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Will~想いの力  作者: 流水凛
第一章 アルテ村編
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第八話 護衛



カーラが勇一の部屋を訪れる少し前に、食堂では賊を撃退し報告のために戻ってきたロディが領主や村長、それにリールと襲撃について話をしていた。


ロディ以外の男たちは戻ってきていない。負傷者の収容や見張りに追われているのだろう。


食堂に残っていた女性たちは襲撃を退けたと聞き、一様に安堵の表情を浮かべている。



ドーウィル伯「被害は?」


ロディ「騎士が4人、村の男が7人負傷しました。3人が重傷ですが死者は出ていません」


村長は近くにいる女性たちに村の集会場を開放して負傷者を収容するよう指示し、ロディには男たちに引き続き門の警護をさせるよう命じた。


ロディ「ただ...柵が少し損傷したので、修理しなければなりません」


ロディは勇一が敵のリーダーを投げ飛ばしたことが勝利の決め手だったこと、その結果柵が壊れてしまったことを報告した。


驚くドーウィル伯夫妻とカーラ。リールは驚いていない様子だ。


村長も冷静だ。「ホッホッホッ、やはりのぅ」意味深に笑っている。



リールが初めて口を開いた。「カーラ、ユーイチさんは2階の部屋にいるわ。お礼を言ってらっしゃい」


リールは勇一の超スピードや2階の部屋に戻ったこともウィルで把握しており、先程「足手まとい」と言ってしまったカーラのために謝罪の機会を作ってやったのだった。



カーラが2階へ上がっていくと、ロディも男たちを手伝いに戻り、食堂ではドーウィル伯夫妻、村長、それにリールが襲撃についての話を再開した。



ドーウィル伯「領内は平穏だと思っていたが...税金の運び方は今後検討しよう」


リール「最近は平穏でもないんですよ?この村にも数人の小規模な襲撃は時々ありますから」


村長「世界的に治安が悪くなりはじめているようじゃ。道中の警戒は強化せねばなるまいな」


ドーウィル伯夫人「でも騎士が減ってしまって心配だわ。どうしましょう」


村長「この村も人手が減ってしまったしのぅ」


ドーウィル伯「騎士を追加で呼び寄せるか...領主会議に遅れてしまうかもしれないが」


するとリールが再び口を開いた。


「ユーイチさんに同行してもらっては?今回の件で実力がわかったことですし。カーラが一緒なら少しは安心してもらえるんじゃないかしら」


村長も「騎士を待って領主会議に遅れるよりは良いかもしれんのぅ」と同意する。


ドーウィル伯は勇一との接点がなかったため多少不安気ではあったものの、結局リールの提案に従って勇一に同行を頼むことに同意したのだった。



・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



翌朝。まだ部屋から出てこない勇一の部屋をノックする音がする。


コンコン


「ユーイチさん、起きてるかしら?」


カーラではない。リールの声だ。


「ドーウィル伯様がユーイチさんにお話があるというの。降りてきてくれるかしら?」


(ああ、やっぱり...)


ベッドの中で少し前に目を覚ましていた勇一は昨夜の能力を追及されるのだろうと思い、気が重かった。


身元もわからない自分がロディ曰く「普通じゃない」能力を見せたのだ。


キノピー星やアルデンテ王国の法律はわからないが、何らかの犯罪になってしまうのではないかと心配になるのも無理はなかった。


まぁ、いざという時は超スピードで逃げてしまえばいいのだが。


勇一が重い足取りで階下に降りていくと、ドーウィル伯は既に昨日と同じテーブルに座っており、村長とロディ、それにリールも同席していた。


ドーウィル伯夫人は自室で荷物の整理でもしているのだろうか。



「おはようございます」


勇一が声をかけるとロディが席を譲ってくれた。


「ユーイチ、昨日はすごかったな!」


ロディが明るい声で肩を叩いてくる。ドーウィル伯の表情も明るいようだ。


(思ったより暗くないな...?)


