5話
「でもさ、藤さんはもしかして眼鏡を外して、三つ編みやめたら実は可愛いってパターンなんじゃないの?」
僕の思いつきの発言。
藤さんは少し目を見開くと、眼鏡の縁を掴み、俯く。
照れている藤さんは新鮮だなぁ。
「そ、そうかなぁ。ちょっとやってみる」
分厚い黒ぶち眼鏡を外し、三つ編みを解く。
そこに現れたのは――
「あ! いや、その……。うん、まぁ」
眼鏡を外し、三つ編みを解けば美人になれる――そんなものは幻想である。
僕らはそれを悟った。
「君たちって本当に最低だよね。普通は嘘でも可愛いとか言うよね」
「俺は嘘が苦手だ」
「真実は時に残酷なり」
「でもまぁ、悪くはなかったよ。うん、期待していたほどじゃないだけ」
男子3人の意見がよっぽど気に食わなかったのだろう。
藤さんは30分口をきいてくれなかった。
「でもさ、君らの問題はその性格だって再認識できたよね」
まだ根に持っているのか。
「どゆこと?」
「君らって顔は悪くないじゃない。特にヨシマロ君は美男子でしょ。まつ毛長くて、女の子みたいに可愛いし、髪も綺麗。言ってて腹が立ってくるわ」
「かたじけない」
「褒めてないし。それと大介君は渋くて、意外とカッコいいって言っている女子もいたり、いなかったり」
「どっちだっつーの」
「藤さん、僕は?」
「琉飯君? まぁ、琉飯君もそこまで悪くないけど、なんか猿顔だしね。可愛い系?」
僕の繊細なガラスのハートに新しい傷が刻まれる音が聞こえた。
「じゃあ、まぁ次回の活動日までに、なりたい自分のイメージを具体化させておくことをそれぞれの宿題にして、今日は解散にしよう」
藤さんの疲れ切った言葉が終了の合図となった。
何ともギクシャクした雰囲気の中、第一回『成功者倶楽部』の活動は終わった。