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異世界で出張授業やってみよう

 王子殿下は天才である。

 ―――という事実を私が改めて思い知らされたのは、ゲスト講師として呼ばれた小学校で堂々と演説するルークを見た時だ。

 王位を継がないとはいえ、幼いころから公式行事やら何やらで慣れてるしゃべるはダテではないらしい。それ以外にも大学や専門機関でたまに講演することがあるとかで、トーク技術がハンパない。

 子どもに合わせた分かりやすい話し方に大きな身振り手振り、ものの数分で聴衆の心をつかんでしまった。さすがというほかない。

 て、待てよ。私この後やるの? ハードル上がりまくりじゃないか。むしろこのままルークがやってくれないかな。

 とはいえ上手い人のは素直に参考にしようと聞く私だった。

 私の中でルークの評価はとっくに地面にめりこんでるが、ちょっとだけ見直した。

 ……のがいけなかったんだと思う。

「―――とまぁ、前置きはここまでにして。今日は我が妃の特別授業だ。そう、ミドリはかわいくて……」

 大馬鹿天使様はよりによって盛大に私のことを語り始めた。

 ぎゃああああああああ!

 悲鳴をあげなかったのは怒りと羞恥が限界超えてたからだ。

 ふざけんなこの阿呆! なにうっとりして妄想ぶちまけてんの?! その頭かち割っていい?!

 心の中で罵倒しまくる。

 見よ、先生方や保護者の生温かくいたたまれない視線。

 やめてえええええ。

 子どもの前で話す内容じゃないし!

 具体的に何しゃべってるかは削除しておく。でないと私が死ぬ。精神的に十回くらい死ねる。

 護衛としてついてきたダンさんなんか、半笑い浮かべてた。

「うーわー、これはねーわー……」

 言わないでええええ。

 ルークはまったくダメージ受けておらず、私一人が致命傷負ってるという現状である。

「頭いいんだか悪いんだか分からねーな、あいつ。すげぇノロケ。まぁ半分は惚気たいだけで、もう半分は牽制なんだろうな。だとしても引くわ。愛されてんなぁ、嫁ちゃん」

「あんな愛情いらない!」

 王子殿下をどうしてくれようか、不敬と言われようが牢屋に入れられようが、真剣に考えてた時。

「……とにかく俺の貧弱な語彙では語りつくせないほど妻はすばらしくて、一番すごいのが……」

「ゲッ!」

 膝の脂肪って言う気だこいつ!

 瞬時に察した。

「それ以上言わせるかああああ!」

 公衆の面前でデブだってバラされてたまるか!

 私は恥も外聞もなく全速力で壇上に駆け上がり、ルークを突き飛ばした。

 すでに恥なんかばらまかれまくってんだから、もはや怖いものはない。

 ……なのに、あっれぇ? びくともしないんですけど?

 私は首をかしげた。

 おかしいな、助走つきで全体重かけたんだけど。

 殿下はぱっと顔を輝かせた。

「ミドリ!」

 え、かなり待て。今のどこにうれしい要素がある。

 かぎりなく嫌な予感に襲われ、後ずさろうとした時、満面の笑みの天使様に抱きしめられた。

「ぎゃあああああ!」

 あ、今度は声出た。

 うれしいのかうれしくないのか。

「今の、顔真っ赤にして突撃して来るのすごくかわいかった! 照れ屋だよね。だからつい困らせてみたくなるっていうか」

「わざとかこの性悪!」

 必死にもがくが、ちっとも拘束緩まない。

「さんざん周りから結婚しろってせっつかれて嫌気がさしてたけど、納得した。こんな幸せな生活が待ってるとは。というわけで皆、大人になったら俺みたいに好きな人見つけて結婚するといいよ」

 私は欠片も微塵も幸せじゃない!

 つーかマイクをオフにしろ、小学生にろくでもないことふき込むなっ!

「放せえええええええ!」

 両手でつっぱり、顎をぐぎぎぎぎぎと押す。

「やだ」

 誰か助けてー、おまわりさーん! ここに危ない奴がいます!

