1話:神在国からのお誘い
2018年、春、海津一郎は新卒で大手自動車販売会社に入社しセールスコン
テストでも優秀な成績で年収は同期でトップの手取り480万円奥さんは1,3、
5歳の子供をみる専業主婦。首都圏で駅近くの2DKのマンションに月12万円
で借りている。マンション諸経費、駐車場代6万円と、18万円(住居費)5万
円(食費)電気ガス光熱費3万円、税金、保険、医療保険、子供の習い事8万円、
スマホ3万円で、貯金は出来ない生活。
夏に家族で山陰へ家族旅行に行った。海近くの農家民宿に泊まり、その時に、
ご主人と酒を飲んで、いろんな情報を聞く事ができた。ここは本数は少ないが、
駅までバスがあるが、多くの人は車で15分のYG駅へ行き、スーパーで買い物
をしてくる。農協の直売所もあり午後に行くと売れ残り商品がたたき売りで安い、
また、港の近くの魚市場へ朝9時過ぎに行くと売れ残った魚が格安で手に入ので、
賢く生活していると老夫婦で、食費は月に2万円で税金、健康保険・電気・ガス
・水道代合計で月に8万円で生活できると笑った。
民宿のご主人が、あなたの様な若い大家族が来てくれると本当に助かるんですよ
と漏らし、奥さん話して一家で移住など考えてみてはいかがですかと言った。
翌日から2日間、近くの公共温泉施設へ行ったが料金は銭湯並みだが、大きく
綺麗な施設で、家族用の露天風呂から日本海に沈む夕陽を眺めた時に、なんとも
言えぬ満足感、幸福感に浸った。こんな、ゆっくりとした時間があるのかと気づ
いたのだ。港の食堂での魚料理も大盛格安。地元のお年寄りが、子供を見て、
うれしそうに会うたびに声かけてくれるのが、親としては一番、ありがたかった。
先日聞いた月8万円の生活費と言えばマンションの諸経費・と駐車場代、電気
・ガス・水道代程度ではないかと驚いた。この話を聞いて海津はの心にさざ波
がたち、海津の心の中に今の生活って本当に良い生活なのかという素朴な疑問が
わいてきた。マンションでは近所付き合いもなく、ただ生きるために毎日、身を
粉にして働いて、入ってきた給料のほとんどが出て行き、会社のノルマを達成、
意外、何も考えられない人生にむなしさが去来した。奥さんも、この旅行で本当
に幸せな暮らしって何だろうかと考えるようになった。
海津は営業所での新車の販売台数コンテストで、初めて新人の吉田和夫に負け
て報奨金五十万円を逃した。上司の課長から新人の吉田和夫はスーパルーキーと
誉められ海津一郎に対しては営業スタイルが時代遅れなのかもしれないと言われ、
もっと工夫が必要だとハッパをかけられた。吉田和夫の父は中企業の会社社長と
市議会議員をつとめており顔が広く、そのつてで彼は苦労せずに上客を多くつか
まえていき、その後も上客の家族、親戚の買替え需要で抜群の成績を残した。