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アナザー・フロンティア・オンライン ~生産系スキルを極めたらチートなNPCを雇えるようになりました~  作者: ぺんぎん
第三章

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折れた魔剣

 

 魔王ルナリアが来た翌日、ハヤトは自室で折れた魔剣を眺めていた。


 魔剣の名前はアロンダイト。魔国を象徴すると言ってもいい剣で、勇者が持っているエクスカリバーと対になっているという剣だ。


 エシャがルナリアから聞いた話では、ルナリアがアロンダイトの耐久力の確認を怠って折ってしまったとのことだった。これが折れたとなると魔国が大変なことになるらしい。


 バレたら皆に怒られる。バレる前に直したい。でも、魔国で直したらバレる。なら人間の国だ。でも、人間の国にいる知り合いなんていない。そうだ、エシャちゃんなら知ってる。力を貸してもらおう。


 そんな理由でここまでやって来たとのことだった。


(そもそもエシャが店で働いていることは知らず、この店で直せるということを聞いたときはかなり喜んだとか。渡りに船ということなんだろうな。でも、皆に怒られたくないって理由がなぁ。魔王って偉いんじゃないの?)


 ルナリアは魔国でかなり慕われているが、本人の性格などが災いしてかなり自信のない魔王になっているというのがエシャからの情報だ。


 なんでそんな情報を知っているのかと聞いたら、魔国にはエシャの知り合いがいるらしく、そこからの情報とのことだった。その知り合いとは前のクランメンバーらしい。


 それはそれで気になったが、今はそれを聞いている暇がない。今はこの剣を手早く修理することが重要なのだ。


 折れているとはいえ魔国を象徴する剣。それを持っていることがばれたらどんなことになるか。はっきりとは分からないが、どう考えても楽しい状況にはならない。


(直すときに持って来てくれればよかったのに、アロンダイトの製造方法と一緒に置いていくなんて……)


 信用しているのか、それとも何も考えていないのか分からないが、ルナリアは折れたアロンダイトをエシャに預けて魔国へ帰った。


 自分もその場にいればよかったと後悔したが、すでに手遅れなのでできるだけ早く返すことを考えている。


 クラン戦争の準備もあるのに余計な仕事を引き受けてしまったが、悩んでいても仕方がないとさっそく直すのに必要なアイテムの確認を始めることにした。


 アロンダイトの製造にはそれなりのアイテムが必要になる。


 まずは、折れたアロンダイト、そして大量のアダマンタイト。ほかに、深淵のダイヤ、鮮血のルビー、深海のサファイア、樹海のエメラルドという宝石類が必要になる。


 宝石類に関してはすでに持っている。これらの宝石を使って作る指輪や腕輪などの装備品は結構な効果を持つために、常に用意しているのだ。中にはスキルを上げるという効果を持つ物がある。ハヤトはいくつかそういう装備も持っていた。


(問題はアダマンタイトだな。大量に使い過ぎるからオークションで買ったら相当な額になるだろう。買えなくはないけど、クラン共有のお金が減り過ぎると現実の賞金まで減ってしまうからできるだけ使いたくない)


 クラン共有のゲーム内通貨は、クラン戦争で勝ったときの現実の賞金に影響する。ゲーム内通貨を減らすのは、賞金を減らすということに直結するため、ハヤトは極力減らしたくないのだ。


 そこから導かれる答えは、自分で採掘する、だ。


 ハヤトはアッシュ達に連絡して、アダマンタイトが掘れる鉱山へ付いてきて欲しいと連絡するのだった。




 拠点にやってきたアッシュ達に事情を説明した。


 魔王のために剣を直してあげないといけないという話を受け入れてもらえるかどうかは分からないが、黙っているわけにもいかないので、事情を全部話したのだ。


 なにか文句を言われるかと思ったらそんなことはなかった。


「今の魔王か。平和主義と聞いているから別にいいんじゃないか?」


「すっごい美人だって聞いたことがあります! 私も会いたかった! どんな人形が好きですかね!?」


「はぁ、魔王っていたんですね。そんなことよりもジークフリート達がいい感じなんですよ! 来年には赤ちゃんが生まれるかも!」


「ハヤト君は面白いね。偶然とはいえ、魔王まで呼び寄せたのか。いや、これはエシャ君のほうが面白いのかな?」


 ハヤトは、今までの悩みは何だったんだというくらい拍子抜けした。


 アッシュ達はなんとなくわかる。そもそもドラゴンなのだ。勇者とか魔王とかそもそも関係ないのかもしれない。マリスも動物大好きっ子なので他のことには興味がないのだろう。


