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Will~想いの力  作者: 流水凛
第一章 アルテ村編
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第九話 怪人



勇一から「色白の怪人」について聞かれた村長は、しばらく考え込んだ後に話し始めた。


「20年前くらいかのぅ。カーラが生まれてすぐの頃じゃった。村の周辺に獣が異常発生したことがあってのぅ。」


「儂とリールが王都を訪れた帰り道に、この村の近くでおかしなオーラを見つけたのじゃ。人間離れした速さで移動しておったんじゃよ。儂とリールはそれの正体を確かめに近づいていった」


「すると、一人の男がすさまじい速度で移動しながら次々と獣を狩っておった。まるで修行でもしているかのようにの」


「友好的なオーラではなかったから儂とリールはそのまま村へ戻って警戒をしておったんじゃが、次の日その男が村を訪れたのじゃよ」


「青白く痩せていての。見た目は貧弱なんだが、凄まじいウィルの持ち主じゃった」


「この宿屋に泊まったんじゃが、夜にちょっとしたことで若い連中とやり合うことになってしまっての...」


「...全く相手にならんかった。」


「男はそのまま姿を消したんじゃが、それから10年ほど経って、ドレスデン王国の建国祭にドーウィル伯様と観光がてら旅した時に、向こうでその男をみかけたんじゃよ」


「ドレスデン王国の兵団長になっておった。『色白の怪人』の通り名は知っておったがまさかあの男とは思わんかった」



「色白の怪人」は以前、この村を訪れていたのだった。


勇一は前夜に聞きかじった内容を村長にぶつけてみる。


「その、『色白の怪人』がドレスデン王国を支配して他国の制圧に乗り出したってことなんですか?」


村長はため息をついてこう語った。


「そこまではわからんのじゃ。だが、おそらく『色白の怪人』に勝る具現士は世界におらんじゃろう。ドレスデン王国の巨大な国力を考えると『色白の怪人』が他国を侵略し始めれば、脅威となることは間違いないじゃろう」


(どこの星も国家間の争いは避けられないんだな...)


勇一はこの星も大国の対立が荒廃を招いた地球のようになってしまうのは避けなければ、と強く思った。


ここは勇一にとって大切な移住の地なのだから。



・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



勇一が村長と話をしていると、荷物をまとめたカーラがやってきた。


「ユーイチ、おはよう!急な話でびっくりしたけど、準備出来たわ。王都楽しみね!」


「おはよう、うん、よろしくね」


「ユーイチは王都行ったことないんだよね?任せなさい!私がオススメを案内してあげるわ」


カーラは上機嫌だ。それが王都へ行けるからなのか、同級生だったという王女に会えるからなのかはわからなかったが、勇一は「自分と一緒だからかも...?」などと考えていた。



ドーウィル伯夫妻も準備を終えて階下へ降りてきた。食堂にはリールとロディも顔を見せており、外には領主を見送るため村人たちが集まっている。


できるだけ早く王都に到着するため、のんびりしている暇はない。すぐに出発だ。



リール「ユーイチさん、カーラをよろしくね」


ロディ「さっきの、忘れんなよ!」


そんな言葉をもらって、ユーイチはカーラと共にドーウィル伯の馬車に乗り込んだ。



・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



ドーウィル伯の白木の馬車に乗り込んだ勇一は、夫妻と向き合う形でカーラと並んで座った。


人見知りしないカーラは夫妻と楽しそうに話し込んでいるが、勇一は話に加わることが出来ず、外を見ていた。


(王都に着くまできまずいなぁ)


だが、それもすぐに杞憂となった。ドーウィル伯が勇一に興味を持ち、いろいろと質問を投げかけてきたからだ。


「ユーイチ君の力はすごかったみたいだね。あのロディが驚いていたくらいだから」


「ロディは有名なんですか?」


カーラが口を挟む。


「ロディは村で唯一の3級よ?あれでも頼りになるんだから」


確かにロディは賊の襲撃でも門を守るように奮戦し、周りの人々がウィルで火を操る攻撃をしていたのにひとりだけ石を操作して攻撃していた。あれが3級の力なんだろうか。


勇一はドーウィル伯に「3級ってなんなんですか?」と尋ねてみた。


カーラが口を挟む。


「具現士のランクよ。1級から4級まであるの。4級は火を出したり水を凍らせたりの物質変化系だけど、3級は物質そのものを操作出来るのよ。すごい人だと岩を飛ばしたりも出来るわ」


(3級は物質操作系ということか。なるほど、石を投げていたロディの攻撃は3級の力だったというわけだな)


「2級になるとどんなことが出来るの?」


ドーウィル伯が引き取る。


「2級は身体強化系の具現能力を身に着けているね。ユーイチ君のスピードやパワーはこの2級に相当するというわけだよ。」


(科学技術の力なんだけどね...)


「では、1級になると?」


「うむ、1級は希少な能力の持ち主にしか与えられない。例えばカーラのお母さん、リールのオーラを見分ける能力だ。彼女は今でこそ宿屋の主だが、若い頃は王国兵団の諜報部隊で1級具現士として大活躍をしていたんだよ」


(宿屋の女主人に過ぎないリールが村の幹部になっている理由はそれか)


「リールさん、すごいんだな」


「まーね。見直した?」


カーラが得意気に勇一を見ている。


ドーウィル伯は続けた。


「ただし、1級の上に特級というランクもあるんだ」


「特級...ですか」


「特級になるとすべてが特別扱いになり、自治領を与えられて国王に準じた存在になるんだ。世界にある4つの王国と3つの自治領、この3つの自治領はいずれも特級具現士が支配しているんだよ。つまり特級具現士は世界に3人しかいない」


「特級になるにはどんな条件が必要なんですか?」


「特級具現士は例外的な存在だからこれという条件は定められていないが、3人は皆凄まじい戦闘能力を持っており、いずれも召喚能力を持っていると聞いている」


「召喚...」


(召喚って死者を召喚?)


あまりに人間離れした力に、具体的なイメージが浮かばない勇一だった。


勇一は最後にこう質問した。


「級のランク付けは誰がやるんですか?」


カーラが出番とばかりに口を挟む。


「教皇庁よ。王都にもあるから勇一も行って2級を取ったらいいわ。すぐにもらえるかわからないけど」


(教皇庁か。国をまたいだ影響力のある組織は移民交渉でキーマンになるからな。覚えておこう)



途中、昼食の休憩を挟んだりしながら、辺りが暗くなった頃、一行は無事に王都へ辿り着いた。



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