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アナザー・フロンティア・オンライン ~生産系スキルを極めたらチートなNPCを雇えるようになりました~  作者: ぺんぎん
第五章

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暴龍との戦い

 

 暴龍アグレスベリオンと戦う日、ハヤト達は朝早くからボボダの山に集まっていた。


 ボボダの山は赤銅色の岩のみで緑は一切ない山。アグレスベリオンが出現する山の北側、その中腹だけは戦いやすいようにしてあるのか、平たんな場所が直径一キロの円状で広がっている。南側は絶壁、それ以外は開けた場所になっており、そこそこ眺めはいい。


 事情を知らずに狩場にいた人達は驚きの表情をしている。これから何が始まるんだと、ハヤト達の集団を見つめていた。


 この場の最大勢力はジョルト率いるバンディットのクラン。総勢百人。だが、人数が多いと言うだけで実際に戦えるのは五十人ほどだ。残りの五十人は検証、調査、生産などを行う非戦闘員なので、あくまでもこの場所にいるだけだ。


 次に多いのはルナリア率いる魔王城のメンバー。ロザリエ率いる黒薔薇十聖が十名と、黒い鎧に身を包んだ騎士達が十名。それと明らかにユニークな装備を身に着けてルナリアのそばにいる四人。他にも十数名いるが、それほど強そうな装備を身に付けてはいない。


 ハヤトがそのメンバーを見ていると、エシャが近づいてきた。


「ルナリア様の近くにいるメンバーが気になりますか? 黒薔薇はご存知ですよね? 黒い騎士達は『暗黒十騎士』のメンバーです。昔は『ナイトメア』って言ってましたけど。それにあの強そうな四人はルナリア様のクランにいたメンバーです。以前のクラン名は『アンブロシア』。見て分かる通り、かなり強いですよ」


「何となく分かるよ。持っている武具が強そうだし。でも、敵対しているわけじゃないから頼もしいよね。ところでメイドギルドの方はどう?」


「準備はできてますよ。メイド長を含めた総勢二十名の武闘派メイド。いつでも行けます。とはいえ、私は別行動なのでメイド長にお任せですけど」


「了解。えっと、それじゃバトラーギルドは……」


「こちらも準備は整っておりますよ、ハヤト様」


 今度はレリックが近づいてきて、ハヤトに頭を下げた。


「レリックさん、バトラーギルドの皆さんについてはお任せしても大丈夫ですか?」


「はい、問題ございません。バトラーギルドでも腕利きを揃えました。必ずやお役に立ちましょう」


「分かりました。よろしくお願いします。えっと、あとは――」


「ハヤトさーん」


 マリスがグリフォンのランスロットに乗って空を飛んできた。その後ろには他にも飛行ができるモンスターに騎乗した人達がいる。


「テイマーギルドから手を貸してくれる人達を連れてきました。皆さん強いんですよ!」


「ありがとう。ところで報酬は猫まんまデラックス十食だけでいいの?」


「はい、問題ないですよ。実は私の方からも報酬を用意していて、今度ペットの訓練をしてあげることになってますので」


「そうなんだ? マリスにも色々と面倒をかけるね」


「いいんですよ。こっちだっていつもお世話になっているんですからこれくらい。それじゃ私達は空からの攻撃をするので、よろしくお願いしますね」


 マリスはそう言うとランスロットに乗って上空へ飛んで行った。マリスを含めた十五名がペガサスやグリフォン、それにワイバーンなどに乗って上空を旋回している。


 そして同じように飛んでいた別の部隊がハヤトの近くに下りてくる。どう見ても巨大なコウモリ。つまりミストが率いる吸血鬼の部隊だ。


 全員がハヤトの前に下りてくると、人の姿に形を変えた。そして一番目の前にいるミストがハヤトに笑いかける。


「微力ながら我々も討伐に参加させていただきますね」


「本当に微力なのは俺の方ですよ」


「ハヤトさんには日焼け止めとトマトジュースを大量に作ってもらったので微力などではないですね。それに皆の分の棺桶もありがとうござます。悪魔召喚研究会の方と連携してゾンビアタックをする予定です。吸血鬼ですがね」


