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アナザー・フロンティア・オンライン ~生産系スキルを極めたらチートなNPCを雇えるようになりました~  作者: ぺんぎん
第十九章

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スピード勝負

 

 やる気満々のルティと呆れているウィルネ。そしてまたもや面倒ごとに巻き込まれてしまったパルフェだが、多少は慣れたのか色々なことに覚悟を決めた。そもそもディーテからもお願いを聞いてほしいと言われているので、やらないという選択肢はない。ただ少し、ほんの少しだけ、面倒だなぁと思っているだけだ。


「いやぁ、嬉しいよ、パルフェさんもやる気になってくれているなんてね!」


「やる気っていうか、やらなきゃどうしようもないって言うか……」


「すまないね。こんな無茶な要求を出せるチャンスなんてそうない。そもそも、財団の人間はパルフェさんやその家族に接触することすら禁じられている。今回はまさに千載一遇のチャンスだったんだよ!」


 パルフェもそれは知っている。両親と仲の良い財団の人たちならともかく、他の財団はよほどのことが無ければコロニー「フロンティア」に近づくことすら許されない。それはセキュリティ的な話で、AFOの技術を奪われないためとも言われているが、パルフェとしてはそこまでする必要があるのかと疑問に思っている。


(だからと言って文句はないけどね。そもそも財団の人と関わる理由も特にないし。まあ、ウィルネちゃんとは仲良くなれて嬉しいけど……もうちょっとウィルネラインを下げてくれないかな、友達の誼で。いや、むしろ友達だからこんな状況に……?)


 そんなパルフェの儚い願いは通じないのか、ウィルネはまだルティの方を見て呆れた顔をしたままだ。


「さて、パルフェさん、君のことは知っているよ。アズマ流剣術の継承者であるベニツルさんの弟子であり、姉弟子であるシモンさんに指南されているらしいね。それだけでもたいしたものだが、AFOにログインしたその日にランカーになるほどの実力者だ。いやぁ、あの動画は穴が開くほど見たよ」


「はぁ、恐縮です……」


「しかもウィルネとも戦ったそうだね。本人から聞いた話では圧倒的な強さだったとか」


「手も足も出なかった、とだけ言っておきます」


「そんな感じではなかったと思うけど――」


「いやいや、ウィルネがそう言うだけでも素晴らしい。パルフェさんは誇るべきだと思うよ。ウィルネもそうだが、私達はもっと子供のころから様々な教育を受けている。もちろん戦闘もだ。私達は誰もが同年代に負けるなんて思ってない。そんなこともあって、人生がとてもつまらなく感じる。何もかもが思い通り、苦労や挫折など存在しない、神になったような気さえする――だが、そこでパルフェさんだよ! いや、パルフェさん達の家族や友達もだね!」


 あまりにもテンションが高いルティにパルフェの方はドン引き。思わず刀の鞘を掴むほどだ。


「私はね、未知が好きなんだ。誰も到達したことが無い場所、そんな場所へ初めて足を踏み入れた時の感動は何物にも代えがたい。そして今の未知はパルフェさんだ。ぜひともその力、私に見せてくれ!」


 ルティはそういうと拠点の外へと向かって歩き出した。


 パルフェとしては財団の人ってなにか変なところがあるなぁという程度の認識しかない。生まれも育ちも考え方も違うから仕方ないとは思うが、似たような境遇のウィルネもルティに関してはあまりいい感情がなさそうなのが面白い。


 そんなウィルネは申し訳なさそうにパルフェに視線を向けた。


「すみません。私が言えた立場ではないのですが、財団の人間は基本わがままでして」


「ああ、うん、ウィルネちゃんのせいじゃないから。それに戦うだけでしょ。面倒だなぁとは思うけど、そこまで嫌ってわけでもないから」


「……本当に申し訳ないです。その不満は刀に乗せてルティにぶつけて構いませんので」


 本気としか思えない冷徹な目にパルフェの方が怯えるが、もしかすると今回のことはウィルネも振り回されているのかと推測する。そもそもディーテがお願いしてくるほどのこと。さらには両親ともAFO内で会っていることを考えたら、重要な案件で動いている可能性も高い。


(まあ、そこまで無茶ぶりな話でもないし、どれくらい強いのかを知ってみたい気もする。カザトキちゃんとかかなり強かったし、ルティさんも結構な自信があるのかな?)


