メインストーリーの確認
殲滅の女神とのクラン戦争が終わった翌日の午後、ハヤトはログハウスへやってきた。元のクランメンバーであるネイ達に剣と拠点を渡すためだ。
ハヤトは午前中にその連絡をした。立場や状況を考えるならネイ達がハヤトのところへやってくるべきだろう。だが、ハヤトはそちらへ行くと連絡したのだ。
理由は簡単。メイドであるエシャの機嫌が悪いからだ。この状態でネイ達を呼ぶと色々と問題がありそうなので、ハヤトの方からログハウスへ行くことにした。
エシャの機嫌が悪い理由はハヤトにもなんとなく察しはついている。剣や拠点を渡すことに不満があるのだろうが、根本的にはハヤトの行動そのものが不満なのだろう。
そんなふうに思えるようになったのは、午前中に執事のレリックと話した内容だ。
「ハヤト様はランキングで上位を目指しているとおっしゃっていますが、はたから見ると必死さが感じられません。駄目なら駄目でも構わないと言った感じです。エシャはそれが気に入らない――いや、心配なのかもしれません。先の戦いも相手は上位クランでしたが、これからはさらに上との戦いが始まる。拠点も剣もこれからのクラン戦争を勝ち抜くために必要になるかもしれないのに、それを簡単に手放そうとしている。そんな甘い考えではこれから生き残れない、勝つためならたとえ仲間でも裏切るくらいの気持ちでいて欲しい、そんなふうに思っているのですよ。それがハヤト様に伝わらなくて不機嫌なのでしょうね」
「それならそうと直接言えばいいのに」
「そんなことをするような人物でないことはご存知でしょう? エシャはツンデレと言えばいいでしょうか。以前のエシャを知っている私としては大変驚きですがね」
「俺はレリックさんからツンデレという言葉が出てくることに驚いたよ。でも、そうか。エシャは俺の必死さが足りないことが気に入らないのか。だからあんなに不機嫌なんだ」
「全然違います。というか、私が近くにいるのに勝手に語らないでくれますか。名誉棄損で訴えますよ。機嫌が悪いのは報酬のケーキがまだ貰えていないからです。ご主人様はすぐにケーキをおよこし下さい。むしろ剣や拠点を返しに行く前に渡すべきだと助言させていただきます」
エシャは否定していたが、ハヤトとしてはレリックの話が正しいと思っている。
確かにエシャはハヤトをからかったり、普段からとぼけた回答をしたりしているが、ここぞという時にはハヤトを助けているのだ。何とも思っていなければ、そもそも手伝わないだろうし、ハヤトの行動に対して不機嫌になることもない。まず間違いなくエシャは自分を心配しているのだとハヤトは思っていた。
(NPCに心配されてるってどうなんだろうね。でも、エシャはなんでそこまで必死というか、勝ちにこだわるんだろう? もちろん俺もお金のために勝ちにはこだわりたいけど……まあ、それは後で考えよう。まずはやることをやってからだ)
ハヤトはそう考えて、以前の拠点であるログハウスへ向かった。
ハヤトがログハウスへ着くと、ネイが出迎えてくれた。
久々に見るログハウスは何も変わっておらず、中にある家具も変化はない。一ヶ月程度しか住んでいなくても懐かしいとハヤトは思った。
ネイに促されてハヤトは椅子に座り、テーブルを挟んで向かい合った。ハヤトは招かれた方だが、ついいつもの癖でコーヒーをネイと自分の前に出した。ネイもそれを気にすることなく、ありがとうとだけ答えた。
ハヤトはコーヒーを少し口に含んでから周囲を見渡して、少し気になった。
ログハウスにはネイ以外のメンバーがいないのだ。連絡を入れた時点ではログインしているメンバーが何人かいるはずだったのだが、そのメンバーが誰一人としてここにはいない。
「みんなはどうしたんだ? いると思ったんだが」
