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アナザー・フロンティア・オンライン ~生産系スキルを極めたらチートなNPCを雇えるようになりました~  作者: ぺんぎん
第一章

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味方の戦力確認

 

 レリックの課題をクリアした翌日、ハヤトがしたことは味方の戦力確認だった。


 剣を取り戻す準備は整った。だが、もう一つ考えなくてはいけないことがある。それはクラン戦争で「殲滅の女神」に勝てるかどうかだ。


 たとえ剣を取り戻したとしても、クラン戦争に負けてしまえば拠点を奪われることになる。それでは意味がない。剣を取り戻し、拠点も無事であることがハヤトの勝利条件なのだ。


 クラン「殲滅の女神」はAランク。前回戦った初心者狩りのクランとは比べ物にならないほどの強さを持っているとハヤトは考えている。


 スパイがいたという状況ではあったが、「殲滅の女神」は「黒龍」に完全勝利した。ネイのエクスカリバー・レプリカがなかったとは言え、異様ともいえる結果だ。


 何かしらの理由がある可能性はあるが、まずは味方の戦力を調べる必要があるとハヤトは考えた。


 エシャ、アッシュ、それに傭兵団員に関しては大体判明している。ほとんど知らないのが、アッシュの妹であるレン、それに窃盗スキルは100あるが戦闘力があるかどうか分からないレリックだ。


 そのこともあり、アッシュ達傭兵団がモンスターを退治にいく狩場へ一緒について行くことにした。レンがどれくらい強いのかを見るためだ。また、ドラゴンカースの詳細な情報も確認したいという気持ちがハヤトにはあった。なお、レリックについてはエシャが戦えますよと言っていたので後回しにしている。


(相手チームのことは気になるけど、それよりもまずは味方だ。上位クランでの戦いは相手の戦術を対処するよりも、味方の戦術を相手に対処させるほうが勝てるって聞いたことがある。つまり、戦術を押し付けたほうが勝つ。基本的な戦術はアッシュに任せるけど、いざという時のために色々勉強しておかないと……なんか、軍師っぽいポジションで格好いいし)


 ハヤトはそんなことを考えながら、アッシュ達と狩場へ移動した。


 アッシュ達が主としている狩場は、「ボボダの山」と言われる多数のドラゴンがいる場所だ。


 この場所はプレイヤーもよく狩場にしている。ドラゴンの素材と言うのは高価な物が多い。もし、ドラゴンを狩れるほどの戦力があるなら、まず間違いなくここを狩場にするだろう。


 とはいえ、ここには厄介なモンスターがいる。二時間おきにレアなドラゴンが出現するのだ。このドラゴンはすさまじい強さを誇り、数人のパーティではまず勝てない。つまりこのドラゴンが出た場合は、狩場を撤退しないといけないのだ。一時間ほど経てば、そのドラゴンはどこかへ行ってしまうので、いなくなるまで狩りをしないのがプレイヤー達の暗黙の了解になっている。


「レアなドラゴンってアッシュの事じゃないよな?」


「俺が人間を襲う訳ないだろう。あれは強硬派のドラゴンだ。暴龍アグレスベリオン。父親の右腕と言われる奴で――」


「あ、そういうのはいいから」


「……そうか? ここからがいいところなんだぞ? ちょっとくらい聞かないか? 冥龍と雷龍の戦いとか――」


「お兄ちゃんの話は長いから聞かないほうがいいですよ。そんなことよりも呪いの話をしましょう! ハヤトさんが好きな呪いの人形って何ですか!? やっぱり髪が伸びるタイプですか!?」


「……首がぐるぐる回るタイプ……かな?」


「やっぱりハヤトさんは分かってるぅー!」


(分かりたくない)


 そんな話をしながらも、ハヤト達は狩りの準備を進めるのだった。




 数十分後、ハヤトは驚いていた。


 アッシュ達がドラゴンを狩るスピードが異様に早いのだ。


 一番の理由はアッシュが持つ剣の性能だろう。ドラゴンイーターと呼ばれる剣はドラゴンに対して五倍のダメージをあたえるというあり得ない性能を持っている。それで攻撃されたドラゴンは一撃で相当なダメージを受けていた。


 次の理由としては、レンの呪詛魔法だ。本人のドラゴンカースというスキルは今回初めての運用と言うこともあってあまり効果的に使っているとは言えない。だが、呪詛魔法は違う。呪詛という定期的にダメージを与える魔法があるのだが、そのダメージがえげつない。みるみるドラゴンのHPを奪っていくのだ。


「ハヤトさんに作ってもらった五寸釘は最高ですね! ものすごく呪詛のダメージが高くなりました! うひひひ……」


「……頑張った甲斐があったよ。でも、ダメージが高いのは俺のおかげじゃなくて、レンちゃんのコレクションが理由じゃないかな。なんかこう全身が禍々しい装備になってるけど、さっきのうひひってそのせい? ――あ、違う? それは素なんだ?」