 ミストとアドリアン率いる悪魔召喚研究会はなにやら意気投合しているようで、最近はミストの屋敷で色々と実験をしているらしい。


 少しはなれた場所にアドリアン達がいて、さらには棺桶もある。ミストが手を上げると、アドリアン達も手を上げて応えていた。


「そうそう、実は前の仲間に連絡したのですが、断られてしまいました。すみません」


「ええと、不死十傑の方達ですよね? いえ、仕方ありませんよ。ダンジョンの奥深くにいるというのであれば、ここまで来るのにも一苦労でしょうし」


 ミストはこの戦闘に参加してもらえないかと、昔の仲間に連絡をしていたが誰からも色よい返事はもらえなかった。ハヤトとしては少しでも戦力がある方が助かるが、目の前にいる吸血鬼のNPCも強そうに見える。なら問題ないと考えた。


 ミスト達はハヤトに頭を下げてから、またコウモリに変身して上空へと飛んだ。マリス達のテイマー隊とはライバル的な関係なのか、連携的なことはせずに別々に戦うようだ。


「ずいぶんと人を集めたものだな」


 今度は勇者であるイヴァンがセシルとノアトを連れてやってきた。


 セシルがずいとハヤトの前に立つ。


「これが終わったらエクスカリバー・レプリカを作ってくれよ。約束したんだからな」


「これが終わったらじゃなくてイベントが終わったらね」


「あん? 秘宝のかけらを四つ集めたら終わりだろ?」


「あー、いや、そうじゃないんだよね。もう一つあるんだ。まあ、最初から半年とか一年かかるって言ったんだからそれを楽しみに待っててよ。できるだけ早く作るから」


「しゃーねーな。タダでもらえるんだからそれで我慢するよ。ハヤトにはドラゴンイーター・レプリカももらってるし、それくらいは我慢するぜ!」


 セシルがそう言ったところでノアトがいつも通りの眠そうな顔でハヤトの前に立った。


「それじゃイベントが終わったら約束通り私を養って」


「……そんな約束はしてないよね?」


「……記憶力がいいのは困ったもの。もっと忘れっぽい人なら良かったのに」


「自分の記憶力に感謝してるよ。ところで三人とも本当に頼むよ? 君らの規格外の強さに期待してるんだから」


「安心しろよ。俺のエクスカリバーで倒してやっから……俺の雄姿に惚れる女性がいるといいなぁ、おしとやかな人で」


 イヴァンがちょっと遠い目をしている。


 確かにエシャやセシル、ノアトを見ていると、もうちょっとおしとやかな女性に気持ちが向くのは正しいとハヤトは思えた。三人ともそれぞれに魅力はある。だが、なんとなく疲れる。


 そんなことを考えていたハヤトにエシャがベルゼーブを構えた。


「なにか失礼なことを考えている気配がしましたが?」


「何も考えていないよ。あ、ネイ達も準備が整ったみたいだな」


「露骨に話題を変えましたね。まあ、いいですけど」


 ネイ達もハヤトに気づき、笑顔で近づいてきた。


「これだけの人を集められるというのもすごいな。スタンピードではこれ以上のプレイヤーやNPCと一緒に戦うんだが、全員が顔見知りというのはなんだか新鮮でテンションが上がりっぱなしだ」


「確かに。ネイ達もよろしく頼むな。俺は戦えないから」


「何を言ってる。アグレスベリオン対策に有効な武具を用意してくれたのはハヤトだろう。戦う以上に貢献しているだろうに。私から言わせてもらえば今日のMVPは勇者や魔王じゃなくてハヤトだぞ?」


 ネイ達やNPC達への武具、それに回復アイテムなどはほとんどハヤトが用意した。バンディットや悪魔召喚研究会のクランに関しては用意していないが、ほぼNPCの全員がハヤトの作った武具を身に着けている。


