第十七話 挫折
その夜、勇一はカーラが手配した宿の部屋にひとり籠もっていた。
完敗であった。
あれほどの力の差があろうとは...。
これまで勇一は、この星と人々をどこか見下していた。
地球より数百年遅れた文明の星...無意識にそう思っていたのかもしれない。
レーザーガンを宇宙船に戻していたのもその証拠だ。
地球の科学力で制圧しようと思えば簡単に出来てしまう、しかしこの星の人々のことを考えればそれは避けるべきだ。そんなふうに考えていたのである。
だが、今日わかった。科学技術が生み出したパワードスーツも重力シューズも、この世界に君臨できる力を持っている人間には通用しないのだ。
もちろん、核兵器を用いれば制圧は出来てしまうのかもしれないが、それでは荒廃した地球の二の舞である。現実的ではなかった。
仮に地球から制圧部隊が最新の兵器を携えて訪れたとしても、銀狼や他の特級具現士、それに各王国が迎撃すれば、必ず勝利できるとは言えないだろう。地球から一度に数万、数十万という数の兵を送り込むだけの科学力はまだないのだから。
「考え直さなきゃ...でも、くやしいなぁ...」
勇一は調査員として、この星への移住をどのように実現させるのか改めて計画を練らねばならないと思うと同時に、完膚なきまでに自分をやりこめた銀狼に対抗するためにはどうしたらよいのか、という点で頭がいっぱいだった。
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
翌朝、カーラと一緒に朝食を取る勇一は無言だった。
「ユーイチ、今日はどこを回ろうか。やっぱり他国から来てる人に話を聞いてみるのがいいよね?」
「...」
「お土産屋さんとかがいいかな?それとも宮殿で国王陛下の側近の方に話を聞いてみるのがいいかな?」
「...」
反応がない勇一にため息をつくカーラ。
「もぅ!まだ昨日のことを気にしてるの?しょうがないじゃない!相手は銀狼よ!?この国の誰も歯が立つわけないんだから。勝とうと思ったら特級具現士か『色白の怪人』クラスじゃないと。考えるだけ無駄よ!元気出しなさい!」
「うん...わかってはいるんだけどさ。自分はウィルのこともよく知らないから、なんかモヤモヤするんだ。もっと強くなれるんじゃないのかって」
勇一の言葉に嘘はなかった。
地球からの移住について交渉するためには勇一自身がこの星で一定の存在感を見せることが不可欠であり、パワードスーツと重力シューズによる科学技術では太刀打ちできないことがわかった今、ウィルの力を知り鍛えることが最も近道だろうと考えていたからである。
「ウィルの修行かぁ...銀狼もそう言ってたもんね。ニール王国に具現の師がいらっしゃるけど、いきなり行っても弟子になるのは難しいかも」
「具現の師!?」
それまでうつむいていた勇一が顔を上げて反応する。
「具現の師はウィルの達人ですごい力をお持ちなの。後進の育成に力を入れていらっしゃって、世界中から優秀な人が押し寄せてるって話。」
(ウィルの達人か...その人に習えばウィルのことを知れるかな)
「その人のところにいけばウィルを教えてもらえるかな?」
「どうかなぁ...ユーイチくらい素質があれば弟子にしてもらえるかもね!でも、国王陛下に紹介状でも書いてもらったほうが確実じゃないかしら」
・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
朝食後、街へ情報収集に出るふたり。勇一は終始考え込んでいる様子である。カーラから聞いた「具現の師」を訪ねてみようかと思っているのだった。
勇一はふいに立ち止まってカーラに話しかけた。
「あのさ...具現の師を訪ねてみたいと思うんだけど」
「さっきの話?...いいと思うけど...国王陛下に紹介状を書いてもらう?」
「うん...できれば...アンリ王女に話してもらっても、いいかな?」
カーラは微笑みながら「いいわよ、任せといて」と言った。