 ただ、シスターであるディーテまでどうでもいい感じに言ったのは驚いた。魔王と神が敵対している感じではあるし、教会は勇者を祝福している。どちらかと言えば敵対関係だ。


 具体的なことは知らないが、魔王は世界の支配を目論んでいたり、人間を滅ぼしたりするんじゃないかと思っていたからこそ、可能な限り内密に進めようとしたのだ。


 それを伝えると、ディーテは少し笑った。


「なるほど。だが、そんなことは関係ないよ。魔王や勇者という旗印を使って何かを目論む人は多いだろうが、当の本人達は特に何も思っていないはずだ」


「そういうものなの?」


「そういうものだね。そもそもハヤト君は神を勘違いしている。神はすべてを管理しているだけだ。魔王側でも勇者側でもない。むしろどちらも管理していると言ったほうがいいね。どちらかと敵対するようなことはないよ。イメージ的に勇者側のように思われているが、あれは教会に所属している人間が勝手にやっているだけだね」


 教会が勇者を祝福している理由は、勝手にやっているだけ。その情報をなぜディーテが持っているのかは分からないが、勇者は教会にいいように使われているのだろうと理解した。


 そんなんでいいのか、とは思うが、そもそもゲームの設定上、そういうものなのだろうと勝手に納得した。


 だが、そうなってくると話が違ってくる。


 魔王をクランに入れてもいいんじゃないか、という話だ。教会に所属するNPCからは嫌われる可能性はあるが、それ以上の効果がありそうなのだ。


 どれほど強いのかは知らないが、間違いなく強いだろう。クランへ入れることができたなら相当な戦力アップとなる。


「皆に聞きたいんだけど、もし魔王をクランに入れるって言ったらどうする?」


 ハヤトの質問に全員が、別にいいんじゃない、という回答をした。


(俺が今まで悩んできた意味がないな……念のためにレリックさんやミストさんにも聞いてみるか。特にミストさんは元クラン管理委員会のメンバーだ。良い悪いの判断ができるはず。まあ、魔王が実際に仲間になってくれるかどうかは分からないけど、できることならお願いしたい。幸い、クランの枠はあと一つあるし)


 クランの枠は十。現在は、ハヤト、エシャ、アッシュ、レン、レリック、ミスト、マリス、ランスロット、ディーテの九枠だ。


 いままでは空いていた枠にアッシュの傭兵団員を入れていたが、もし魔王のルナリアが入ることになればちょうど十枠になる。ハヤトが知る限り、最強のクランと言えるだろう。


 アロンダイトを直す条件に関しては特に決めていない。それなりのお金を貰うことにはなっているが、さらに追加で何かを貰うことになっている。それはエシャが交渉というか、勝手に結んだ条件とも言えるのだが、ルナリアはそれを了承しているとのことだった。


 ハヤトはそれに期待しながら、皆とアダマンタイトが採掘できる場所へと移動するのだった。




 ハヤト達が来たのは「ロダ鉱山」と呼ばれる場所だ。


 この鉱山の奥深くにアダマンタイトが掘れる場所がある。もちろん絶対に掘れるという訳ではなく、鉱石知識というスキルに影響される。ハヤトはこの鉱石知識スキルが100だ。細工スキルの補助スキルとなっているので上げないわけがなかった。


「ええとそれじゃ悪いんだけど、護衛をお願いするよ。あと、今回は皆にも採掘してもらうからよろしくね」


「ハヤト、採掘に関しては鉱石知識が必要だろう? 俺はそのスキルを持っていないからアダマンタイトは採掘できないぞ? できてもアイアンくらいだ」


「まあ、そこは奥の手があるんだ。これを見てもらえるかな?」


 ハヤトは腕輪をアッシュ達に見せた。鉱石知識スキルを20上げる腕輪だ。


 20上げるとは言っても、素のスキル値と合計で50までしか上がらない代物で、鉱石知識スキルが80のキャラが身に着けても100になるわけではない。スキルが30以下ならかなりの恩恵がある装備だが、今は利用するプレイヤーは少ないだろう。今回のようにスキルが0の人用だ。


「これがあればアダマンタイトが掘れるからよろしくね。ちゃんと人数分あるから安心して」


「良く人数分集められたな……もしかして黒龍の頃にも似たようなことをしていたのか?」


「そうなんだよね。ここの奥にはモンスターが湧かないから、皆がこれを着けて皆で掘ったんだよ。確率は低いけど、それなりの量になるからね」


 全員から少々呆れた顔をされたが、効率を考えたら悪くない方法だとハヤトは自負している。それに今回かなりの量が必要なのだ。できれば一回だけで指定量を集めて帰りたい。


「それじゃ行こうか。いつも護衛をさせて申し訳ないんだけど、帰ったらなにか美味しい物を作るからよろしくたのむよ」


 レンとマリスがハイタッチしてからずんずんと奥へ進んでいった。


 ハヤト達も遅れないように先へ進むのだった。


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