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Will~想いの力  作者: 流水凛
第ニ章 アルデンテ王都編
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第十六話 銀狼



カーラ達が王都学校時代によく訪れていたというカフェで3人がランチを食べていると、アンリ王女が勇一に礼を述べる。


「ユーイチ様、今日はありがとうございます。おかげでカーラと楽しい時間を過ごせていますわ」


カーラが同調する。


「ホントよねー。いつもはもっと物々しいもんね警護が」


「そうなんですか?」勇一が聞くとアンリ王女が答えてくれた。


「はい、いつもはザグル兵団長が10名ほどで警護して下さるのですが、店に入る前に兵が安全を確認したり、他のお客様に退店して頂いたりするので...」


「そうそう、私達が出かけるとみんなの迷惑なんだよね」


カーラが笑っている。


「ですから今日はとても自由に街を散策出来て、ユーイチ様に感謝しているんです」


勇一はただ後ろをついて歩いているだけだったので、予想外の感謝に戸惑った。


「いえ...」


(もう少ししっかり警護したほうがいいのかな...まぁいいか...)


「午後もよろしくおねがいしますね」


アンリ王女はそう言って席を立つ。飲食店では勇一が会計するようカーラから言いつけられており、お金を預かっていた。



勇一が会計していると、店を出たアンリ王女に声をかけている男がいるようだ。


「アンリ王女ではありませんか!」


男は30代の長身で、いかにも質の良さそうな白銀の鎧とマントを身に着けており、貴族らしい整った顔立ちに長い銀髪だった。10人ほど、同じように白銀の鎧に包まれた男たちを従えている。おそらく部下なのだろう。


「はっ...!ザナドゥ様!」アンリ王女がそう言って挨拶する。


アンリ王女に続いて店を出ようとしていたカーラが勇一の方を振り返り、小声でこう言った。


「ザナドゥ様...銀狼よ」


男は三大具現士のひとりとして知られるザナドゥだった。



(これが自治領を与えられているという3人のひとり、銀狼か)


勇一は前日にアンリ王女が言っていた、貿易のためにこの国を訪れているという話を思い出した。


(ワインの買い出しに来ているんだっけ...?)



アンリ王女に話しかける銀狼。


「奇遇ですな。そちらのカップルとお買い物ですかな?」


銀狼はカーラと勇一がアンリ王女の知人カップルだと思ったようだ。


「いえ、こちらは王都学校で同期だったカーラ、あちらは警護のユーイチ様です」


アンリ王女が勇一たちを銀狼に紹介する。


「彼が警護?」


銀狼は鎧も着ておらずまだ若い勇一が単独で王女の警護に当たっているのを不思議に思ったらしい。


「ずいぶんカジュアルな警護ですな」


「ええ、ユーイチ様は際立ったウィルをお使いになられるので、今日は警護をお願いしたんです」


「ほぅ、彼はそれほどの具現士なのですか。年格好からするとひょっとして『アルテの勇者』殿ではありませんか?」


銀狼は既に「アルテの勇者」の情報を掴んでいたのだ。アンリ王女が答える。


「よくご存知で。その通りです」


銀狼は品定めするような目で見ながら、今度は会計を終えて店を出てきた勇一に話しかける。


「昨日、ザグル兵団長とやりあって優勢だったそうじゃないか」


「いや...そんな...」


「謙遜しなくてもいい。君のウィルがスピードとパワーであることもわかっているよ」


(すごい情報収集力だ。これもアンリ王女とこの国の王家に自分の力を示しているということなんだろうか。国同士の政治の駆け引きという面もあるのだろうな)


勇一はそんなふうに考えた。



しかし、銀狼の話はそこで終わらなかった。


「まぁ、ザグル程度に手こずるようではものの数にも入らないがね」


そう言うと銀狼はニヤッと笑う。


ムッとしてにらみつける勇一。



勇一と銀狼の空気が変わったことを察知してアンリ王女が間に入った。


「ザナドゥ様は特別ですから...ザグルはあれでも優秀な兵団長ですわ」


「これは失敬。彼ほど生真面目な騎士はいないですからな。警護も彼に頼んだほうが良いでしょう。この若い『アルテの勇者』では王女が危険に晒されたら守り切ることなどとても出来やしない」