「いや、私にもよく分からん。急に狩場へ行ってくると言って出て行ってしまったんだ。ハヤトによろしく言ってたぞ」
「そうなのか? もしかして俺って避けられてる?」
「いや、そんなことはないぞ。剣や拠点のことを話したらハヤトに感謝してたし……ああ、もしかしたら、なにか生産の材料になる物を取りに行ったのかもしれないな。ハヤトへのお礼として」
「気を遣う必要はないのに。でも、それなら嬉しいけどね」
「喜んでもらえるなら何よりだ……ああ、そうか、なるほどな」
「どうかしたのか?」
「いや、皆がログハウスを出るときに笑顔で――いや、あれはニヤニヤって感じもしたが……まあ、笑いながら、頑張れよ、と言ってくれてな。あれはハヤトへのお礼として、もてなしを頑張れ、と言う意味だったのかと思ったところだ」
「もてなしなんか気にしなくていいぞ。剣を取り返したのは俺が勝手にやったことだし――そうだ、まずはこれを返そう。本当の所有者が持っていた方がいいだろうからな」
ハヤトはアイテムバッグに入れていたエクスカリバー・レプリカをネイに渡した。
ネイはそれを受け取ると、ちょっとだけ涙ぐみながら剣を見つめる。そしてゆっくりと息を吸ってから吐き出す。
「ありがとう、ハヤト。これは皆からの誕生日プレゼントだったからな。どうしても取り返したかった」
「ああ、うん。でもな、たとえ信頼できる仲間でも個人情報は言うなよ? 誕生日くらいなら問題ないんだろうけど、言い出したときはかなりびびったから」
「う、うむ。これを貰った時に皆にちょっと怒られたから今はそんなことしてない……本当だぞ?」
「まあ、信じてるよ。それはいいとして、その剣は装備して絶対に外すなよ。そうすれば取られないから」
「分かった、これからはちゃんと装備しておく。そうだ、この剣の耐久に関してはハヤトのところで直してもらってもいいか? もちろんお金を払うから」
「耐久の修復くらいは無料でいいぞ」
「いや、皆で話したんだが、ハヤトに甘えすぎなのはやめようということになってな。何かを頼むならお金やそれに見合うものを用意して取引しようって話になった。それにハヤトはクラン戦争で色々と準備があるだろう? 時間と手間を掛けさせるならそれ相応の対価が必要だって話になったんだ。もちろん、ハヤトが許可をくれたら、という話だが」
「何を遠慮してんだ。俺達は友達だろう? 忙しい時は無理だが、手が空いている時ならいくらでもやってやるから」
ハヤトがそう言うと、ネイは笑顔になる。満面の笑みだ。
「ハヤトならそう言ってくれると思ってた。私だけじゃなくてみんなもそう思ってたけどな」
「みんなの俺に対する評価が怖いよ。ネイ以外も誰かに騙されるようなことがないように注意してほしいもんだ。よし、それじゃ次は拠点だな。いま、トレードを――」
ハヤトがそう言いかけたところで、ネイが右手を出した。手のひらをハヤトのほうへ向けるようにして止めるようなポーズだ。
「ハヤト、拠点はそのまま使ってくれ」
「え?」
「ハヤトはAランクになったんだろう? なら、それなりの拠点が必要だろうし、あれは元々ハヤトが建てた物でもある。私達には不相応なものだから、ハヤトにそのまま使って欲しい」
「……いいのか?」
「もちろんだ。これはみんなからも許可を貰ってる。それにもう一つ事情があってな」
ネイの言う事情。それは拠点にアイテムを買いに来る客の事だった。
以前、ハヤトはあの拠点で自分の作成したアイテムを売っていた。適正価格で売っているし、品質が良い物が多く、品切れも少ない。そしてオーダーメイドというか、客の要望を叶えた装備などを作ってくれたので、それなりのリピーターがいたのだ。