 ハヤトはレンのために五寸釘を作った。エシャの助言通りにオリハルコンで作った五寸釘だ。


 物が物だけにあまり作りたくはなかったが、それはそれとして職人であるハヤトは星五を目指した。そして出来たのが、現在レンの持っている「オリハルコンの五寸釘」だ。


 性能は普通の物とそれほど変わらないが、一つだけ特別な効果がついた。それは「呪われた装備を着けるほど呪詛の威力が上昇する」だった。


 呪われた装備というのは、メリットとデメリットが共存しているタイプの装備だ。デメリットが大きいほどメリットが大きいのが特徴で、デメリットがひどい場合は普通の装備のメリットを遥かにしのぐ。プレイヤーによっては好んでその装備を使っているほどだ。


 レンはそのアイテムの収集家だった。


 レンはハヤトが作った五寸釘を見て、いままでため込んだコレクションをここぞとばかりに装備した。これまではただのコレクションであったが、その五寸釘により実用性がでたからだ。その結果、呪詛のダメージが跳ね上がっている。


 ただ、その呪われた装備のせいで、レンのステータスは魔力を示すMAG以外はすべて減少してしまい最低。HPも同様に最低な上に、徐々にMPが減るという状態だった。このMPが減る状態はチョコレートパフェの回復効果で相殺している。


 呪われた装備とオリハルコンの五寸釘による運用も今回が初めてではあったが、上手く立ち回れるのを確認してレンは大変ご満悦だった。


(このゲームはバランス重視よりも火力をあげたほうがいいと言われている。確かに特化構成にしたほうが強そうだ。それにソロでやるわけじゃない。仲間と一緒なんだから特化にしたこと以外が出来なくても何の問題もないよな)


 ハヤトはそんなことを考えながら、アッシュ達の戦いを眺めていた。




「そろそろ嫌な奴が来るから狩場から撤退するか」


 三十体目のドラゴンを倒した後、アッシュがそんなことを言いだした。


「さっき言ってた暴龍って奴の事か?」


「その通りだ。このメンバーじゃ倒すのは無理だろう。俺がドラゴンになって倒してもいいんだが、アイツを完全には消滅させることは出来ないから戦うだけ無駄だ」


(よくは知らないが、そういう設定なんだろうな。その龍も倒せることは倒せるはずだし……二時間後にまた出現するから、それを完全には消滅させられないって言ってるんだろう)


「それに今日はなぜか戦利品が多い。アイテムバッグの中もいっぱいだから拠点に戻って分けよう」


「戦利品が多いのは俺の解体知識スキルが影響していると思うぞ」


「ハヤトは生産スキル以外のスキルも持っていたのか?」


「生産系のスキルは七個だけだし、残りは知識系のスキルを持ってるよ。一部の生産スキルの補助スキルだし、上げないわけにはいかないかな」


 ハヤトの持つ解体知識スキルは料理スキルの補助スキルとして使われる。全ての料理に影響があるわけではなく、主に魚系料理を作るときの成功率に影響するという性能を持っているのだ。また、それ以外にもモンスターの落とすアイテムの数を増やす、レアなアイテムを落としやすくなる、などの効果もある。どちらかといえば、後者の性能をメインとして使うスキルだ。


「これから狩りに来るときはハヤトを連れてきた方がいいかもしれないな。体感でこれだけ変わるのだから相当な効果なのだろう」


「時間があるときなら構わないぞ。クラン戦争が近くなると準備で忙しくなるから無理だけど。それに全く戦力にならないのもちゃんと理解してほしい」


「戦力にならないのは別に問題ない。代わりに料理や薬、武具の耐久をまったく気にしなくていいというメリットがある。休憩せずに戦えるからむしろ効率はいつもより良かったと思うぞ」


 ハヤトは戦えない分、生産スキルを活用することで色々な物を作っていた。それが連戦を可能としていたのだ。


「そう言ってもらえるとありがたいよ。それじゃ、帰ろうか」


 ハヤトがそう言ったところで、レンが手を上げた。


「ハヤトさん、料理の効果が切れました。MPが切れて動けません。チョコレートパフェをお願いします」


「もう帰るからMPを減らしていく呪いの装備を外したら? ……え? 察して? ああ、そういう理由にしたいだけなのね。それじゃこれ。今日はここまでだよ」


 ハヤトはこれからチョコレートパフェの作り置きがたくさん必要になるなと思いながら、転移の指輪を使い、全員で拠点へテレポートした。


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― 新着の感想 ―
[一言] >冥龍と雷龍の戦い 大冒険のにおいがしますね
[良い点] 胃袋がっつり掴み取ってますなあ。
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