃあ詳しく話を聞かせろ。」

とフォーセに告げた。



用語集


天覧試合

各国を代表する兵士が8人までのチームで、模擬戦闘をする大会。

開催国は毎年変わる。

1か国につき2チームまで出場可能。

トーナメント制で1試合2時間、一日1~2試合というスケジュール。

10年前に大規模な戦争が終わり、その後に開催され始めた世界的イベント。

この世界にある8国家の王族や貴族が一堂に会する。


コルマティア王国:

セントたちがいる国

大国ではあるが、10年前まで大規模な戦争をしていたこともあり、

物資や人手が十分にあるというわけではない。

人口80万人


王都ケイロア:

王族と貴族、王国兵とその家族、兵術院、魔道学校の生徒(ほぼ全寮制)が暮らしている

物価が高い。

王国兵の上層部や貴族関係以外の兵隊や学生は、基本的に花都で買いものや飲食をする。

普段は王都に入るには厳しい検問があり、門の通行許可証がないとは入れない。

人口は1200人くらい

主な施設:宮殿、大神殿、コロッセウム、王墓


花都コラール:

王都のすぐ隣の町、一駅くらいの距離。

コルマティア王国で最も栄えている。観光名所も多い。

コルマティア王国といえばケイロアを思い浮かべるものがほとんど。

人口8000人くらい

主な施設:王都への道/門、コラール大噴水、花の風車


ノーシセス神国:

絶対神ノーシセスを祀る宗教国家。

コルマティア王国の東、ノーシセス島を領土とする島国。

他国との関りはほぼなく、戦争でも中立を保っていた。

人口は5万人くらい。

主な施設:ノーシセス大神殿、天啓の丘

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