 助けてくれたのはダンさんだった。

「えーと、これオレがどうにかしなきゃ駄目なやつだよな……やりたくないんだけどな……」

 見かねてマイクを借り、

「はい、つーわけで挨拶終了―。ルーク、いちゃつきたきゃ後で好きにしろ。嫁ちゃんの紹介と本人の挨拶はちょっとそこの誰かが離さなきゃできないんで、割愛な。……悪いけど先生たち、そいつが落ち着くまで場つないでくれや」

 確かにフォロー入れないと駄目だと、慌てて先生たちがマイク握った。

 ありがとうございますすみません。

 罰ならこいつに与えてください。ぜひともしばらくどこかにぶち込んでおいてくれると助かります。

 できれば百年単位で超厳重に封印しといてください。

 謝罪できたのは後になってからで、この時は悠々とお姫様抱っこなぞしおって壇上を下りたルークをどつくのに精いっぱいだった。

「なんっっっであんなことしゃべったのよ?!」

「え? ミドリの惚気なら三日連続でしゃべれる自信あるよ」

「そんな自信は遥か彼方地上へ投げ捨ててこい!」

 ドンと力任せに胸板を殴る。それでもルークは平然としてる。

 こいつは防御力も高いらしい。常人で女の私の力じゃ痛くもなんともないようだ。

「……嫁ちゃん。たぶんそうやってポカポカ殴るのも逆効果だな。こいつむしろ喜んでる」

 えっ……ポカポカじゃなくボカボカ殴られて嬉しいの?

「え? マジ?」

 そっちの変態のケもあったのかと物理的に引いた。

「やめちゃうの?」

「ほら、危ない発言してる。一応きくけどそれ計算か天然か? 前者なら出席者に嫁ちゃんが惚れられないようどうするかって悩んでたの知ってるからまぁよしとして、後者ならマジモンだぞ」

 たぶん後者だと思う。

 でもおかげで冷静になれた。

「何言ってるんですか、ダンさん。私は美人でもないし、みんな単に物珍しいだけでしょう。間違いなく後者ですよ」

「確かに嫁ちゃんは『この変人のとこに嫁に来てくれた救世主』だと思われてるけどさ」

 いつの間にかジョブ増えてる。

 私復活できないし、9人以上いる究極の救世主の一人でもないんですけど。

「うんうん、その奇人変人の俺が一発で落ちた、つまりそれほどいい女なんじゃないかって言い寄る男がいるかもしれないだろ。実際ミドリはいい女だし。そういう奴は潰しておかないと」

「ダンさん、この脳みそおかしい人間、口に雑巾つっこんで羽交い絞めにしといてくれません?」

 王子殿下にすることではない行動を護衛に頼み、いいかげん授業を始めることにした。

 教える折り紙は小学生ができる簡単なものだ。小1を受け持ったことあるんで、どの程度なら大丈夫か分かってる。

 事前に作成しておいたスライドを使い、動画も駆使して説明する。

 ここで普通と違うのは、左利き右利き両方のやり方を載せたことだ。

 簡単に言うと、右利きと左利きでは折り方が真逆になる。ちょうど鏡で映したように。

 自分自身の経験から、違う利き手の折り方を見本で見せられても子供ではやりづらいと知っている。ある程度の年齢になれば自動的に脳内で反転して実行できるが、小1じゃまだできない子も多いんだ。

勤めてる時も、私はこうしてた。平仮名教えるのでも、普段は合わせて右手で書くけど、生徒に左利きがいれば必ず左手での書き方も見せた。

 これは左利きの子にとても好評で、私の受け持ちクラスでは左利きの子が書き順で戸惑うことも鏡文字を書くことも、間違った形で字を覚えることもなかった。鉛筆の持ち方もちゃんとしていた。

 それを見た右利きの先生が納得してた。

「これまで左利きの子になんでこうなるの?って言ってただけだったけど、そういうことか。もし私が左手で見本を見せられて、できるかと言われてもできない。大人の今でも無理なのに、子供ならなおさら」

 そこで動画を撮り、そっちのクラスでも使ってもらった。

 これが広まり、学年クラス問わず、左利きの子が困ると私の所に来ることになった。文字に限らず、楽器の弾き方や手縫いの仕方、果ては日常生活に至るまで。左利きが困ってることって意外とあるのよ。

 さて、今回は事前に一人ずつ折り紙を配ってもらい、下敷きを持ってきてその上でやってもらった。

観覧してる大人にも配ってある。折るための台は事務用品会社で不要になった在庫処分・廃棄予定のクリップボードをたくさんもらってきた。これもリサイクルだ。終わったらそのまま学校に寄付することになってる。図工で写生する時に使えそう。

