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Will~想いの力  作者: 流水凛
第一章 アルテ村編
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第四話 宴会



ドンドンドン!


部屋のドアを叩く音がする。


「...ん?」


「夕食よー!食堂に集合だからねー!」


どうやらカーラが呼びに来たようだ。


窓の外を見るともうすっかり夜である。


(ああ...寝ちゃったんだな)


勇一はキノピー星到着からこれまでのことをひとつずつ確認するように思い出しながらベッドから起き上がった。


「それからドアの外に服を置いておくわ。お客さんの忘れ物だから気にしないで使って」


勇一の黒尽くめが不審がられないようにという配慮だろうか、カーラと母のリールは服まで用意してくれたらしい。


「いい人たちだなぁ」


ドアを開けてみるとカーラは既におらず、足元には小さなカゴにグレーのシャツとグレーのズボンが置かれていた。


着てみるとサイズに違和感はない。地味だがこれで外を歩いても目立つということはないだろう。現地でなるべく目立ちたくない勇一は宿屋の気配りに感謝した。



「K-116、いま何時?」


保護色モードのままベッドサイドに控えていたK-116が動き出す。


「現地時間18:28デス」


「もうそんな時間なのか。すっかり寝入ってしまったな」


カーラは一人客の自分に「集合」と言っていた。やっぱり狼鍋で宴会ということなんだろうか。


狼など口にしたこともない勇一はやや不安になった。それによそ者は注目の的になってしまうはず。


(飲まされたり食わされたりしたらヤダなぁ)


K-116を保護色モードのままついてくるように言うと、勇一はカーラが持ってきてくれた服を着て、K-116にこう指示をした。


「食べ物、飲み物はリアルタイムでスキャンしてくれよ。危険な物質があればすぐに教えて」


「リョウカイシマシタ」


「それでは、行きますか」


お世辞にも社交的とは言えない勇一は、意を決したようにそうつぶやくと階段を降り食堂のドアを開けた。



・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



勇一が食堂のドアを開けると、中には既に数十人の人々が集まっており、賑やかだった。


まるで村人全員が集まっているかのようだ。


「おおい、主役の登場だぞ!」


ひときわ大きな声が上がり皆が一斉に勇一の方を振り向く。


声が上がった方向を見ると、昼間に村の入口に立っていた男だ。


「こっちこっち!早く来いよ」


彼は大きなジョッキを持ちながら人懐っこそうな笑顔で勇一を呼び寄せると自分と同じテーブルに座らせた。


飲んでいる紫色の液体はワインのように見える。


食卓には美味しそうな匂いをさせながら狼鍋が既に出来上がっている。


「今日の狼鍋はこいつのおかげだからな!みんな礼を言っておけよ!」


男はどうやら村の仕切り役でもあるようだ。よく見ると筋骨隆々で身長はおそらく180cm以上あるだろう。村で何かの役職にでも就いているのだろうか。



勇一が席につくと、キッチンから狼肉を載せた大皿を持ちカーラがやってきた。


「ロディ、声が大きいわよ。彼がびっくりしてるじゃない」


「そうか?スマンスマン」


男はロディというようだ。カーラは続けた。


「ユーイチさん、でいいのよね?私はカーラ。改めて今日は助けてくれてありがとう」


「あ、いえ、こちらこそお世話になっちゃって...」


勇一を遮るようにロディが口を開く。


「俺はロディ、38歳、自警団の団長だ。夢はカーラと結婚してこの宿屋を継ぐことだから覚えといてくれよな!ガハハハ!」


「またバカなこと言って。あなたと結婚するわけ無いでしょ!」


「そう言うなって。これでもいいとこあるんだぜ?頼りになる男だしよ!」


「まぁ村で唯一の3級具現士だしね...頼りになるのは認めるけど...ないない!」


(また3級が出てきたぞ。具現士というのか。冒険者のランクとかそんな感じなんだろうなきっと。要するに村で一番の実力者がロディということで間違いなさそうだ)


カーラはロディとの掛け合いを終わらせ、4人目の男性に話を移した。勇一のテーブルにはロディ、カーラともうひとり、白髪で小柄な老人が同席していたのだ。


「メヒム村長よ。さっき今日のことを話したらあなたに会ってみたいとおっしゃったの」


(村長さんまで...なんか村を挙げての歓迎になってるな)


