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最果てにいたる冒険譚  作者: ange
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第2章 水は出会いを運ぶ

ミレンは悩んでいた。彼の目の前には、ふたつの標識。

「どっちだよ!!」

思わず叫んでしまうのも無理はない。その標識には───────


『 ←マグノタッテ→』


と書かかれていた。


「これはあれか?どっちに行っても着きますよーっていうやつなのか?だとしたらそんな優しさいらないわ!ありがた迷惑なだけじゃねぇか!」


野営することなく、歩き続けた精神がほぼ崩壊しかけている。野営をしないと決めたのには、ビーストウッドの門番の助言によるものだった。


『 そこらで寝るとエビルたちの餌になるぞ。ここからマグノタッテまでは歩き続けた方がいい。もしどうしてもというのであれば、10分の仮眠に留めておくことをおすすめするよ』


こんな言葉を聞けば、野営したく無くなるのは仕方ないことだろう。流石に寝ずに3日歩き続けることはミレンにはできなかった。途中、仮眠をとることもあった。だけどその度にエビルの鳴き声が木霊して、疲れを癒すことは到底できなかった。


「悩んでても仕方ないな。ん・・・こっちか」

ミレンは勘に頼ることにした。この勘は滅多に外すことがないが、外した時が怖いため滅多に使わないようにしている。


「はぁー疲れた・・・寝たいベットが恋しい・・・」

ブツブツ呟きながら、果ての見えない道を1人歩く。数分歩くと、目の前に川が見えてきた。

「ここらはもうマグノタッテだろうし、エビルもいないだろ・・・」

少し休憩を挟むため、川辺に近づくと、2人組がいた。綺麗なブロンズとシルバーの髪の2人の少女は、何かを洗いながら楽しそうに会話している。お喋りに夢中なのだろうか、ミレンが背後まで近づいても気づく気配が無い。


(マグノタッテの人か?)


「すいません。この道ってマグノタッテに通じてますか?」

一縷の望みを託してミレンはその2人に声をかけた。その声に顔をあげた見たところミレンと年の近い女のエメラルドの瞳が、驚愕と怒りに染まった。


「あんた・・・っ」


立ち上がりミレンに掴みかかる。


「ちょっと、シィ!やめなさいよ!」

もう1人の女に未然のところで防がれた。

「なんで止めるの、ハクだって知ってるでしょ!」

「そうだけど・・・」


(何がなにか分からない)

ミレンの前で言い合いが始まった。ミレンにはただただその状況に、困惑していることしか出来ない。シィとハク、会話から分かるのは2人の名前くらい。

(長くなりそうな喧嘩だな・・・)


「・・・あの!俺、この先にあるはずのマグノタッテに行きたいんです!」


いくら一人旅だと言っても、無限に時間がある訳では無いのだ。早く進めるならそれに越したことはない。こんなところで、喧嘩に付き合っている暇が惜しい。


「は?あるはずってあんた・・・」

何言ってんのこいつはという顔をする。そんな少女を窘めて、隣にいた少女は

「旅の方、ですよね?お名前伺ってもよろしいですか?」

丁寧な物言いだ。まるで正反対なように見えるのに、仲は良さそうだ。

「ミレンです」

「わたしはハクア。さっきからミレンさんに噛み付いているのが、シーファって言います。よろしくお願いしますね」

「・・・よろしく」

聞こえるか聞こえないかくらいの声で、シーファがミレンに挨拶をする。

(よろしくしたくない・・・なんかずっと見られてるし)

「ミレンさんは、マグノタッテに行きたいんですよね?案内しますよ。私達も丁度帰るところでしたので!ね?」

ミレンのことを凝視していたシーファの肩を叩く。ハクアのね?には拒否権があるように思えず、シーファは渋々といったように頷いた。


静かな道を、ミレン、シーファ、ハクアの順に横に並んで歩く。この並びになったのは、もちろんシーファの意見だ。いわく、よそ者の隣をハクアに歩かせられないそうだ。お前はいいのか、とモレンがシーファに問うと、『 私はいい、でもハクは市長の娘だからダメ』だそうだ。


(信用されてないんだなぁ。でもそれが当たり前の反応か)


1人で納得し、黙々と歩く。途中、シーファとハクアはこそこそと何か話していたが、会話の内容は何故か聞こえなかった。


突如開けた視界に、大きな門が映った。

「あ、見えました?あれがマグノタッテの唯一の入口の大門です」

会話をやめたハクアが誇らしげな顔で教えくれた。


(ここがマグノタッテ・・・)



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