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アナザー・フロンティア・オンライン ~生産系スキルを極めたらチートなNPCを雇えるようになりました~  作者: ぺんぎん
第十二章

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賢者の石

 

 ヒュプノスの意味深な言葉を聞いた日から三日後、ハヤトはいつものように拠点の自室でスキル上げをしていた。


 ヒュプノスが気になるとは言っても何もできないのが現状だ。あの時の会話をディーテに伝えたが、ディーテ自身もなんのことがよく分かっておらず、首を傾げるだけであった。


「そもそもハヤト君や皆は私にとって掛け替えのない人間になっているよ」


 ディーテは笑顔でハヤトにそう言った。


 面と向かって言われると照れ臭い。仮想現実ではあるがハヤトはそれが顔に出てしまい、ディーテにからかわれた。さらにはその場に居たエシャにもからかわれるという状況になり、居心地が悪い日が続いている。


 そんな状況ではあるが、気を取り直して今日もいつも通り製薬のスキル上げを実施していた。


 そしてエリクサーの作製が五十を過ぎたころ、それが起こった。


「来た……!」


 エリクサーの最高品質が出来たと同時にハヤトの製薬スキルが200になった。


 何か起きるのか、それとも何も起きないのか。


 100になったときは別に何も起きなかったが今回はどうだろうと緊張しながら待っていると、ハヤトの頭の中にワールドアナウンスで使われている声が聞こえた。


「製薬スキルが200になったことで新たな製薬レシピが開放されました」


「おお!」


 ハヤトは何が作れるようになったのか調べようとしたが、アナウンスは終わっておらず、さらに続きがあった。


「スキル200の特典として作製された薬品のクールタイムが半分になります」


「お……?」


「作製された薬品の効果が25%アップします」


「おお……?」


「異なる二つの薬品を調合できるようになりました。詳しくはヘルプメニューをご確認ください」


「調合……?」


 ボーナス的なことがあるのではと思っていたが、予想以上の内容にハヤトは状況を忘れて喜んだ。効果アップだけでも十分だが、調合という新たなシステムも追加されたのだ。


(いや、落ち着け。色々やりたいけど、まずは新しい製薬レシピだ)


 ハヤトは一度深呼吸をしてから、製薬メニューを開きレシピを一つ一つ確認する。


 たしかに作れる薬品が増えているが、中でも目を引く物がいくつかある。


 MP即時回復のソーマ、あらゆる状態効果を中和するアムリタなどがそれだ。他にも攻撃力が倍になるが防御力が0なるなど、メリットとデメリットが共存するタイプの薬が追加されている。


 どれもこれも、これまでの環境を変えそうなものだが、ハヤトが最も注目したレシピがある。


 その名も、賢者の石。


 色々な創作物で定番ともいえる錬金術の最高峰アイテム。鉛を金に換えるとか不老不死になるとか色々言われているアイテムだが、この仮想現実のアイテム説明にはこうある。


「レプリカ系装備作製時に利用することで真の性能を引き出せるようになる」


 ハヤトは両手を上げてガッツポーズをした。


 一部のNPCだけが使っているチート級の装備。性能が落ちるレプリカ系の装備ならハヤトも作れるが、本物は作れなかった。賢者の石を使うことで本物が作れるようになればかなりの戦力アップになる。


 ただ、問題もある。


 本物の装備は使用者登録されるため、使いまわしができず、最初に装備したプレイヤー以外は使えないとのこと。


 そしてもう一つは、賢者の石の材料が激レアを通り越して初めて見るものが多いということ。さらには作製の確率が10%しかない。作製さえできれば最高品質が保証されているようだが、そもそも出来る確率が低い。


(レアではあるけど知ってる物や持っている物もある。ヒヒイロカネとか。でも、ザラタンの核、タロスの歯車、フェニックスの血……この三つはよく分からないな。というか、ザラタンってあのザラタンか? 倒せたって聞いたことないぞ……?)


