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Will~想いの力  作者: 流水凛
第ニ章 アルデンテ王都編
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第十話 王都



王都に到着した一行はそのまま宿に直行し解散となった。


翌朝。勇一は今日からカーラとの2人行動となる。


落ち合う約束をしていた食堂へ行くと、既にカーラはテーブルに佇んでいた。王都だからだろうか、アルテ村で見ていた赤いボーイッシュな服ではなく、白いワンピースを身に着けている。お世辞抜きでかなり可愛い。


勇一が少し照れながら「おはよう」と言って近づくと、気づいたカーラも笑みを浮かべて「ユーイチ、おはよう!」と返してくれた。


「よく眠れた?」


「ええ、さすが王都の宿よね!ベッドもふかふかで熟睡しちゃったわ!やっぱりいいなぁ街は」


4階建てでカーラの宿の数倍はあるであろう客室数や白く美しい壁に飾られている絵画、それに置かれている家具からも高級宿であることがわかる。ドーウィル伯が同宿を押さえてくれたのだった。


食堂にいる客層も明らかに上質そうな服を着ており、アルテ村でもらった服を着たままの勇一が貧相に見える。



勇一とカーラはハムや卵料理まで添えられた豪華な朝食を取りながら本日の予定を話し合った。


「ドーウィル伯夫妻は?」


「ご出発されたわ。もう領主会議が始まっている頃じゃないかしら」


「それよりユーイチ、ドーウィル伯様からのお給金、見た?」


昨夜到着後にふたりは謝礼として布袋に入った給金を受け取っていたのだ。勇一は部屋で中を確かめてみたが金色に光る通貨が50枚入っており、その価値がわからない。


「50ゴールドあったわ!臨時収入嬉しいわ~」


朝からすっかりご機嫌である。


「カーラは王女と面会するんだよね?」


「うん、さっき早起きして宮殿にアンリ王女との面会を頼んできたところなの。その返事が来るまではやることないし、買い物にでも行こうと思って。ユーイチは予定ないのよね?一緒に行こ!」


「そうだね、街はいろいろ見てみたいかな」


「案内してあげるわ!買いたいモノがあったら、言ってね!」


カーラはそう言うと朝食の残りを急いで食べ始めた。



・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



街を散策する勇一とカーラ。


アルテ村とは異なりさすが王都である。何より人の数が多い。


道を行き交う人は雑多で、多くの人はアルテ村の人々と同じような服装だが、中にはいかにも金持ちというか貴族のような装いも目立つ。


道はキレイに清掃されており、両側に商店が並ぶ道は石畳も整備されている。パリの街角のように屋外にテーブルを並べパラソルを立てているカフェも少なくない。そこでは多くの人が楽しそうに談笑している。アルデンテ王国が豊かで治安の良い国家である証左だろう。


カーラの話によると勇一たちがいるアルデンテ王国の王都はグリーンベルトという名前でおよそ20万人が住んでいるという。


農業と酪農、それに山岳資源で観光産業を興しているこの国にふさわしく、王都グリーンベルトからは4,000メートル級だという霊峰・シンパ山がそびえているのが見え、この山の丘陵の高低差を利用して上水道が完備されている。


山の向こうは海洋国家でアルデンテ王国の親戚国家に当たるニール王国である。



勇一はさながらデート気分でカーラと並んで歩いていた。


王都でのカーラは女の子らしく、服やアクセサリー、それにお菓子の店に興味を持ち、次々に入っていった。勇一はそれらの店で売られている商品の値段から、1ゴールドは日本円でおよそ1,000円程度の価値なんだろうと踏んだ。


つまり昨日はドーウィル伯に同行し1日で50,000円稼いだことになるのだ。その上、本日の宿泊まで2泊分のホテル代も負担してもらっている。朝、カーラが興奮気味に語っていたのも無理はないだろう。



「ユーイチ、こうやってるとデートみたいね!腕、組んじゃおっか?」


王都で気が大きくなっているのかカーラがそんなことを言い出した。


「バ、バカ、ロディさんに怒られちゃうよ」


カーラは笑っている。


「ロディが言ってること本気にしてるの?あの人は女の子を見るとすぐにああやって言うのよ。私はカッコイイ騎士様みたいな人のほうがいいなー」


(ロディさんに脈はなしかぁ。確かにカッコイイ騎士様とは言えないけれど)



・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



王都の街を午前中ブラブラした勇一達だったが、ランチの前にカーラが一度宿へ戻って宮殿からの返事が来ていないかどうか確認したいと言う。そこでふたりは一度宿へ戻った。


勇一が部屋でくつろいでいると、カーラが興奮気味にやってきた。


「返事、来てたわ!戻ってきてよかった!」


(こんなに早く返事が届くなんて王女はカーラの親友なんだろうな)


「それでね、早く会いたいから今日の午後でも明日でも構わないから宮殿へお越しくださいって書いてあるの!いつ行ったらいいかな?」


勇一はカーラが宮殿へ行ってくれれば、その間に王都の様子を調査できると考えて「今日行ってくれば?」と答えた。


「やっぱりそう思う?」


(背中を押して欲しかったのか。女の子だなぁ)


そんなふうに思いながら勇一は「うん」と答えた。カーラは準備のため自室に戻っていった。



30分後。準備を終えたカーラが再び勇一の部屋を訪れた。白いワンピースはそのままだが、髪をアップにしてネックレスをし、白い肘まである手袋をはめている。ちょっとしたレディのようだ。


「どう?おかしくない?」


「うん、きれいだよ」


笑顔になるカーラ。


「昼ごはんはどうするの?」と尋ねると、宮殿ではおそらく食べきれないほどのお菓子が供されるのでいらないと言う。


「じゃあ、僕は適当に済ませるね」と伝えるとカーラは不思議そうな顔をして


「あなたも行くのよ?」と答えた。


彼女の中では勇一も宮殿に同伴することになっているらしい。


なんでも、アンリ王女への手紙に勇一のことを「村を救ってくれた恩人を紹介する」と書いて送ったのだそうだ。


「いや、僕はこんな服だし...いいよ」


勇一はアルテ村でリールにもらった地味なグレーの上下のままだ。だが、カーラは国王に謁見するわけでもなし、男性の服など何でもいいのよと言って相手にしてくれない。結局、勇一はカーラにひきずられ宮殿へついていくことになった。


(ひとりで王都を調査したいんだがなぁ)



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