 まずすごく簡単な犬やチューリップに始まり、少しずつレベルアップ。船やピアノ、花と変形でメダル。メダルはけっこう使えるからね。

 最後は鶴だ。

 やっぱりこれが一番好評だった。

 この学校はアンジェ族の子が多く、鳥モチーフが好まれる。とはいえ他種族の子もいるんで、できる限り彼らの種の折り紙を紹介した。

 これにはルークがかなり役立ってくれた。いくら私が小学校の先生をやっていたとはいえ、代表的な折り紙しか覚えていない。

「こういうのがあったと思うんだけど、作り方忘れちゃった……」

 とこぼしたら、即興で考案してくれたんだ。

 さずが発明王。素直に感心した。

 無駄に技術が高く応用力のあるルークは、「思いついた」とか言って折り紙で城を再現してた。芸術家か。レベルが違う。

 折り紙の大会とか出たら圧勝だろうな。

「―――できましたか? じゃあ、上級生の子たちに手伝ってもらって糸でつなぎましょう」

 数十羽ずつまとめ、千羽鶴ができあがった。

「完成しましたー! みんな、ありがとう。これは千羽鶴といって、私の国では千個折って飾ると願いが叶うというおまじないなんです。みんなのお願いもきっと叶うと思いますよ」

 学校に頼んでみんなが見えるところに飾っておいてもらう。

 かくしてどうにか特別授業は終了した。

 いやほんと、そこの変人の乱入がなくてよかった……。何を心配してたって、それを一番心配してたのよ。

「ルーク、大人しくしててくれてよかっ……ちょっと待て。何それ」

 あきらかに専門的な撮影機材を構えた天使様に尋ねる。素人でも分かるガチっぷり。

 授業中は集中してて気づかなかった。

「宝物として永久保存しておくため。世界一の画質で撮れるカメラ開発したよ。あちこち配置して360°抜かりないし、ドローンも飛ばして上からも撮った」

「そんなのも発明したの?! って、撮影はTVのニュース用だけだって話だったじゃない! さんざん頼まれてようやく一瞬のニュースだけならって許可したのよ?!」

 そうじゃないとルークが勝手にとんでもない情報つけて流すとダンさんに忠告され、仕方なく承知したんだ。なのに結局撮ってる!

 しまった、こっちの世界のドローンは動力が電気じゃなくサイコキネシス。音がしないんで気づかなかった。

「TV局に渡すのは俺が編集した部分だけだよ」

 撮影するのはルークで、TV局じゃなかったのか!

 だまされた!

 絶対隙を見てデータ破壊してやる。

 決意をこめて睨みつけたら、なぜだか「仲がよろしいですねえ」とあちこちから聞こえた気がした。

 どこをどうしたらそう見えるのか、ぜひご教授頂きたい。


   ☆


 授業後は簡単な質問タイム。

 ただし機密上答えられない質問もあり、そこはルークがごまかしてくれる手はずになってる。

 ……のに、なぜだ。

「殿下のどこが好きなんですか?」←ある意味尊敬の眼差し

「よく殿下の妃になろうと思いましたね……すごいです。どうして?」←ある意味興味津々

 こういう質問ばっかなのは?!

 頭をどこか固い壁に打ちつけたい。そうしたら地球に戻れないだろうか。いっそ普通に夢オチ希望。

 しかし残念ながら夢ではなく。私は妃じゃないと言う前に奇人殿下がしゃべりだしたんで物理的に口塞いだ。

 そしたらさらに微笑ましい&涙ぐましいといった目線が向けられた。

 こりゃダメだと遠い目のダンさんが、その手の質問はナシでと言ってくれた。

「では、子どもが宿題やるの嫌がるんです。どうにかできないでしょうか?」

 マトモな質問がきた。

 ……うーん。

 私はうなって、

「全員に効果的かは分かりませんが……。ええと、まずこちらの学校では宿題やったら保護者がチェックしてサインするシステムですか?」

 先生たちに確認したところ、低学年では担任が毎週宿題・主な連絡事項を記載したプリントを配布。表になっていて、保護者が宿題確認してサインする欄があるらしい。高学年になると自分で連絡帳に書くが、音読カードはある。

「なら……。これは私の母がやってた方法でして。ほら、表だとサインする欄って縦か横か一列に並んでるでしょ? そこに何日かかけて完成するイラストを描いていくんですよ」

 例えば右から始まる横の列だったとして。一マス目は犬の頭、二マス目が胴体、三マス目が尻尾、みたいな。

「あえて一日じゃ完成しないようにすると、『次の日宿題やれば続き描いてくれる!』ってやる気出るじゃないですか。母が自分のためだけに描いてくれるのもうれしくて、まんまと私はのせられてやりました。母もわざと面白いイラストにしてくれて、毎日楽しみで」