「そうだと嬉しいけどね」


 ネイは「そうに決まってる!」とハヤトの左腕を右手で叩く。黒龍のメンバーも笑顔で同じことをしてから、その場を離れた。


 離れた理由はもう一つの集団がハヤトに近づいてきたからだろう。


 アッシュ率いる傭兵団「三日月の獣」だ。


 アッシュ、レン、そして三十人の団員達。ドラゴンを専門に狩っている傭兵団なのでこの場では一番頼りがいがあると言ってもいい。


「アグレスはまだ出現していないみたいだな?」


「もうそろそろじゃないかな。そろそろ二時間が経つと思うんだけど」


 アッシュは頷くと、エシャの方を見た。


「連携はないが、最初の一撃はエシャでいいんだよな?」


「そうですね、作戦通り、最初にデストロイを撃ちます。それが開戦の狼煙ということです。それ以降はご主人様の護衛ですね」


「ああ、頼む。アグレスと戦っているときでもハヤトをさらう可能性はあるからな」


 現状、強硬派のドラゴンはアグレスベリオンだけであり、残りは倒しているので一ヵ月は復帰しない。だが、穏健派のパット、ランダ、オドの三人に関してはスタンピードで倒したことはない。


 ヴェルはハヤトにアッシュ達のそばにいて欲しいと言ったので、その三人にさらうような指示することはないが、アッシュやレンはそれを知らないので、ハヤトを守ろうとするのは当然だろう。


 さすがにハヤトを守りながら戦うことは無理とのことで、エシャにハヤトの護衛を頼んだ。ただ、他のメンバーからデストロイだけは撃ってくれという要望もあり、最初とクールタイムが終わる三十分後には撃つことになっている。


「そういえば、ディーテはどうした?」


「それがまだ来てないんだ」


 この戦いにはディーテも参加する予定だった。だが、連絡もなければ、この場にもいない。


 ハヤトが少し心配したところで、背後から「遅くなったね」と声を掛けられた。


 振り向くと、ディーテがいつもの修道服で立っていた。


「すまない。遅くなってしまったね。色々と調べ物をしていたらうっかり時間を忘れてしまったよ」


「うっかりか。ならディーテちゃんは本物だね」


「ハヤト君、そういう見分け方はちょっと困るんだがね?」


「二人とも何を言っているんだ? そろそろだから気を引き締めてくれ」


 アッシュはそう言って北の空を見つめた。アグレスベリオンはその方向からくるのだろうと、ハヤトも同じように北の空を見る。


「さて、それじゃそろそろ構えておきますか」


 エシャは左足を立てて片膝立ちをしてからベルゼーブを構えてスコープを覗く。


 直後に北の方から大きな咆哮が聞こえた。


 全員がそちらを見ると、空に黒いドラゴンが飛んでいるのが見えた。


「来るぞ! アグレスベリオンだ! 戦闘準備!」


 アッシュがそう叫ぶと、全員が武器を構える。


 アグレスベリオンはかなりの速度で飛んできて、あっという間に目の前の地面に着地した。全長が十五メートルと普通の創世龍よりも大きめのドラゴンなので地震のように地面が揺れる。


 そして咆哮。スタンをまき散らすドラゴンロアを放った。


 だが、ここにいる大半のメンバーには効き目がない。ハヤトの作ったスタン無効の指輪や腕輪のおかげだ。もちろん、エシャにも効果はなかった。


「デストロイ」


 魔法陣が十個、銃口からアグレスベリオンに向かって並ぶ。直後に銃口から放たれた光弾が魔法陣を壊しながら突き進み、レーザーのような太さになってアグレスベリオンに向かった。


 その攻撃はアグレスベリオンに直撃する。


 ハヤトがHPバーを見ると、五分の一ほど減った。相当な威力だったと言えるだろう。


 それを開戦の合図として、この場にいるメンバーが雄叫びをあげながら襲い掛かった。


「ハイヒーリングっす!」


 だが、女性の声がこの場所に響き渡ると、全員が止まった。


 ハイヒーリング。神聖魔法でHPを回復する効果がある。それは普通のヒーリングよりも効果が高く、HPの50%は回復する。


 それがアグレスベリオンに使用された。デストロイで減ったHPバーが回復したのだ。


「私がいる限りアグレスちゃんは負けないっすよ! どんな傷もイチコロっす!」


「お前出てくるなよ。狙われるぞ?」


 アグレスベリオンの背中にいる聖職者の恰好をした女性――ランダがアグレスベリオンに回復魔法を使った。さらには何かのジュースを飲んでいる。


 その場にいる全員が、まずはランダを先に倒さないとアグレスベリオンを倒せないと判断した。


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