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Will~想いの力  作者: 流水凛
第一章 アルテ村編
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第五話 確認



夜更け。


狼鍋の宴会は終了し村人たちは三々五々、自宅へ帰っていった。


勇一も2階の部屋に戻っていたが、キノピー星に到着してからわずか1日の間に相次いで起きた出来事を振り返り湧き上がる疑問について考えると、眠りにつくことは出来なかった。


(この星に原住民がいたことを政府は把握出来ていなかったのか?広口径望遠鏡なら村落の存在程度はわかりそうなものだが)


(ウィルとは何なんだろう。カーラは物質を操る力だと言っていた。ロディは物質変化系や身体強化系の具現能力とも言っていたな。キノピー星の人々は皆、そんな能力を持っているんだろうか?冷蔵庫がないのに冷えた酒が飲めたのもその力なんだろうか)


(村長が最後に言っていた「色白の怪人」も気になる。特殊な能力を持つ人間がいるのなら今後、身の危険に晒されるかもしれない)


(それに村があるってことはもっと大きな町もあるに違いない。リールは領主様と言っていたし。ひょっとしたら国レベルかも。規模や勢力を調べないといけないな)



キノピー星に着くまで、大気や水質それに細菌類といった基礎的な調査の後、生態系を調べ人類の移住に適しているかどうかをのんびりと調べれば良いと思っていた。


だが、地球より数百年遅れているとは言え文明が存在していることがわかった以上、それらに加えて彼らとどのように共存していくのかという点が新たなそして最も重要な課題となる。


人類の移住について彼らの許可も得なければならないだろう。3年間という期間でそこまでまとめきれるのだろうか。


「明日考えよ」


自分を慰めるかのようにそう言うと、勇一はベッドに潜った。



・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



疲れてぐっすりと眠ったはずの勇一だったが、慣れないベッドで寝たからだろうかそれとも気になることが山積していたからだろうか、夜が明ける前には目を覚ましていた。


「...やっぱり気になる。調べてみよう」


勇一はつぶやいた。どうしてもウィルについて確かめてみたいことがあったのだ。


それはウィルが原住民に固有の能力であるのかそれともキノピー星にウィルを生み出す特殊な要因があるのかという点であった。


前者であれば自分にウィルの発動は出来ないことになるが、もし後者ならキノピー星では自分にもウィルが使える可能性が生じるためである。


カーラはウィルで火を起こしていたので自分も「ファイア!」と言ってみたい衝動に駆られていたが、万一火事でも引き起こしたら大変なことになってしまうので勇一は宿屋で試すのは控えた。


そこでまだ夜が明けないうちに村の外へ行って試してみることにする。


重力シューズの推進力を使って黒尽くめで素早く移動すれば、暗がりで見られることはないだろう。


K-116は保護色モードのまま部屋に待機させておくことにする。


勇一は多少怖かったがパワードスーツと重力シューズを身につけると2階の窓を開けた。飛び降りるつもりなのだ。


宿屋の階段を降りたり玄関を開ける音を聞かれてしまってはまずいと考えたからである。


ヒュンッ!


意を決して飛び降りてみる。


キノピー星の重力とパワードスーツ、それに重力シューズであればケガをすることはないだろうと判断していた勇一だったが、着地の際の衝撃がほとんどないことには自分でも驚いた。まるで羽が地面に落ちた際のようにフワッと着地することが出来たのだ。


「すごいな重力シューズ」


だが誰が見ているかもわからないため着地点に長居することは出来ない。すぐに駆け出して昼間に来た道を走り始める。


キノピー星を走る勇一の姿はまるで風のようだった。地球ではありえない速度で流れていく周囲の景色を見ながら、勇一は改めて前日に狼を倒した際のことを思い出していた。


(これじゃ、あの成体ウルフが吹き飛ぶのも無理ないよなぁ)


辺りは暗いとは言え月の光に照らされていたことから勇一は難なく村の門近くまでたどり着くことができた。小さな村のため、夜間は門を閉じ自警団はいない様子である。


一度は門を開けようとした勇一だったが、何かを思いついたかのように後退りして門からやや離れた位置に移動する。


そして「えいっ」と言ってその場で高くジャンプしたのだ。どうやらキノピー星の重力環境下でパワードスーツと重力シューズによる跳躍能力がどの程度なのか調べようということらしい。


