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ドラマチック・ライフ  作者: Tom
First show
4/6

ネタばらし

そのまんま、ネタ晴らし回です。

013

「あれは夢か……?」

 目が覚めた途端、現実から目を逸らしたくてそんなことを言ってみた。

 でも現実だった。記憶に鮮明に残っている。嫌だ。鳥肌が……。

「大丈夫?」

 俺のそんな思考を遮る形で、俺の目の前に現れた、心配するような表情の天音。未だに不安な色を醸し出しているその瞳には、本当に俺を心配してくれたということがわかる。

 しかしはて、なぜか枕元が温かいな。ん? 枕? 部室にそんなもんあったか?  

 と、ここで自分の現状を再確認。颯海の恐ろしい言葉によってぶっ倒れた俺は、部室で眠っていたようだ。そして、なぜか俺の枕元が温かく、俺の顔を覗き込むように見ている天音……。

 ああなるほど、と、その情報で今の自分の現状を悟る。

「膝枕か」

「恥ずかしいから口に出すな!」

 殴られた。

 しかもグーで。

 顔面を。

「いった! ぶっ倒れた奴に対してひでーな⁉」

「膝枕したんだからいいでしょ!」

 柄にもなく耳まで真っ赤にした天音を俺の頭のある場所から立ち上がり、顔をトマトのように赤くしたまま腕を組んでそっぽを向いていた。

 まあ介抱してくれたようだし、それは感謝するか・。

「おや、お目覚めですか」

「hsaぁあさgo;avはdvがいvgsどあ;うdyくぁckじゃh」

 颯海を見た瞬間に思考回路がショートした。

「日本語を喋ってください……というか、なぜ凛さんの後ろに?」

「隠れたくもなるわ! 悪いな凛。ちょっと動かないでくれ」

「まあ心中お察しします……でも、こちらも悪ふざけがすぎましたね」

 まあな、劇の途中で……って、え?

「え、なに、お前ほとんど撮影だったじゃん。何言ってるんだよ」

「……天音さん」

「ええ。凛ちゃん。もうそろそろいいでしょう」

「え、何が?」

 するとその場にいる俺以外の全員がニコリと笑顔を作り、


「「「祝、『戦と愉快な演劇部!』、完成しました」」」


 わぁぁっ! とかいえぇい! とか、皆各々が騒ぐ。騒ぎまくる。

 俺を置いて。

「ってはぁぁぁぁぁっ⁉ 何だそれ、なんっだそれ⁉」

「見ての通り、今回の劇の主題は、演劇部で面白おかしく活動するあたしたち、つまり今までやってた全てが劇のリハーサルだったのよ‼」

「な、なんだそれ⁉」

「気づかなかった? あたしたちは劇を撮って後で直しをしたりするけど、この二日間は誰かが絶え間なく撮り続けていたことを。ずっと機材出しっぱなしじゃなかった?」

「た、確かにそういえば、最近はなぜかカメラをそのままにしていたとは……だがいや待て待て。今までのは何だったんだよ?」

「まあ台本作りみたいなものよ。日常を撮りたいし、劇としても成功させたいから、劇のときは概ね撮ったシーンを再現するつもりよ」

 そういうことか。だからあんなふざけた真似を……。

「ちなみに、さっきまでやってた劇は割と本気でやりたかったものよ。試しにやってみたのだけど……」

「やらせねーよ!」

「そうようねえ。劇とはいえ、颯海くんのセリフだけで気絶してたし」

「あんなもん聞かされたら卒倒するわ!」

「おや寂しいですね。僕の一世一代の大告白」

「劇の中での告白を一世一代にするなよ!」

「ワッターシノ意見無碍ニサレマーシタ」

「日本語が少し違うぞアイリス! せめて無視しろにしろ! そしてやっぱりお前の意見か! 今でも鳥肌消えねーよ!」

 まあとりあえず、と天音は切り替えて、

「今回はこれを台本にするからね! それじゃ、皆でこの二日間の記録を見ましょうか! 戦の家で!」

「俺の家かよ⁉ ってゆーかその劇の醍醐味ってもしかして……」

「あなたのツッコミよ」

「やっぱりかー!」

 俺の叫びは部室で虚しく反響するのだった。


014

しかし、そう思うと朝に挙動不審だったのは、この劇のせいだと合点がいく。あの映像を見たやつらは俺以外全員爆笑だったからな。ちくしょう。隠し撮りみたいなもんじぇねえか。

その後、先述したように録画した劇を俺の家族共々見た俺たち(どんな羞恥プレイだ)は、各々家へと戻っていく。ただし夜も遅くなっていたので、家の遠いアイリスや雫、静は颯海の圧倒的な財力でタクシーを使わせてもらって帰って行った。

 そして、あまり遠くない(というか近所)の天音は俺が帰りに送ることになり(あまり必要ではない気がするがな)、その道中。

「ごめんね」

 と。

 天音は柄にもなく静かな口調でそう言った。

「ごめんって……なにが?」

「黙って撮ったことよ。他に何かある?」

「なくはないがな、でもまあ、別にいいさ。必要なことだったし」

 実際、先に知らされていたらあの(自分で言うのもなんだが)渾身のツッコミは出来なかったろう。その点に関しては理解しているつもりだ。

「でもまあ、途中から楽しいからいっか、みたいな感じだったけどね」

「なんだとこのこの」

「あ、ちょ、やめてよもう。いたたたた」

 こめかみをぐりぐりして、仕返し。この二日間の苦労をくらえ。

「悪かったわよぅ。まあでも、楽しかったでしょ?」

「……まあな」

 というより……お前といると飽きないよ、ほんと。

 颯海を人の予想を裏切って俺をいじめるし。

 アイリスは悪ノリがすぎることもあれば、アニメネタが凄過ぎるし。あいつのせいで俺もたまにアニメ見るようになっちまった。

 雫はおどおどしてるけど、いつも紅茶美味しいし。

 静は目立たないけど、いつも天音を手伝ってくれる。

「ねえねえ、コンビニでアイス買いましょ! アイス!」

 そうはしゃぎながら、天音は俺の手を引く。

 元気だなぁ、と呟く。

 そして天音。

 お前はそのまま元気な方が――いや、お前が俺は――。

「わーったわかった。買ってやるよ」

「よっしゃー! 何にしよっかなー」

 ま、いいか。

楽しく過ごす。そのために。

 俺はある一言を言った。

「――――――」

 さて俺は。

 なんと言ったんだろうね。

・キャスト

鍵宮戦(かぎみやいくさ)

役 ・猟師(未登場)

   ・シンデレラ(笑)

   ・王子

幸坂(こうさか)颯海(はやみ)

役 ・狼

    ・シンデレラホモ

    ・仕掛け人

光矢(ひかりや)天音(あまね)

役 ・赤ずきん(現代風)

    ・シンデレラ

    ・撮影

    ・仕掛け人

秋雨(あきさめ)(しずく)

役 ・赤ずきんのおばあちゃん(即死)

    ・魔法使い

    ・仕掛け人

夜世凛(やぜりん)

役 ・音響&撮影

   ・シンデレラの姉

   ・仕掛け人

アイリス・S・ハーデナス

  役 ・赤ずきんの母

    ・シンデレラの姉

「「「では、ありがとうございました!」」」

「ってか俺以外全員仕掛け人かよ⁉」

Show must go on‼


この作品はオムニバス形式です。時系列は作品の中で語ると思いますが、更新した場合は時系列を後書きでまとめる予定です。

ありがとうございました。

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