だが、クランからハヤトがいなくなった後、客の要望に応えられなくなった。ある程度は準備ができるのだが、それでもハヤトが準備するアイテムの量には追い付かず、ハヤトが残したものが無くなった時点でほとんど客が来なくなってしまったのだ。
「私達のせいで客を逃してしまったのはすまないと思ってる。クラン戦争で忙しいとは思うが、ハヤトならまた盛り返せると思うんだ。だからあの拠点はそのまま使ってくれ。私達はこのログハウスを貰うから――いや、貰うじゃなくて買う、だな。建てたときの値段を言ってほしい。それに家具とかの値段も」
「いや、いいよ。そういうことならここはそのまま使ってくれ。だいたい、俺が抜けたときに貰った金で建てたんだから、このログハウスはクランのものだと言ってもいいんだ。そこまで気を遣わなくていいから」
「……そうか。ならありがたく使わせてもらう。でも、何かお礼をしたいんだが――」
「それなら、連絡した通りメインストーリーを教えて欲しい」
「確かストーリーに出てくる人物のことを知りたいとか言ってたな?」
「人物だけじゃなくて、歴史とかもかな。俺ってクエストを全然やってないから、そういうのはよく知らなくて」
「それならなんでも聞いてくれ。一応、クラン戦争が始まる前までのクエストならほとんどクリアしているから、大体のことは知ってるぞ」
かなり自信のありそうなネイの顔を見て、ハヤトは少し心配になる。とはいえ、間違った情報を言うことはないだろうと、聞いてみることにした。
ハヤトが主に知りたいのはこのゲームのメインストーリーだ。
このゲームは二年半と少し前から始まっている。ハヤトはこのゲームが始まった当初からやっているが、最初から生産職を目指したので、何かのアイテムを用意するような納品クエストくらいしかしていない。他にも討伐クエストや、護衛クエスト、謎解きクエストなどがあるが、ハヤトはそれらをまったくやっていなかった。
メインストーリーもそういったクエストの一つに過ぎないのだが、メインストーリーのクエストの場合、クリアするとさらに別のクエストが連鎖するように発生するので、チェインクエストと言われている。
ネイはそのチェインクエストで発生するクエストの内容をハヤトに教えた。
ネイの話では、魔王を信仰する邪悪な教団を倒すという内容で、最終的には教団のトップを倒してハッピーエンドとなる話だった。他にも細かいことを聞いたが、残念ながらハヤトが知りたいような情報はない。
なのでハヤトは直接確認することにした。
「メインストーリーの中で死龍アッシュ・ブランドルというドラゴンは出るか?」
ハヤトの言葉を聞き、ネイは首を傾げる。そして腕を胸の前で組み、「んんん?」と言った後、ハヤトを見た。
「いや、出ないぞ。そもそもドラゴンなんてクエストに絡んでこない。あの一連のクエストに登場するのは人間だけ。エルフやドワーフすら絡んでこない内容だったはずだ」
「あれ? そうなのか? えっと、それならドラゴンが絡むクエストって何かあるのか? メインストーリーのクエストでなくてもいいんだけど」
「いや、ないと思う。ドラゴンの牙を納品するクエストがあるくらいで、ドラゴンの名前なんかまったく出てこないはずだ。というか、シリュウなんたらってなんだ?」
「シリュウは死の龍って書いて死龍。アッシュ・ブランドルは名前。ドラゴン達には派閥があって争っているとかなんとか言ってたんだが」
「派閥……? ああ、もしかしてドラゴンソウルの話か?」
「ドラゴンソウル? なにかそういうクエストがあるのか?」
「いや、そういうクエストがあるわけじゃない。魔物図鑑に載っている話だ」
魔物図鑑とは、モンスターを倒したときにその情報を得られるというゲームシステムの一つだ。魔物を倒すことでその魔物の情報がプレイヤーが所有している図鑑に登録され、そのモンスターの設定情報などを知ることが出来るのだ。全部埋めれば何かある、と考えられていてすべてのモンスターを倒して図鑑を埋めようとするプレイヤーは多い。