 宿題は嫌だけど、やればお母さんが面白いの特別に描いてくれる。そうやって自発的にやった。

「ああー……」

「なるほど」

 あちこちから声があがる。

「やっぱり無理やり強制されたり怒られたりしてやるより、自発的にやったほうが覚えますしね」

「あの……でも、その、絵は下手でして……」

「棒人間でいいじゃないですか。動きを変なのにするだけで子供は喜びますよ。大事なのは自発的な行動を促すことであって、絵の上手い下手じゃありません」

 絵のコンクールじゃないんだからさ。

「母もそんな上手くなかったですよ。それでも子どもにしてみればうれしいんです。というか、むしろ下手なほうがネタとしてオイシイ。ま、この方法はそんなに的外れでもないと思うんです。私で成功してるのと、翌年の担任の先生もサイン欄に毎日一文字ずつ書いていって一週間や一か月で文章が完成するようにしてました。『うんどうかいがんばろうね』とか『なつやすみたのしみだね』とか。そう、文章でもいいわけですよ」

 ふんふんとうなずく先生たち。

「子どもによっては興味ない子もいると思うんで、全員に使えるとは言えません。もっといいやり方があるかもしれませんし。あくまで一つのアイデアとして、です」

 サイン欄にいたずら書きなんてふざけてるのか、って怒る先生もいるかもしれないし。

 万人に通用する有効な手段ってのはないのよ。教育って難しいよね。


   ☆


 お礼ということで、お昼は給食を児童と一緒にごちそうになった。

 クジで決まったクラスでごちそうになる。

「んー、おいしい。やっぱり出来立てが一番ですよね~」

 こっちの世界の給食も地球と遜色ない。食べ物が食べられないのは死活問題なんでほんと安心する。

 しかし校長が顔を曇らせた。

「ええ……でも、だいぶ前から食べ残しが問題視されてるんです。給食調理の方々が丹精込めて作ってくれたものを廃棄するのは心苦しくて……」

「ああ、こちらでもそういう問題あるんですね」

 私はちょっと考えて、

「ラップあります?」

「え?」

「あるよ」

 出してきたのはルークだ。

 一体どこに持ってた。そして何に使おうと思って携帯してた?

「あれこれポケットにつっこんで携帯するのやめなさいって言ったでしょ。まぁいいや、これで」

 余ってるごはんをおにぎりにする。並べて声をかけた。

「食べたい子、手を挙げて!」

「はいはいはいはい!」

 一斉に手があがった。

「五個しかないんだ、ジャンケンねー。……負けちゃった子、ごめんね、お味噌汁と魚は残ってるよ。こっちはどう?」

 わらわら子供たちが集まり、あっという間にはけた。

 担任も校長もぽかんとしてる。

「私が最初に赴任した小学校でも給食の腰が深刻な問題でして。経験浅くて上手く対処できなかった私に、当時の校長先生が助け舟出してくれたんですよ。ラップ片手に来て、こうやっておにぎりにしてくれて。そうしたら不思議なくらいみんな食べたがりましてね」

「なるほど……!」

 現金なもので、人間てのは形が変われば食べてみたくなるもの。それが小学生にとっては学校で一番偉い人の校長が作ってくれたものならなおさら特別感があったわけだ。

「すばらしいアイデアですね! わたくしも明日からラップ片手に各クラス回ってみます」

「校長先生もお忙しいでしょう。ご無理ならさらず。……ん? ルークはなんで機嫌悪そうなの?」

 眉間にシワが寄ってる。せっかく唯一の取柄の綺麗な顔が台無しよ。

「その校長って男?」

「年配の女性よ? 経験豊富なベテランで、たくさんお世話になったわ。実は私が小学生の頃の担任の先生でもあってね。母が宿題チェックサイン欄にあんなの描いても怒らず笑ってくれた」

 途端にルークの機嫌メーターが直った。

「そうか。ならいいや」

「何が?」

 一体なにが不愉快でなにがいいのか。

 首傾げたら、なぜかダンさんにため息つかれた。

「ま、おにぎり作戦はご飯しか使えません。パンじゃ無理でしょ。どうしても残ってしまうのは、たい肥にどうですか?」

「たい肥?」

「理科や生活の授業で野菜や花を育てたりしません? そこで使うたい肥にするんですよ。なければ近隣の農地を借りて、農家さんの助けを借りて作物を作る。とれたものは給食の材料に。余ったものや、使うよりも大量にたい肥ができてしまうなら売って、学校の備品代などにあてる。あと……ルーク、確か『頼まれごとリスト』に地方の学校では税収低くて備品も満足に買い換えられないとこあるってあったわよね?」