 自分の強さがおかしいと思っていた時期もあったが、最近は吹っ切れているのでどれくらい強いのかを試したいというのがパルフェの本心。そんな風に前向きに考えて拠点の外へ出た。


 ルティは笑顔で待っているが、ただ立っているだけではなく、両手にある銃をくるくると回している。いわゆるガンスピンで、かなり慣れているのか、縦に回すだけでなく、横に回したり、手から離してお手玉のようにも扱っていた。


 そしてパルフェを確認すると、素早い手つきで銃を腰のホルスターへ入れる。


「私はパルフェさんの戦闘は良く知っているが、こっちの戦い方は知らないだろう。なのでちょっとしたパフォーマンスをさせてもらうよ」


「パフォーマンス?」


 ルティは微笑むと、アイテムバッグから木の板を取り出して、それを宙に投げた。


 直後に連続する銃の発射音、正確な回数をパルフェは聞き取れなかったが、ほぼ全弾撃ち尽くした感じになり、木の板は木っ端みじんになった。さらに銃はすでにホルスターに入っており、いつの間に抜いて、戻したのかまったく見えなかった。木の板に目が言っていたと言う理由もあるが、それは一瞬。その間に撃ち、さらには戻している早業にパルフェは感心する。


「パルフェさんは刀を素早く抜く居合という技らしいね。私の方は素早く銃を抜く、クイックドローという技だ。なんとなく似ているだろう?」


 その辺りは役者のパットからも良く聞いており、パルフェも知っている。そしてその神業も見たことがある。もっと子供の頃だったとはいえ、パルフェの動体視力を持ってしても、銃を抜いたことが分からないほどの速さだったことだけは覚えている。


「銃と刀の勝負、距離にもよるが正直なところ銃の方が有利だとは思っているよ。なので至近距離でどちらが先に相手に攻撃を当てられるかという勝負を考えているんだ」


 ルティの説明によれば、刀が届く位置にお互いが立ち、ウィルネが投げたコインが地面に着いた瞬間にお互いが攻撃する。先に攻撃が当てた方が勝ちという勝負。PvPのルール設定でそう言った変則ルールを設定できるとのことだ。


「銃と銃の勝負ならそんな変則的な勝負でなくてもいいんだけど、昨日はエシャさんに普通に撃たれたからね!」


 なぜか嬉しそうにそう言うルティ。


 NPC扱いだったエシャは現在もAFOスタッフのような扱いであり、常にPvPができる状態だとパルフェはディーテに聞いたことがある。それを考えれば、ルティはハヤトに銃を向けたところで攻撃はできないのだが、そんな状態でもエシャは普通にルティを撃った。その思い切りの良さを学ぶべきかどうか微妙なところだとパルフェは悩む。


 それはそれとしてルールは把握した。さすがにベニツルやシモンが言うように相手の視線と呼吸、そして銃口の向きから弾を躱すというのは無理なので、このルールなら勝負になるとちょっと安心したパルフェだ。


「分かりました。では、そういうルールでやりましょう」


 勝負をするだけで勝つ必要はないのだが、手を抜けば問題があるかもしれないと、パルフェは気合を入れる。それにルティの方も自分との戦いを楽しみにしていたようなので、その期待には応えたいという気持ちがある。