 巨大な島の如き亀、海獣ザラタン。ゲームの初期から実装されているのはハヤトも知っているが、撃破報告は一度も聞いたことがない海にいるモンスターだ。


 タロスはハヤトの知識だと巨大な青銅の人形というイメージがある。ただ、そんなモンスターがいることは知らない。


 そしてフェニックスはいることを知っているが生息場所を知らない。


 賢者の石を作れる確率は低く、作るならかなりの量が必要になる。さらにはイベントがいつ始まるのか分かっていない。そこまで時間はないだろう。


 イベント開始までに本物を作れたとしても一つか二つ。


 それに賭けるくらいならもっと別のことで戦力を上げた方が勝てる可能性が高くなるだろう。


 ハヤトはあとで皆と相談しようと思いつつ、もう一つ開放された調合のシステムを調べることにした。


 新たに追加されたヘルプ情報を最初から読む。


 これはこれで面白い。ハヤトの感想はそれだった。


 作製した薬品二つを組み合わせて、二種類の効果がある薬を新たに作るという仕組みだ。


 それだけなら単に二つ飲めばいいという話になるが、このシステムが有益な部分は調合した薬品は元の薬品とは別の扱いになるということ。上手く使えばクールタイムを無視したり、効果を重複させたりすることも可能になる。


 ただ、品質と効果時間が同じでなくては調合できない、という制限がある。また、異なる薬品という指定があり、同じ薬品で倍の性能の薬ができるなんてこともない。


(即時発動のポーションと、五分の効果時間があるパワードリンクは調合できないんだな。でも、組み合わせを考えて調合できれば、何倍ものダメージが出せるようになるはずだ。おそらく上限はあるだろうけど、夢が広がるな……!)


 パワードリンクは五分間、攻撃力を25%アップさせる。二回飲んでも50%にはならないが、調合で別の薬品となれば重複が可能だ。セシルに飲ませれば、スタンピードの炎龍退治でやったようにあり得ない倍率の一撃を繰り出せるだろう。


 そしてハヤトはふと思う。


 製薬スキルが200で色々なシステムが開放されたということは他の生産系スキルでも同じことが起きるのではないか、ということだ。


 ハヤトが上限を突破したスキルは料理、鍛冶、裁縫、製薬、細工。


 これはやるしかないと、ハヤトは次に鍛冶スキルを上げるため、エクスカリバー・レプリカを大量生産することにした。




「ご飯まだ?」


「え? あ!」


 部屋の外からルナリアの声が聞こえてきたと思ったら、いつの間にかかなりの時間が経っていた。


 朝食はいつもハヤトが用意しているのだが、今日は製薬スキルが200になったことで興奮し、鍛冶のスキル上げもやっていたら、時間を忘れてのめり込んでしまった。


 ハヤトは慌てて部屋の扉を開けて外に出る。


「ごめんごめん、すぐ作るから。何がいい?」


「なら魔王ホットケーキで。ハチミツをこれでもかってかけて」


「ホットケーキね。えっと、今日はロザリエさん達もいるのかな?」


「うん。ゼノビアちゃんも一緒に食堂にいるから急いで。ギルちゃん達はすでに狩場へ行っちゃったけど」


「それは悪いことしたな。あとで謝っておこう」


「たぶん大丈夫。装備のメンテナンスがいつも完璧だからそれだけでかなり感謝してるから」


 まだ完全ではないが、ハヤトの拠点とルナリアの拠点は一緒の拠点となって広くなった。


 また、同盟というシステムが解禁され、クラン用の倉庫と同じようにアイテムの共有化が図れる。ハヤトは魔王軍の装備を一括でメンテナンスしており、毎日の日課のようなものだった。


 以前はいちいち手渡ししていた装備も倉庫に入れておくだけでハヤトが武具のメンテナンスをするようになって効率が上がった。それにポーション類なども倉庫に入れておくだけで持ち出しが自由なのでこれも楽になっている。


 ハヤトの生産に対する異常性は誰もが良く知っているが、味方であるとここまで頼りになる者はいない。


 朝、倉庫へ行くといつの間にか完璧に直っている武具があり、当日では使いきれないほどの大量の薬品や料理、依頼していたアイテムなどが揃っている。それだけで全員が感謝していた。