「はじめまして、勇一です。旅をしていたんですが記憶喪失で何も覚えて無くて...」


勇一はいろいろ聞かれるとややこしいことになりかねないため、自分から記憶喪失であることをアピールしておいた。


「今日はカーラを助けてくださったそうで。私からもお礼を申し上げますよ。ホッホッホッ」


村長は機嫌良さそうにそう言った。


「私も自己紹介していなかったわ。今日は危ないところをありがとう。カーラよ。ユーイチ、って呼べばいいのかしら?」


「うん、ユーイチでいいよ。こちらこそ宿屋が見つかってよかった。ありがとう」


勇一にカーラを名前で呼ぶ勇気はまだない。


「おいユーイチ、成体のウルフを素手で倒したって本当なのか」


ロディが蒸し返してきた。


「あれは...当たりどころが悪かったんじゃ...ないのかな...」


多少狼狽えながら答えたがロディは許してくれない。


「カーラはお前のウィルが発動したんじゃないのかって言ってるんだよ。そうなのか?」


「いや...ゴメン記憶がなくて...ウィルっていうのがそもそもなんなのか...」


勇一は答えながらも、ウィルがなんなのか知るチャンスかも知れないと思いながら返した。


「ウィルは例えば物質を操る力のことよ。こういうのね。ファイア!」


カーラがそう言って手をかざすと、手のひらから小さな炎が出現した。


勇一は驚いたが、人々に驚いた様子は見られない。


この能力がキノピー星の人々にとってごく当たり前であれば掘り下げて聞くのは疑念を高めてしまうかもしれないと思い、驚きを隠しながら「ふぅん」とだけ言っておいた。



ロディが続ける。いつの間にか表情から笑みは消えていた。


「まぁ今のは物質変化系の初歩的なウィルなんだが、カーラの話だと成体ウルフを倒した時、超スピードで現れてすごい力で吹き飛ばしたんだって?身体強化系の具現能力は普通じゃないんだよ。もしそれが本当なら相当な実力者だし、村としても警戒しなくちゃならない。だから気になってるんだ。気を悪くしないでくれよな」


「いえ...あれは本当に近くにいて、無我夢中で狼に体当たりしただけで...たぶん当たりどころが悪かったんじゃないかと...」


パワードスーツの力で自分の能力とは関係ないんだけどな...とは思いながらも、勇一は自分が特殊な人間ではないのだと理解してもらおうと努めた。


「自分のことも覚えてないんだって?」


ロディが食いついてくる。


「う、うん...」


「ユーイチもそう言ってることだし、この話はもういいじゃない!狼鍋を食べましょ!これだけ大勢で狼鍋を食べられるのは久しぶりなんだから」


カーラはすっかり勇一の味方になってくれているようだ。母親が勇一に不審感を抱かなかったことが影響しているのだろうか。


「そうだな。とりあえず乾杯するか!ようこそアルテ村へ、ユーイチ!」


ロディはまだ十分納得したとは言えない様子だったが話を変えてくれた。ロディの音頭で会話を聞き入っていた食堂の人々が一斉に乾杯する。


ユーイチもキンキンに冷えたワインを多少ぎこちない笑みを浮かべながらゴクゴクと飲んだ。


(確か冷蔵庫は見当たらなかったよな?どうやって冷やしたんだろう)


そんな疑問を抱く勇一だったが、それ以上に気になったのが村長が勇一を見つめる眼差しであった。


冷静に何かを見極めようとでもするかのような視線に、勇一は少し不安になった。



・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



カーラやロディは村の運営について狼鍋をつつきながら議論していたが、飽きたのかロディが再び勇一の能力についての話を蒸し返してきた。多少酔ってきたせいもあるのだろうか。


「おいユーイチ、お前本当にタダの人間なのかよ?本当はすごいウィルの持ち主で、隠してるんじゃないだろうなぁ~?」


勇一はドキッとしたが、愛想笑いを浮かべながら「そんなことないですよ」と否定した。


「いやいや~、よーし、確かめてみようぜ。俺と腕相撲だ。それならいいだろ?」


ロディの申し出を聞きつけた周囲のテーブルの人々が盛り上がる。


「いいぞ、やれやれー!」

「ロディの連勝をストップさせてやれ!」

「若いの、がんばれよー!」


(ロディはこの村で一番の力持ちらしい。この体格ならまぁそうだろうな)


村人たちは勇一の隠された力に興味があるというよりはロディの敗北を見たいという気持ちのほうが強いようだ。


カーラの方を見ると「やってみれば?」とでも言いたげな目で行く末を見守っており、止めてはくれない様子。


(仕方ない...やるか...)


パワードスーツの力がなければ勇一はただのひ弱な若者に過ぎない。本気を出しても怪しまれることはないはずだった。


ロディは既にテーブルに肘を立て「さぁ来い」とばかりに待ち構えている。


勇一はシャツをまくしあげ、ロディより遥かに細い腕で相手の手をガシッと握ると力を込めた。


カーラがふたりの拳を両手で持ち合図する。


「レディ、ゴー!」


バァン!


...瞬殺だった。


「イテテテ...」


あまりの力の差に勇一は勢いよくテーブルに手を打ち付けてしまう。



「ガッハッハッ!やっぱり怪力は何かの間違いだったか!」


ロディが勝ち誇ったように言う。


「もう!すこしは手加減してあげなさいよ」


カーラが心配してくれた。


村長が口を開く。


「ホッホッホッ。やはり『色白の怪人』みたいにはいかないのぅ」


(色白の怪人?)


勇一が「なんですか?」と聞いてみると、以前、見た目からは想像できないほどの力自慢が村を訪れたことがあるらしかった。



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