 パルフェとルティは一メートルの距離に向き合って立つ。そしてコインを投げるウィルネが近くまで寄ってきた。


「それでは特殊ルールの設定をしてPvPの申請を」


 ルティ側がそれを設定するようで、パルフェにPvPの申請をしてきた。そしてルールを確認してから承諾する。一撃当てるだけの戦いなので、戦闘方式はリアル、一度攻撃されただけで倒させるようにHPも1。そして戦闘可能な領域も直径二メートルほどのドーム型の領域での戦闘になる。躱すなどの選択肢はなく、どちらが先に攻撃を当てられるかのスピード勝負だ。


「では、ウィルネ、戦闘開始はコインが地面に落ちた時に設定したから、やってくれないか」


「分かりました。音が分かりやすいように、土の上ではなく石の上に落とします。では行きますよ」


 とくに躊躇することもなく、ウィルネはコインを宙に投げた。


 すぐにパルフェは目を閉じて音に集中する。目でコインが落ちるのを見ていては反応が遅くなる。そう思っての行為だ。相手との距離、そして位置は把握済み、あとは相手よりも早く刀を抜いて斬りつける。ただ、それだけを考えた。


 その行為にルティは驚いたのか、少しだけ息を飲むような動きがあったが、パルフェはそれに気づいていないほど集中していた。


 そしてコインが落ちた時の「チリン」という音、感覚的に、その「チ」の音が終わる前にパルフェは刀を振りぬき、さらには鞘に戻した。


 手ごたえはあったが、どうなったのか状況が分からないパルフェは目を開けると、驚いた表情のルティが右手に銃を触っている状況だった。そしてその表情のまま、ルティは倒れる。その後、PvPのドームが割れるように壊れた。


「パルフェさんの勝ちですね」


 とくに驚くこともなく、ウィルネはそう言ってパルフェの右手を上げる。


「えっと、どうなったのかな? 目を瞑ってたから分からなかったんだけど……?」


「ルティが銃を抜く前にパルフェさんが斬りましたね。これは早さもありますが、反射速度の勝ちでしょう。コインが石に当たった音と抜刀時の音がほぼ同時でしたので、それが勝敗を分けたと思います」


「同時? フライングじゃないよね?」


「はい。大丈夫です。そもそも試合開始前に抜刀していたら攻撃が当たっても倒せないルールですから」


 なんとか勝てた、そう思った瞬間に倒れていたルティが笑顔で起き上がり、パルフェの手をを包み込むように両手で握る。


「素晴らしいよ、パルフェさん!」


「あ、ありがとうございます」


「いや、驚いた! 私が銃を抜くことすらできないなんて! 驚き具合は昨日のエシャさんと同レベルだよ!」


「は、はぁ」


 それは喜んでいいのか微妙なところではある。とはいえ、家族大好きなパルフェとしてはちょっとだけ嬉しい。


「しかし、ウィルネ! ずるくないか!? こんな子を独占するなんて!」


「独占なんてしてませんが、こうなることが分かっていたので紹介したくなかったんです。じゃあ、もういいですよね、帰ってください」


「ああ、もう、こんな子がいるって知ってたら財団の力を使ってでも仲良くなっておくべきだったよ!」


「それはジェミニと戦争すると言う話ですか? 当然リーブラとパイシーズ、それにレオも絡んできますよ?」


「それも辞さないくらいの感動だよ!」


 なにかものすごい不穏なことを言っていることだけはパルフェにも分かる。このままログアウトしたいところだが、そういうわけにもいかないだろうと苦笑い中だ。


「パルフェさん、どうかな? 将来、アリーズに所属して宇宙の未開領域にいってみないか!?」


「ちょっとルティ! パルフェさんはジェミニで働くって決まってるんです!」


「いや、私は猫カフェをやりたいんだけど……」


 その後、パルフェをどちらの財団に所属させるかの議論となり、猫カフェどころか、猫コロニー作ってあげるなどの話が出てくるほどの取り合いになったという。


今年の投稿は今回が最後となります。次回更新は1/11(日)です。

二週間ほどお休みをいただきますが、引き続きよろしくお願いします。


今年もありがとうございました。良いお年をお迎えください。そして来年もよろしくお願いいたします!

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