 とはいえ、これは持ちつ持たれつの関係でもある。


「俺も感謝してるよ。レアなアイテムを惜しみもなく素材として使えるのはルナリアさん達のおかげだしね」


 ハヤトはなんでも作れるが、それには素材が必要になる。その素材をルナリア達は倉庫に入れておいてくれるのだ。それを使ってアイテムを作り、店やオークションで販売する。そのおかげでメンテナンスや薬品の作製、スキル上げを行えている。


 ハヤトがほぼ無制限に薬品などを作れるのはそのおかげだ。


「分かった。ならホットケーキを三段重ねにしてくれていい。あと生クリームものせて」


「朝からよく食べるね。でも、今日は俺もちょっとお祝いしたい感じだから張り切ろうかな」


 そう言ってからハヤトはルナリアと共に食堂へと移動した。


 食堂ではいつもの通りというか、それぞれデザインが違う黒いゴスロリ服を着て待っていた。そしてなぜか肩身が狭そうにゼノビアもルナリアの隣の席で待っている。


(いつ見ても魔女の集いというかサバトと言うか……ゼノビアさんも圧倒されてるみたいだ)


 危なげな儀式が始まるのではないかと思えるほどだが、ハヤトはいつもの通り朝食の注文を聞く。


 とはいえ、ルナリアと同じメニューだ。ホットケーキ三枚ということで一部のメンバーはちょっと暗い顔をしたが。


 ゼノビアだけは普通にパンとサラダだけでいいということで、ハヤトはさっそく料理を作り始める。


 すぐに用意してメンバーの目の前にホットケーキを置いていく。さらには飲み物も用意した。普通なら面倒な行為でもハヤトはもてなしが好きという事もあって苦も無く準備をしている。


 ルナリア達はそれが当然というわけではないが、テーブルについて静かにしており、ハヤトの給仕に「ありがとう」とお礼を言う。以前、執事の恰好をしてくれと言われて、それは却下したが。


 そして準備が終わると、ルナリアが一度だけ大きく頷く。


「では、いただきます」


 ルナリアがそう言うと、黒薔薇のメンバーやゼノビアも「いただきます」と唱和した。


 そして優雅な朝食が始まる。


(あとはいつも通り食後のフルーツ盛り合わせか。室内菜園から持ってこよう)


 拠点拡張のついでに、室内菜園も拡張して多くの果物が作れるようになった。


 いずれは生産スキルの栽培スキルも上限突破させたいと考えているが、さすがにこれ以上デメリットを受けるのはまずいかもしれないと止めている。


 ただ、スキルが200になったことで何かのシステムが開放されるなら上げないわけにはいかない。今度はどのスキルをマイナスにするかとハヤトは考えながら部屋に向かった。


 以前はエシャのためにメロンを作っていたが、今はそれ以外にもオレンジやリンゴ、それにイチゴやバナナなどが作られている。最近ではチョコを大量消費するのでカカオも作り始めた。


 店で買ったほうが早いのだが、品質の高い果物を作るためには必要なことと割り切って毎日水をあげている。


 ハヤトは今日の収穫分をアイテムバッグへ入れてから食堂へと戻った。


 食堂へ戻ると、なぜか全員がハヤトの方を見つめている。


「え? なに?」


 最近は少し慣れたが、食堂にいるのは見目麗しい女性だけだ。その全員に見られていると思うと仮想現実だとしても抵抗がある。


「ルナリア様から聞いたのですが、ハヤトはなにかお祝いしたいとか?」


 ロザリエがテーブルナプキンで優雅に口元を拭いてから訪ねてきた。


「ああ、そのこと。実はついさっき製薬スキルが200になってね。そのお祝いをしたい気分ってこと」


 ハヤトのその言葉に軽い驚きの声が上がる。


「それはおめでとうございます……でも私達の戦闘系スキルが200になる前に生産系スキルが200になるっておかしくありません?」


 ロザリエ達もスキル上げはしている。主に戦闘系のスキルで、モンスターとの戦いもそうだが、対人戦でスキルが上がりやすいということで色々とやっていた。


 そのスキル上げよりもハヤトの生産系スキルの方が早く200になったということに驚いているのだ。


「皆のおかげで素材を自由に使えるからね。あ、ちなみに製薬スキルが200になったら調合というシステムが開放されてね。薬品を二つ合わせることができるようになったよ。上手く使えば効果が倍になりそうな――」