「そんなこと...!」勇一が目の色を変える。


「『アルテの勇者』よ、君の力には決定的な弱点があるのだよ。わかっていないようだね。やはりただの未熟者だったか」


ここでカーラが口を開いた。


「弱点...って、何ですか...」


「可愛らしいお嬢さん、気になるかね?」


そう言うと銀狼は部下になにか囁いた。10名ほどの部下のうち半分程度が広場の方へ走り去っていく。


「よかろう、教えてあげよう。ついてきたまえ。『アルテの勇者』に私とやり合う勇気があれば、の話だがね?」


そう言うと銀狼はマントをたなびかせながら広場に向かって歩き始めた。


勇一もこのまま黙っているわけにはいかない、と思いながら後に続く。


アンリ王女とカーラは顔を見合わせ、不安気な表情で勇一の後に続くのだった。



銀狼は宮殿前広場に入ると足を止めた。先に来ていた彼の部下たちが人々に広場から離れた場所へ移動するよう既に指示していたため、広場には銀狼と勇一ら一行だけとなっている。


「さてと」


銀狼が口を開く。


「では簡単なテストをしよう。私はこれから王女とそちらのお嬢さんに攻撃を加えるから、君はそれを防いでみたまえ」


アンリ王女が「そんな...!」というと、銀狼が続ける。


「ああ、実際に女性を傷つけたりすることはありませんからご安心を。あくまで彼のテストですから。」


銀狼は勇一から距離を取り、「いくぞ、『アルテの勇者』君!」と言うと右手の中指をクン!と上げた。


すると、地下から次々とアンデッドが湧き上がってきたのだ。


あっという間に奇怪な姿のアンデッドが大量に勇一と銀狼の間に出現する。広場を半分ほど埋め尽くすほどのその数はざっと500もいるであろうか。


広場の周囲では人々が悲鳴を上げており、勇一の近くではアンデッドが鳴らすカチャカチャという骨の音だけが響いている。



視界に入り切らないほどのアンデッドが突然現れたことに勇一は絶句していた。銀狼本人とやり合うつもりだったからだ。


(これが...特級具現士の力...この世界で3本の指に入るという...)


そういえばドーウィル伯は3人の特級具現士について、いずれも召喚能力を持っていると話していた。銀狼の力はアンデッドの召喚だったのだ。



あまりの数に立ち尽くす勇一。銀狼はアンデッドの群れの向こう側から「どうした『アルテの勇者』!君の力を見せてみろ!」と挑発している。


アンデッドの大群が勇一の方に一斉に歩み寄ってくる。


「くそっ!」


カーラとアンリ王女を背に、迫るアンデッドに対しパワーとスピードで応戦する勇一。一体一体がそれほど強くないアンデッドを次々に倒していく。


だが所詮多勢に無勢である。数百のアンデッドを倒し続けることなど到底無理な話だった。


全体の1/3も倒すことが出来ないまま広場の隅に追いやられる勇一とカーラ達。


「くっ...!!」


およそ1mほどの近くまでアンデッドの大群が迫った時、突然アンデッド達はその動きを止めた。


銀狼が合図したのだろう。


動きを止めたアンデッドはその場でバラバラと分解するように倒れると地中に姿を消していった。



何もなかったかのように元通りの宮殿前広場。


アンデッドがいなくなり、見通しの良くなった広場の向こうから銀狼が近づいてくる。


「わかったかね?」


「...」


「君の力では多数の敵を相手にすることなど出来ないのだよ。女性を連れて買い物にうつつを抜かす暇があるのなら修行でもすることだ」


勇一は何も言い返すことが出来なかった。



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