ネイの話では、暴龍アグレスベリオンを倒したときに登録された魔物辞典にそれっぽい話が載っているとの事だった。
この世界には十体の創世龍と呼ばれる龍がいて、ドラゴンソウルという龍の秘宝をめぐりドラゴンの派閥間で争っているという内容だ。暴龍アグレスベリオンはその創世龍の一体であり、世界の始まりからこの世に存在すると言われている。
「その十体の龍だが、まだ全部は判明していないはずだ。分かっているのは暴龍を含めて三体くらいだな。死龍って言うのは初めて聞く。アグレスベリオンがレアモンスターだから、ほかの龍もどこかでレア出現するんじゃないかと言われているんだが……もしかしてハヤトはその龍を見たのか!? なるほど、私達に討伐してほしいってことなんだな!?」
「いや、討伐はやめて。たまたま知ったからどんな龍なのか知りたかっただけだよ……露骨に残念そうな顔をしないでくれ」
ハヤトはネイの戦闘狂っぽいところに相変わらずだなと思いつつ、自前のコーヒーを飲んだ。
(メインストーリーに絡んでくる話じゃないのか。そういうクエストはないと言っているけど、もしかして俺がそのクエストを発生させている可能性があるのかも。とはいえ、そのクエストをやってる暇はないよな。ドラゴンソウルって言うのがレアアイテムですごい性能を持っている可能性はあるけど……とりあえずアッシュ達のことは分かったから、次はクラン戦争のことを聞くか)
ハヤトはコーヒーを飲み干すと、改めてネイのほうを見た。
「それじゃ次はクラン戦争について教えてもらえるか? メインストーリーにどう絡んでくるんだ? さっき聞いた話ではよく分からなかったけど」
「いや、クラン戦争はメインストーリーに絡まないぞ。いや、絡まないというか情報としては出てくるけど、ほとんど関係ない」
「もしかして、クラン戦争はそういうゲームシステムがいきなり出来たって話なのか? なにかこう、クエストやストーリーに関連して開始されたと思っていたんだが」
「いきなり出来たってわけじゃないと思う。ゲーム上の歴史では昔からクラン戦争というのはあったらしいぞ。何年かに一度クラン戦争が行われているらしくて、NPCの中に前回優勝したクランメンバーがいるって話を聞いたことがある」
ハヤトはエシャの言葉を思い出す。エシャの言葉では三年前のクラン戦争で優勝したという話だった。
「もしかして、エシャ・クラウンという名前か? レリック・バルパトスでもいいんだけど」
「いや、名前までは知らない。もしかして前回優勝したクランのメンバーに会ったことがあるのか?」
「まあ、ちょっと。会ったというか、知り合いかな」
「おお、すごいな! 勇者クランのメンバーと知り合いなのか!」
ネイの言葉にハヤトは動作を止める。聞き捨てならない言葉が聞こえたからだ。
「いま、何クランって言った? ちょっと良く聞こえなかったんだが」
「勇者クランと言ったんだが?」
「勇者クラン?」
「実際にそう言う名前のクランがあったわけじゃないぞ。ただ、メインストーリーに勇者と魔王という情報が出てくるんだが、その勇者がいたクランが前回のクラン戦争で優勝したって話なんだ――なんで複雑そうな顔をしているんだ?」
「……確認したいんだけど、勇者って女性か?」
「いや、男性だな――なんで今度はそんなに安堵した顔になっているんだ?」
「知り合いが勇者じゃなくて心底安心しただけ。ちなみに、そのクランが魔王を倒したって話なのか?」
「そういう話ではないな。単にクラン戦争で勇者のいたクランと魔王のいたクランが戦って、勇者のクランが勝ったって話だ。その時点では勇者も魔王も自覚がなくて、戦った後で覚醒したとかいう話だったぞ」