「あったよ」

 天才発明家はリスト全部覚えてらっしゃる。

「手入れ不要で簡単に栽培できる果樹を植え、収穫を売れば? ただし収益は備品購入など学校にとって必要なものに限る。例えば銀杏、柑橘類、ナッツ類……」

 地域・気候によって適してるものが違うと思うんで、そこは地元農家などプロに相談の上で。

「たい肥作りも児童に手伝ってもらうのよ。すると食べ残しも自然と減るし、残してもゴミになるんじゃなく畑の栄養になるって食育にもなる。たい肥の作り方知ってる?」

「知ってるよ、家庭用の生ごみ処理機作ったことある。ペットの排泄物もたい肥にできるやつ。電気使わず、微生物の力だけで分解できる。あれ大型にすればいいだけだよね」

「さすが」

「小学校は公的機関だから一応国に話通さなきゃならないけど、姉さんに直で言っとくよ。なるべく早く設置する」

 こういう時、王子は役に立つ。

 人間、一つくらいは取り柄があるもんだ。

「もう一つついでに話しておいてほしいことがあるの。この前、内装工事会社とかから色々不用品もらったでしょ? 紐以外にも色々。そういう会社や店でいらないものを学校・児童館ていった教育機関や子供向けの公的機関に寄付するサイト作れない? 画像付きで載せて、いりませんかって引き取り先募るの。対象を限定し、一般人には見れないようにするのは転売防止のため。タダならなんでも欲しい欲しいって言いだす人もいるでしょうしね」

 よって教育機関に限定する。使用目的も「図工の授業で使う」や「児童館の工作の材料」などに限る。

 寄付は善意のもの。それを悪用しちゃいけない。

 また寄付する側もゴミを押しつけるのは駄目だ。

 双方とも常識とルールは守ってもらう。

「あくまでも『寄付』だから、欲しい側が送料負担か自分で取りに行くの」

「そうでないと、タダでくれるし送料もかからないならいくらでももらっちゃえって考える人いるだろうね。教師も人間だから。学校でもらうってことにして、自分のものにしちゃうケースもありそうだ。そうさせないよう対策練る必要はあるかな」

「そうね。でも上手くいけば寄付する側も廃棄量が減る上にゴミも削減できる。学校側も材料費や備品代が浮く。不用品が子供たちの作品になるなら、一番いい使い道だしね」

「そうだな、いいアイデアだと思う。さすがミドリ、俺のミューズ」

「本当ですね! 殿下のお妃になられる方はやはりすばらしいです!」

 あ、しまった。

 反対に自分の首絞めた? 「この変人殿下の妻はあなたしかいません」ってさらに賛同を深めた気がする。

 そんなつもりじゃなかった。ていうか逆に逃げたいんですが。

 悪役令嬢が破滅ルート回避にフラれたいとか、ヒロインに転生したんで特定のキャラを落としたいとかはよくあるけど、奇人変人変態天使王子様の奇行から逃げたいんでおうち帰らせてくださいってのは何。

 いやいや、家に帰りたいのは誰でも思う普通の望みであって、そんな無理難題じゃないよ?!

 どうにか協力者を見つけて神殿に行き、帰る作戦が失敗したのを感じた。

 目下、私の敗北更新中。

 宿題チェックの保護者サイン欄、これは私が実際にうちの子にやってる方法です。最初「普通にサインじゃつまらんわ~」という無駄なサービス精神*つい面白くしなきゃいけないという原作者のサガ、を発揮し、ウケ狙いの絵を描いたのがきっかけ。

 バカ受けでした。

 以後、描いてもらいたいあまりに子どもが宿題終わらせるようになったんで毎日描いてたら、すぐネタ切れきました。その頃は1マスに描いてたんですよ。

「めんどくさい~。だったら何マスも使って描いてやればいんじゃ?」と思い、5マスくらいで完成する絵を描くようになりました。変なポーズしてる愛猫とか。それでもそろそろネタ切れてきてますが…。

 そんな上手くないしね? 漫画家じゃなくて原作者だからね。「ま、下手なほうがウケるし、いっか!」と開き直っております。お疲れの先生にも楽しんでもらえたらと思うので「いいかげん真面目にやってください」ってそのうち怒らないでくださいwww

 これが万人に通用するとは思いませんが、困ってる親御さんはダメ元でやってみては。

 北風と太陽。無理やりやらせるより、自発的にやるよう上手くもってくほうがいいと思うんです。一応教師の端くれとして生徒を見てきた者としては。

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