2話 出会い
第2話 出会い
その「地殻よりも深い場所」に着いたであろう俺は、ドンという強い衝撃によって目覚めた。どうやらテレポーターが上空に出現したらしい。無線にコールが入ったので、俺は通信機のチャンネルを開いた。
「こちらDB978JP6E。繰り返す、こちらDB978JP6E。侵入に成功。次の指示を待つ。オーバー。」
「こちらユーラシア連合国軍JP支部総司令官、ルイス・ジャクソンだ。そちらの信号強度は796、音声もちゃんと聞こえている。現在の位置、テレポーターの場所を教えてくれ。オーバー。」
「こちらDB978JP6E。辺り一体竹林だ。テレポーターは上空5mに位置している。
オーバー。」
「よし、バックパックのスラスターでテレポーターに接近。テレポート装置の本体重量は
そんなに重くは無いだから、バーニアで位置を調整しながら下ろせ。」
「壊れるのが嫌だからって、装置に反重力システムを取っつけたのが間違いでしたな?」
俺はそう冗談を言いながら、テレポーターに接近し、
C4爆薬を至る所に設置し、テレポーターを爆破した。
「おい!DB978JP6E!何をしている!テレポーターを破壊すれば、貴様も2度と
帰れなくなるんだ!」司令官から怒鳴り声が飛んでくる。
「いいか、俺はお前らの手先でも、ましてやモルモットでもないんだ。今から俺は独自の
行動を取る。貴様らの誰の指示も受けずにな!」それだけ言うと、俺はチャンネルを封鎖し、通信機、震電、その他の全ての武器・装備に搭載していたGPSを破壊した。
そう、この時、既に俺は真実を知ってしまっていた。
震電、そしてセットになっていた刀は「オリハルコン」と呼ばれる未知の素材で構成されている事。調査した後、その土地は資源採取に使われ、原住民が居た場合は労働力とされてしまう事。俺を調査に向かわせたのは、軍に対して最も脅威と成り得る者であり、かつ1番失っても問題にならない兵士である、とスーパーコンピューターが判断したからだという事。テレポーターは1個につき1回しかテレポートゲートを発生出来ない事。設計図は1枚しかなく、設計図があったとしても、かつ人間サイズでも製作に最低でも18年かかってしまい、戦車サイズともなると30年かかってしまう事。全てである。その機密文書が、何故通常文書庫にあったのかはわからない。だが、俺はこれについて「神がその存在を証明しようとしたのではないか」と思っている。もしくは神なんてのは最初から存在していなかったのかもしれない。まあ、どっちでも良かった。設計図は竹を切って作った囲炉裏の中で焼いた。そのため火事は起こらなかった。
とりあえずここから出ようとした時、人間がいる事に気付いた。
その人間にそっくりな者は、アジア系の様に見えた。肌は白かったが、少し自分と同じ色の肌であったのだ。おれは、少なくとも3代前までは黄色人種以外の人との混血ではない、
というのが医師の判断だった。つまり、その者は黄色人種に近いはずだ。
しかし、妙な点もあった。白い犬、もしくは狐のような(白い狐がいるのかは知らない。
俺にそんな事を聞くな)耳と尾が生えていた。
「貴方は誰ですか?」声からして女であろう。
「その前に。何故日本語が喋れる?お前は人間なのか?それとも他の動物なのか?、お前は一体誰なんだ?何故ここにいる?」俺はこう質問した。
女は以外にも素直に答えてくれた。
「日本語…それがこの言語だと、貴方は認識しているのですか…その 日本語 が喋れる理由は、物心ついた時から、みんながこの言葉を話していたからです。そんでもって私はれっきとした人間ですよ!他の生物みたいな言い方しないで下さい!…えー、気を取り直して。私は鷲匠 香奈子。見ての通り、女の子です。ここにいる理由は、ココの見回り当番が私になったからです。」かなり丁寧に接してくれた。次は彼女の
番だった。
「貴方は誰ですか?何故ここにいるのですか?もしくは、どこから来たのですか?見かけない顔ですが…」
…当たり前である。俺は一切の事情を話した。
「で…でぃーb…痛った!舌噛んだ!っあー…で、その軍隊から逃げてきたけど、最短で18年もすれば追って来て、我々も奴隷となってしまう…と」
「ああ」
「成る程…真偽は定かではないですが、別の世界からやって来た者は一応役場に引き渡す事になっているので、来て下さい!全く…こんな事、今まで生きてきた200年の中で一度も無かったですよ…」
「は? この世界 での人間の平均寿命って、大体いくらなんだ?」
「大体1000年程ですかね。だから私は、結構若い方なんですよ?さあ、行きますよ!」
こりゃ、俺は早死にの部類に入る事間違い無しだな…
抵抗したり、逃げ出す理由も無かったので、一旦、鷲匠に連れられ、役場に向かった。
「…で、名前と 地球 とやらに住んでいた事も記録出来ました。他に何か?」
職員らしき男が俺に質問してくる。例に漏れず、彼もハトのような翼が生えている。
「ン…まあ、俺はお前らみたいに翼とかは生えていない。後…5歳の時に、山で野犬に襲われて、付け根から金玉と玉袋噛み千切られた」
男は吹き出した。まあ、普通はそんな反応もするだろう。
俺にとって、玉をやられたのは僥倖であった。何せ、男は皆、最初は持たなければならない弱点、ある意味最も「業」を背負った物体を俺は持っていなくて済むのだから。
「んでもって、チ○コがめっちゃ小さい」
その言葉でトドメを刺されたらしく、男は笑い転げていた。しばらくしてから、
「はい、登録できました。じゃあ、明日に住民として受け入れる為の儀式を行いますので、
ココに書いてある場所まで来て下さい。」男はそう言って、メモを渡してきた。帰る時も笑っていた気がする。
その日はメモに書いてあった場所を探し、その豪勢な建物の付近で野宿をした。
一体、儀式とは何なのだろうか?