「えっと、自覚がないとか、覚醒って何の話? というか、そもそも魔王ってクラン戦争に出れるの?」
「勇者と魔王は常に人間に転生を続けて終わることのない戦いを繰り広げているという設定だ。そして今の勇者と魔王はクラン戦争で初めて顔を合わせて記憶を取り戻し覚醒してお互いの運命を知ったとかなんとか。邪悪な教団のトップがそんなことを言ってたな」
「なるほどね」
(その設定はどうでもいいんだけど、エシャやレリックさんは勇者と一緒に戦った仲間ってことに驚きだ。あれ? でも、二人は俺のクランに入ったよな? ということは勇者のクランはすでに解散してるってことか)
ハヤトはその辺りの情報も含めて色々と確認した。
クラン戦争で負けた魔王はクランメンバーを連れて姿をくらませる。そして勇者はクランを解散してその魔王を追うという内容だった。
これらはメインストーリーのクエストで得られる情報だが、登場人物は姿どころか名前も出てこないという。教団のトップを倒してから、まったく進展していないが、今後のバージョンアップで判明するのではないか、というのがネイの意見だった。
ハヤトはそれを頭の中で整理しながら、もう一杯コーヒーを飲んだ。
(メインストーリーってそんな感じなのか。本人たちに聞いても答えてくれそうだけど、エシャなんかは言わない気がするんだよな。勇者がいたクランに所属していたなんて一言も言わなかったし……まあいいか、とりあえず情報は得られた。今日はこれくらいにしておこう)
「ありがとう、色々分かったから助かったよ」
「もういいのか? ほかにも色々な設定を知ってるから何でも答えられるぞ? 暗黒十騎士とか、不死十傑とか、聖魔十刀とか。おすすめは、黒薔薇十聖だが」
「……なんでそんなに十が多いんだ? 四天王とかないの?」
「その辺りは良く知らないが、大体の集団はほとんど十人構成だぞ。運営というかシナリオライターが十と言う数字が好きなんじゃないか? ただどの集団も名前だけで所属している人物は一切出てこないけどな。たまに見たって話を聞くからどこかにはいるとは思うんだが」
「へぇ、でも、その話は後で聞かせてもらうよ。興味はあるんだけど、結構長居しちゃったし、用事があるからもう帰るよ」
「そうなのか。もっとゆっくりしていってほしかったが、クラン戦争の準備もあるだろうから仕方ないな――それじゃ、ハヤト、剣のこと、ありがとう。この恩は絶対に忘れない。何かあれば言ってくれ、最優先で何でもするぞ!」
「……女の子が何でもするなんて言うもんじゃないぞ? 大概の男は勘違いするから」
「む? そういえば、前も怒られたか? でも、ハヤトなら大丈夫だろう! だから遠慮せずに何でも言ってくれ!」
ハヤトは少し溜息をついてからネイに別れを告げてログハウスを出た。
(さて、それじゃ、拠点に戻ってエシャにケーキ、レンちゃんにはプリンを作ってあげないとな。しかし、エシャやレリックさんが勇者のクランにいたとか、アッシュやレンちゃんが創世龍であるとか、結構なNPCを引き当てたなぁ)
ハヤトはそんなことを考えてから転移の指輪を使い、王都の近くにある拠点へ戻った。
テレポートで拠点に戻ってきたハヤトは入口で不思議なものを見た。ドアの前になにかの粉のようなものがぶちまけられていたのだ。
(なんだこれ? 粉……というか、かなりきめ細やかな灰か?)
とりあえず中に入ろうとハヤトはその灰をまたごうとした。
だが、またごうとした瞬間に灰の中から手が飛び出し、ハヤトの右足を掴む。ハヤトはバランスを崩して倒れてしまった。
「おわ! な、なんだ!?」
「……た、助けてくれ……」
倒れたハヤトの耳に灰の中から弱弱しい男性の声が聞こえてきたのだった。




