第二十三話 報告
「おかえり!」
勇一が宿へ帰ると、先に戻っていたカーラが食堂で待っており、元気な声で迎えてくれた。
「どうだった?弟子入りは出来た?」
「ああ、なんとかね...ウィルの指導も師範代から受けることが出来たよ」
そう答えた勇一だったが、具現の師に全てを告白し、自分が地球から移住調査を目的にやってきた人間だと知られてしまったことが気がかりであった。
(具現の師が誰かに話したらきっと捕まって拘束されてしまうだろう...それにカーラにも知られてしまう...)
いずれカーラにも自分が異星人であることは知られてしまうはずだが、できれば自分の口から伝えたい。どんなタイミングで言うべきだろうか...
考え始めた勇一だったが、そんなことをわかるはずもないカーラは話を止めない。
「師範代って四天王って言われてるんでしょ?やっぱりすごかった?」
「う、うん?ああ、ルッテさんていう人だったよ。力を見せてくれたけど、すごいウィルだった。同じファイアでもあれほど違うとは想像もしていなかったよ。驚いたし、多分他にもまだ見せていないパワーを持ってそうだったな」
「やっぱりすごいんだ~。今日聞いたんだけど、具現の師と四天王は『ニールの守り神』って呼ばれてるらしいわよ」
「ニールの守り神?」
「うん、そう。彼らがいてくれるから他国や自治領主たちはこの国に簡単に手出しが出来ないんですって!」
(確かにあのレベルが何人もいたら、そこらの軍隊じゃ手も足も出ないよなぁ)
そんなふうに思いながら、勇一はカーラに質問を返した。
「そっちはどうだったの?新情報はあった?」
「あ、うん、少しだけあったわ。アルデンテ王国には直接関係ないかもしれないんだけど、ベラノッテ王国の国王が重い病気らしいのよ。それで『ベラノッテの賢者』が国政を代行するんじゃないかって噂があるらしいの」
(アルデンテの国王が言っていた『ベラノッテの賢者』か)
「『ベラノッテの賢者』は平和主義だそうだからもしそうなっても影響は大きくなさそうだけど、国王が崩御されるとなれば権力争いも起きるでしょうしね。一応、ママに報告しておくわ」
「他には何かあった?」
「ん~、これといってなかったわ。お昼に食べた海鮮丼が美味しかったくらい。へへへ」
勇一は苦笑した。そう言えば自分は昼飯を食べていない。急におなかがすいてきた。
「ごはん、食べに行こうか」
「そうね、昨日のお店が美味しかったからまた行かない?」
カーラはロイヤルハーバー滞在中は海鮮三昧ときめているようだ。
ふたりは再び、前日の店に向かった。
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勇一とカーラはとりとめのない話をしながら、次々と運ばれる海鮮料理に舌鼓を打っていた。
「あのさ」
勇一が改めって言う。
「なに?」
「明日から...その...道場に泊まって修行しても、いいかな?」
カーラがナイフとフォークを置く。
「道場に泊まり込みで修行するの?どのくらい?」
「まだわからないけど、その方が早く上達出来ると思うから...」
「そうなんだ...」
すこし悲しそうな顔を見せたカーラだったが、数秒間うつむくと顔を上げて笑顔を見せた。
「うん!その方がいいと思うわ!修行に打ち込めるしね!」
「ごめん...」
「何言ってるの、気にしないで。じゃあ私はもう少し調査したらアルテ村へ帰ろうかな」
勇一はカーラがひとりでアルテ村へ帰る道中の心配をしたが、カーラは「大丈夫よ子供じゃないんだから」と笑っている。
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だから心配しないで。それより...」
「ん?」
「修行が終わったら、また村へ来てね。それで私に修行の成果を見せて。」
「あ、ああ...うん、わかった。行くよ」
「絶対だからね?」
「うん、絶対行く」
そういうとカーラは安心したように笑顔を見せ、再びナイフとフォークを手に取った。




