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Will~想いの力  作者: 流水凛
第三章 具現の師編
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第二十五話 大会



具現の師と4人の師範代が試合に出ることはなかった。


彼らが強すぎて弟子たちには歯が立たないためなのか、彼らにスカウトを受けるつもりがないため出場していないのかはわからないが、正面の最前部に位置する席から弟子たちの試合をじっと見守るのみである。



だが、勇一の試合相手が発表されると競技場内がどよめく。


なんと相手は四天王で師範代のルッテだったのだ。


これが異例であることは毎回訪れているのだろう各国の諜報部員達が見せている驚きの表情からもわかる。


セブ執事も正面の中断席から身を乗り出していた。



具現の師と他の3人の師範代はルッテの出場が発表されても無反応であることから、おそらく前もって勇一の相手はルッテが務めることで合意済みだったのであろう。


隣の師範代と話していたルッテは、トン、と軽くジャンプして競技場へ降り立った。



(この人が相手か)


勇一は気を引き締めた。だが、修行による勇一の発現能力はルッテの指導を受けた際よりもかなり成長している。


あの時ルッテが見せたウィルは30mほど伸びていたが、今や勇一のファイアは50mほどまで遠くに飛ばすことが出来るのだ。相手が四天王とは言え、自分があっさりと負けるとは思っていなかった。



「勝ってやる」


思わぬ展開となったが、勇一にとっては各国や貴族たちに名前と顔を売る大きなチャンスである。気合が入るのも無理なかった。



競技場に降り立ったルッテが勇一の方に歩み寄ってくる。


「ユーイチ君の成長ぶりを具現の師が楽しみにしていたよ。師範代も皆、君には関心を持っているようだ。もちろん、私もね」


「はい、よろしくおねがいします」


勇一が答えると、同時に試合開始の掛け声がかかった。



開始の合図と同時に後ろに飛び距離を置くふたり。それぞれが20mほどもジャンプしただろう。勇一の力は重力シューズによるものだったが。


そして勇一は着地と同時にファイアを放った。約50mほども火炎放射器のように伸びていく炎。


(ルッテさんの射程は30m程度。これでどうだっ)


客席から「おおっ」という声が上がる。


だが、ルッテも着地と同時に素早く左へ移動したたため勇一のファイアが直撃することはなかった。


「ユーイチ君、やるな!」


「だが、こないだのが全力だったわけではないぞ」


ルッテはそう言うと右手を前に突き出し、左手を添えて「ファイアー!!」と叫んだ。


勇一のファイアより遥かに大きな、直径1mはあろうかという巨大な炎が勇一の方に押し寄せてくる。


重力シューズの力で5mほどジャンプして回避したが、その炎は勇一から更に後ろ50mほどまで伸びていた。


(射程100mだと...?さすが四天王、ってとこか。くそっ)


ルッテの攻撃は続く。今度は勇一の着地に合わせたかのように氷の刃の攻撃だ。氷柱のような形をした約50cmの鋭利な氷の刃が10本ほど勇一に向かって飛んでくる。


それを見た勇一は着地の瞬間、再び20mほど後ろにジャンプして距離を取ると、火で壁を作ってこれを防御した。自分の前に高さ2mほどの炎の壁を作り、敵の攻撃を防御する技である。


向こうではルッテが右に素早く回り込み、今度は壁のない横から攻撃を仕掛けようとしている。


だが、勇一の反応を見たルッテは「ダメか!」と言って地面を思い切り蹴った。


ルッテは高さ15mほどの上空まで一気にジャンプすると、そこで静止。


(空中浮揚まで使うのか!)


観客席がざわついている。



頭上の有利を取ったからか、ルッテがすぐに攻撃してくることはなかった。


「ユーイチ君、すごいな君の能力は!空中浮揚まで使うことになるとは思わなかったぞ!」


「だがこれで終わりだ。私を追い込んだ君の力は誇っていい」


そういうと右手を勇一の方に向け左手を添えてファイアを放つ動作を見せる。



しかし、勇一はここで終わらせるつもりはなかった。


(あれを使うか)


まだ十分にマスターしたとは言えないが、勇一は炎を風の力で打ち消す技を開発中だったのだ。


勇一が「ハリケーン!」と叫ぶと、勇一のまわりに空気の渦が発生、小型の台風になった。


ゴオオオオーッ!


台風の目の位置にいる勇一を中心に猛烈な空気の流れが生まれ、ルッテは巻き込まれ体制を崩す。


「なにっ!」


勇一の上空で舞ったルッテは、ウィルの収束とともに地上に落下した。


「イテテテ...」


腰をさすりながら笑うルッテ。


「まいったな...あんな技を持ってるのかユーイチ君は。残念だが降参だ」



ルッテの降参で試合が終了すると、競技場がどよめいた。


「誰だあの子は」「新顔だな」「要チェックだ」そんな声が聞こえ、セブ執事が立ち上がって一際大きな拍手を送っている。



勇一はルッテの方へ歩み寄り「ありがとうございました」と頭を下げた。


ルッテはすこしバツが悪そうだったが笑いながら


「いやーまいった。完敗だよ。具現の師が君に注目してたわけがわかったよ」と言った。



・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



試合を終えた勇一が控室に戻るとセブ執事がやってきた。


「ユーイチ様、お見事でございました。この短期間で具現の師の四天王を倒せるほどになるとは。今日の試合のことはロメイン国王陛下にしっかりとお伝えさせて頂きます」


「ありがとうセブ執事。これも国王陛下に紹介状を書いて頂いたお陰です」


「いえいえ、ユーイチ様の実力でございますよ。そうそう、カーラ様ですが、数日前に無事アルテ村にご帰還なされたとのこと。アンリ王女にその旨お手紙がございました」


(カーラは無事に帰れたんだ。よかった)


勇一はほっとした表情を見せた。


「きっとユーイチ様がカーラ様のご無事を案じていらっしゃるからお伝えするように、とアンリ王女に言付かって参りまして」


(優しいんだなアンリ王女)


「それでは私は失礼申し上げます。おそらくこれから各国がユーイチ様の争奪戦となることでございましょう。私と致しましてはユーイチ様にはぜひ、我がアルデンテ王国にてお力を発揮頂きたく思っておりますが」


セブ執事は笑みを浮かべながら言った。


「もちろん、そのつもりです。ただ、もう少し修行を続けたいので、国王陛下にはそのようにご伝言願えますか?」


「かしこまりました。それでは私は観戦に戻らせていただきます」


セブ執事は側近と共に観客席に戻っていった。



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