 ハヤトはそこで言葉を止める。


 黒薔薇の全員が先ほどとは比べ物にならない程の目力でハヤトを見たのだ。


「ど、どうかした……?」


「そ、それは効果が、に、二倍になるのですか?」


 冷静を装っているが上手くいかない。そんな感じでロザリエがハヤトに尋ねた。


「試してはいないけど別の薬品扱いになるみたいだから効果が重複するんじゃないかな。同じ薬はクールタイムの関係で使えないからね」


「スキンケア! スキンケアを作りなさい!」


「ちょ、なに!?」


 ハヤトは黒薔薇のメンバーに取り囲まれる。しかも武器を構えていた。


 そして巨大な鎌「マッドネス」を構えたロザリエが悲しげな顔でハヤトを見る。


「最近、戦いばかりで私達の女性らしさがゴリゴリと減っているのですわ! このままだとギル達みたいになってしまうので、今日くらいは休暇を取ってのんびりしようとしたところなのです! そんな話を聞いたら、やってもらうしかありませんわ!」


「ええ……?」


 たしかにスキンケアとか肌がつるつるになるという薬品は存在する。仮想現実でも見た目に反映されるので、女性プレイヤーはよく使っていると聞いたことはある。


 ハヤトは少し考えてから了承した。


 ただし、あくまでもやってみるという話で効果が二倍にならなくても怒らないという条件付きだ。


 時間の限り他の生産系スキルを上げたいとは思っているが、皆に感謝しているというのも事実。これでやる気が出てくれるならやぶさかではないと、ハヤトはデザートの準備をしてからスキンケアの薬品を作り始めた。


 それから数分後、残念ながらスキンケア系の薬品を調合して使ってみても効果は二倍にならなかった。


 ただ、製薬スキルが200のおかげで性能が25%上がっている。これは反映されているようで、いつもより肌の調子がいいと全員が嬉しそうに言っていた。


 ハヤトからするとまったく分からないのだが、本人達がそう言っているのなら間違いないのだろう。なぜか毎日作っておいて欲しいと言われたのでこれも日課の作製アイテムに組み込まれた。


 システム的に攻撃力が上がるわけではないが、気持ちが向上するなら間違いなく戦力は上がっているだろう。


 こういうところは女性だなと思うが、ルナリアとゼノビアはあまりピンと来ていないようで「なにかヌルヌルする」と不評だった。


 そんな状況ではあったが、ハヤトの方からも話を振った。


 当然、賢者の石についてだ。


 レプリカ系の装備を本物にするということでかなり驚かれたが、ルナリアだけはがっくりしていた。


「私は浮気してないのに、アロンダイトが浮気するってこと?」


「そういう事じゃないと思うよ」


 アロンダイト・レプリカが作れる以上、アロンダイトも作れるようになる。ルナリアが持っているアロンダイトはルナリア専用装備だが、ハヤトが作ればだれかの専用装備になるのだ。


「私とアロンダイトのためにハヤトさんを倒すべきかと思えてきた」


「気のせいだから止めてね。それに、そのアロンダイトはルナリアさんと相思相愛だと思うよ。作られたアロンダイトは名前が同じだけの別物だから」


「ハヤトさんはいい事をいった。魔王クッキーをあげる。ロザリエちゃん、差し上げて」


「……ありがとう」


 ハヤトはロザリエから星四のクッキーを受け取った。


 だが、話はそこで終わらない。


「ルナリア様、一つ思ったのですが、ハヤトに本物エクスカリバーを作ってもらい、それをルナリア様が二刀流で装備するというのはどうでしょう? ルナリア様ならイヴァンの『ホワイトライトニング』も使えると思うのですが」


 アロンダイトの「ブラックスワン」、エクスカリバーの「ホワイトライトニング」、どちらとも武器専用のウェポンスキルで発動すると物理法則を超える動きを可能にする身体強化やダメージアップが付く。