月明かりに照らされた黒い姿のの勇一はなんと10mほども高く飛び上がった。3階か4階建てのビルほどもある高さだ。


跳躍能力を確認し満足そうな表情で着地した勇一は、それから門を開けることなく軽々と飛び越して村を後にしたのだった。



・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



勇一は前日にカーラと出会った辺りを目指して走った。近くの林に隠した宇宙船にレーザーガンを戻しておくためである。


一度宇宙船に戻った勇一は、狼を倒した付近で改めて草原に寝そべる。


「月がキレイだなぁ。こんなふうに草むらに寝そべるなんて、地球では想像もしていなかった」


「それにしても月が青くて美しい。月と呼んでいいのかわからないけど。昔、地球から見えた月もこんなふうに美しかったんだろうか」


シーンと静まりかえる大地に語りかけるようにつぶやくと、しばらく感慨にふけった後で勇一は気持ちを切り替えた。


「よし、ウィルとやらを試してみるか」


昨夜、カーラは「ファイア!」と言って手をかざしていたので勇一も同じようにやってみた。


「ファイア!」


...しかし、何も起きなかった。


「うーん...ダメか」


「やっぱりキノピー星の人たちに固有の能力なのかな」


勇一はカーラの言葉を思い出していた。


「カーラは『ウィルは物質を操る力のことよ』と言っていたな。」


そこで勇一は物が燃えるための三条件、温度と酸素を思い浮かべ、それに燃えるものとして草を何本かむしり手に乗せてもう一度唱えてみた。


「ファイア!」


するとなんと、手の先にある草が燃え、炎が現れた。


「おおっ!」


思わず声を上げる。


なんということだろう。勇一は思念で草を燃やすことに成功したのだ。


「これは...すごい」


だがカーラは何も持っていなかった。燃える対象物がなくてもファイアは使えるものなのだろうか。それからしばらく、勇一はカーラのように何も持たずに火を出せないか何度も試してみたが結局うまくはいかなかった。


「まぁカーラは子供の頃から慣れ親しんできたのだろうし、一朝一夕には同じように行かないか」


気を取り直して勇一は次の実験に移ってみることにした。火をつけることが出来るのならモノを凍らせることも出来るのではないかと考えたのだ。


宇宙船にレーザーガンを置きに行った時、近くに直径10mほどの小さな水たまりがあるのを見つけていた勇一はそこまで移動してこう唱えてみた。


「アイス!」


草の代わりに水があるから手ぶらの状態とは異なるだろうと思っていた通り、今度はうまくいった。水たまりの水が足元から凍りついていき、およそ半分近くに少なくとも表面上の氷の膜が張ったのだ。


「おおっ!」


再び声を上げる。


ここで勇一ははたと気がついた。


「そうか、昨日の酒が冷えていたのはこの力で冷えた酒を作っていたんだな。つまり冷蔵庫などこの星には必要ないってことか。思いつかなかったハハハ」


いつのまにか笑っている。新しい能力の発現にどうやらご機嫌らしい。


しかし気になるのはその原理だ。いったいどんな仕組みでこの星ではこんなことが出来てしまうのだろうか。


勇一はこれでも科学者の端くれ。専門こそ生物学だが、科学的に解明できなければ気がすまないのである。


「うーむ」


考え込み始めた勇一はいつの間にか水たまりのそばに座り込んでいた。


(地球にある似たような現象といえば超能力...モノを動かしたり変形させるテレキネシスか...あれを強化した能力が発現しやすい何らかの環境がこの星にあるのだとしか考えられないが...)


(念能力...意思の力...そうか、それでウィルっていうのか)


勇一はその原理を何一つ解明していないにも関わらず、なぜか少し納得した気分になっていた。



それから小一時間、勇一は様々な方法で「ウィル」を試してみた。「ファイア!」の代わりに「燃えろ!」と言ってみたり、「アイス!」の代わりに「凍れ!」と唱えてみたり。


また、石を持って「砕けろ!」と念じると粉々に砕けることもわかった。


その結果、大切なのは「思念の強さ」であるらしく、半信半疑で「アイス!」と念じた先程よりも、池の底まで凍りついてしまえ!という気持ちで強く願った際のほうが厚い氷となったのだった。


だが、新たな心配も沸き起こってきた。


「この星の人達がみんなこんなことが出来るのなら、身の安全をどう守っていくのかもう一度考え直したほうがいいかもしれない。この能力は危険だよ」


レーザーガンを再び宇宙船から持ち出そうかとも考えた勇一だったが、それはあの気のいい人達への信頼を裏切っているような気持ちになってしまいそうなので、ひとまずはそのまま宿に戻ったのだった。


もちろん帰りも風のような速さで走り、門をひとっ飛びして。2階の窓から部屋に入るために上手にジャンプするのは多少苦労したが、なんとか朝になる前に再びベッドに入ることが出来た。



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