第二十一話 告白
自分の力がウィルによるものではなくパワードスーツと重力シューズを用いていたことを明らかにした上に、何故だかわからないがこの星の人間ではないことまで看破されてしまった勇一は目の前が真っ暗になった。
これではまるでペテン師だ。ウィルの秘密を盗みに来た異星のスパイと思われても仕方がない。
ひょっとしたらこれから弟子たちに囲まれて一戦交えることになるのではないか...?もしそうなったら果たして勝てるか...?
一瞬の間にそこまで考えて身構えた勇一だったが、「具現の師」は動くこと無く言葉を続けた。
「君のウィルはこの星の人間とは異なる特殊な色をしておる。わかる人が見ればわかるじゃろう。ただし、そこまでの力を持つ者がこの世界にどれだけいるかのぉ」
「具現の師」の言葉には今の世界の現状をかすかに憂いている気持ちが滲んでいるように勇一には聞こえた。
「君が異星から来たとわかったのは、儂が昔、君と同じ色のオーラを持つ者を見たことがあったからじゃよ」
(僕と同じオーラの異星人が昔、「具現の師」のところに来ていた!?)
「具現の師」はまるで勇一の心を読んでいるかのように話を続ける。
「そうじゃ、確かチキュウと言っておった。君と同じような、スピードとパワーの道具を使っていたの。ファッファッファッ」
(!...)
「そ、それはいつ頃のことですか!?」焦りにも似た感情で勇一が尋ねる。
「そうじゃな、もうかれこれ20年以上前になろうかの」
(20年前に地球人が...間違いない、20年前にここを訪れたのは第一次調査隊としてこの星を訪れた2名のうちのひとりだ。生きてたのか...!)
勇一は立っていることが出来ず、思わずその場に座り込んでしまった。
第二次調査隊としてキノピー星にやってきた勇一の目的の一つは第一次調査隊の安否を確認することである。地球を出発する前に消息を絶った2名についての情報は頭に入っていた。
ひとりは生物学者の高瀬征矢、もうひとりは物理学者の下野隆で、ともに勇一より30歳近く歳上のはずである。
キノピー星到着直後に発信が途絶えていただけに、到着直後に何らかの事故でふたりとも命を落としたとばかり思っていたが、少なくとも1名は生存しておりこの道場を訪れていたのだ。
「その男はどうなったんですか!?」
「ふむ。彼は異星からやってきた者だと儂に打ち明けた後、かなり真面目に修行しておったよ。はじめは警戒したが誠実な男じゃったのでこのことは誰にも言っておらん。儂だけの秘密だったのじゃ」
「その人はいまどこに?」
「それは言えんよ。知られたくないと考えておるかもしれんしの。ファッファッファッ。ただ、この世界のどこかで今も生きているのは確かじゃ」
「...」
座り込んだまま放心状態の勇一。居場所を教えてもらえない以上、名前を聞いたところで無駄だろう。
「そうかぁ、生きてたんだぁ...」
生きているという第一次調査隊メンバーを探すという仕事が増えた形だが、それを厄介だと思う気持ちよりも地球からはるか離れたこの星に同胞がいるんだという安心感、心強さが勝った。
勇一はひとりで進めねばならないと考えていた移住権確立を、自分より遥かに長い期間この星について知ってきた先輩の力を借りて進められるかもしれないと思い、一筋の光が見えたような気がしていた。
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それから数分間、その場に座り込んだままだった勇一は、我に返ると自分の修行がどうなるのか気になり始めた。「具現の師」は勇一の心情を慮ってか、椅子に座ったまま静かに佇んでいる。
「あの...」
「うん?」
「それで、私はどうしたら良いでしょうか」
「どうしたいのかの?」
勇一は受け止めてくれることを祈りながら、「具現の師」に現在の気持ちを吐き出した。
「騙すような真似をして申し訳ありませんでした。おっしゃるとおり私は20年前にここを訪れた者と同じ地球という星からやってきました。我々の住む星は荒廃しているため移住先を探しており、この星を調査しています。ウィルについては人々と触れ合う中で知りましたが、私達地球人にとっては未知の力であり、学びたいと考えています。決してご迷惑をおかけすることはありませんので、ここでウィルについて学ばせて頂けないでしょうか」
黙って聞いていた「具現の師」だったが、沈黙を破るようにファッファッファッと笑うと、このように述べた。
「儂の仕事は優れたウィルの使い手を育てるだけじゃ。君も以前来た者もこの星の者とは違う色のオーラを持っておる。以前来た者は修行で凄まじい力を手に入れておった。おそらく類まれな能力を発揮出来るオーラなのじゃろう。頑張ってみるが良い」
勇一は「ありがとうございます!」と礼を言った。
「ただし、忘れるでない。ウィルとは戦闘に使うための能力ではないのじゃ。人の生活を豊かにし、人を助け支え合うために使うための能力じゃ。それを心に刻んでおきなさい」
「具現の師」はそう伝えると席を立ち自宅の奥へと姿を消していった。