 ネイやセシルはそのレプリカによる二刀流だがウェポンスキルはなく、本物だけのスキルだ。それを同時に発動するとどうなるのかはハヤトも興味があった。


 ロザリエの提案にルナリアは目をつぶって考えていたが、くわっと目を開いた。


「二刀流は浮気にならない?」


「なりませんとも」


「採用。ハヤトさん、エクスカリバーを作って。魔王専用エクスカリバー。その子も大事にする」


「作れなくはないけど、さっきも言った通り、賢者の石を作ること自体が難しくてね。そもそも素材の一部はどこにあるのかも分からないんだ」


「そんなときのためのメイドギルドでしょう。あそこに依頼すればすぐに判明しますわよ」


 ロザリエの言葉にハヤトは「ああ」と納得した。


「確かにその手があったね……そっか、ザラタンの倒し方も調べてもらうことができるかもしれないな」


 メイドギルドの情報収集能力は高い。それなりの値段になる可能性は高いが、それで済むなら安い物だと考えるべきだろう。


「それじゃ頼んでみるよ。判明したらアイテム収集をよろしくね」


「それは大丈夫。皆と一緒なら誰にも負けない」


 ルナリアがそう言うと、ロザリエをはじめとする黒薔薇のメンバーは感動で目を潤ませていた。


 そこまでかと思えるほどだが、黒薔薇にとってルナリアは信仰のようなものだ。そういうこともあるだろうと、ハヤトは考えるのを止めた。


 そこでふと、ゼノビアが視線に入る。話を聞いていなかったようで、視線をキョロキョロさせているのだ。


「ゼノビアさん、どうかした?」


「ひゃあ!」


 ゼノビアは男性恐怖症。最近は慣れてきたと思ったのでさりげなく声をかけたのだが、いつも以上の声を上げられてハヤトの方が驚いてしまった。


「ごめん。いきなりすぎたね」


 ゼノビアは首をフルフルと横に振ってから、服の襟で深く顔を隠すようにした。顔の上半分は見えているが口元が見えない程だ。


 そして上目遣いで頭を下げる。


「こ、こっちこそ、ごめんなさい。い、いきなり声をかけられて驚いちゃった……」


 その会話を見ていたルナリアは腕を組んでから頷いた。


「ゼノビアちゃんはハヤトさんに慣れてきたと思ったらまだまだだった。ここは荒療治が必要かもしれない」


「無理に治療する必要はないと思うけどね。むしろ余計なことをすると悪化するから止めた方がいいと思うよ」


「確かに無理矢理は良くない。ハヤトさんと同じ部屋に一日閉じ込めるという治療を考えたん――」


「無理」


 ルナリアの言葉にかぶせるようにゼノビアがそう言った。普段おどおどしている感じなのに、かなりの決意をもってそう言った。


 深い意味はないと思うが、ハヤトは少しだけショックを受ける。それをされても困るが、そこまで拒絶しなくてもいいじゃないかとは思う。


「そうですわ、ルナリア様。そんなことをしたら、エシャ・クラウンに何をされるか分かった物じゃありません」


「なんでそこでエシャの名前が出るかな?」


 ルナリアとゼノビアもロザリエの言葉に首を傾げるが、当のロザリエは何やらニヤニヤしながらハヤトを見ている。


「それを説明するのは野暮というものですわ」


 黒薔薇のメンバーもニヤニヤしながらうんうんと頷いている。


(やっぱり魔女の集いだな。まだまだ居心地が悪い日が続きそうだ……)


 ここで食堂を出ていくのはその通りだと言っているようなものなので、ハヤトは何かと理由を付けて料理を作ったり、スキル200の恩恵のことを説明したりするのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ハヤトが錬金術師になっている! [気になる点] ハヤトとゼノビアを一つの部屋に一日中閉じ込めるとエシャが何をするか分からない? う~ん、う~ん、何でだろうなぁ…… どうしてここでエシャが…
[良い点] 聖剣持ったかわいい魔王。 いやー、魔国の住民が増えそうだけど、魔王さまは王都から拠点を変えなさそう?
[一言] いつの時代もコイバナは鉄板のガールズトーク
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