てっきり裁判でも始まるのではないかと構えていた勇一には予想外の反応だ。


リールが口を開く。


「ユーイチさん、急で申し訳ないんだけどドーウィル伯様の王都までの道のりをあなたに同行していただけないかと思っているの」


きょとんとする勇一。


ドーウィル伯が言葉をつなぐ。


「ユーイチくんだったね。昨日はありがとう。領民に代わってお礼を言わせてもらうよ。君のおかげで皆から集めた税金を奪われずに済んだ。」


「いえ...」


「君がこの村へ来てからの経緯は聞いている。すごいウィルの持ち主のようだし、力を隠そうと考えたのも無理はない。身体強化能力は貴重だからね」


(あれはウィルではなくパワードスーツと重力シューズの力なんだけど...)


「私はこれから王都に向けて出発しなければならないが、昨日の戦いで護衛の兵が減ってしまった分を補う意味で君に同行を頼みたいんだ」


村長とリールも頷いている。ロディは勇一の後ろに立っているためわからないが、おそらく似たような表情なのだろう。リールが続ける。


「ユーイチさんの旅がどこを目指しているのかわからないんだけれど、協力してくれないかしら。これから出れば夜には王都に着きますから、それほど長い時間はかからないわ。それにカーラを一緒につけようと思うの」


(カーラが一緒に?)


おそらく勇一ひとりに頼んでも断られるだろうと踏んでのことだろう。


勇一は少しほっとした。というのも、4人乗りらしいあの馬車にドーウィル伯夫妻と共に乗り込んで過ごすのは人付き合いが得意ではない勇一にとって避けたいと思ったからだ。馬に乗るならまだしも...


でも、カーラと一緒なら何とかなりそうな気がする。


(領主と一緒に怪しまれず大手を振って王都に入れるなら願ったりだな。ここよりたくさんの情報が手に入りそうだし)


裁判どころか渡りに船とばかりの条件提示に勇一は安堵するとともに心のなかでひそかにガッツポーズした。


リールによるとカーラは以前、王都学校でアルデンテ王国のロメイン国王の娘、アンリ王女と同級生だったのだそうだ。そのため王都には明るく、向こうでも勇一のガイド役を務めることが出来るだろうという。


(王都を案内してもらえるのか。これは楽しくなりそうだ)


ドーウィル伯は勇一に報酬の提示も行ったが、現地の相場がわからない勇一は「はい、それでいいです」とだけ答えておいた。



出発は1時間後ということになり、自室に戻っていくドーウィル伯。


勇一も一度部屋へ戻ろうと席を立ったが、階段前で後ろからやってきたロディに捕まってしまった。


勇一の肩を抱いて顔を近づけるとこう言ったのだ。


「カーラと一緒だからって手、出したらダメだぞ?」


本気で心配しているようには見えないことから結婚相手として勝手に名乗り出ている以上、一応釘を差しておきたいということなんだろうか。


「大丈夫ですよ。ロディさんの未来の奥さんなんでしょ?」


そういうとロディはニカッと笑い「頼んだぞ」と言って勇一の肩をバンバンと叩いた。


(意外に扱いやすい人だな)



・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



一度部屋へ戻った勇一だったが、荷物をまとめようにも何一つないのだった。


敷いて言えばK-116だがこの存在を知られるわけにはいかない。


それどころか、借りた服を返さねばならないのだ。


「出発で逆に荷物が減るとか」


ひとりそういうとクスリと笑う勇一。少し前まで犯罪者になるのではないかとドキドキしていたからだろうか、思わぬ展開に心が軽くなっているようだ。



ルームキーを返そうと再び階下へ戻った勇一は、カウンターにいたリールに着ている服をもうしばらく借りておくことは出来ないかと申し出て快諾を得た。リールは勇一に与えたつもりだったようだ。


これは嬉しい。パワードスーツの黒尽くめでは目立って仕方ないためだ。


リールに礼を言って食堂へ行くと、既にロディはおらず村長が一人で先程のテーブルに座っている。



時々、鋭い視線を投げかけてくる村長と対峙するかのような状況に少しためらいながら、勇一はいくつか質問をぶつけてみようと思い立ち、近づいていった。



「ユーイチ君、準備は出来たかの?」


「ええ、何もないですから」


「そうじゃの、ホッホッホッ」


こんなやり取りを交わしてから勇一は本題に入った。


「あの、聞いてもいいですか?」


「なにかね」


「『色白の怪人』ってどんな感じなんですか?」


勇一は「色白の怪人」について自分でも何を知りたいのか判然としなかったので、「どんな感じ」という曖昧な言葉で濁しながら情報を得ようと考えた。


しばらく沈黙した後に、村長は語り始めた。



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