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温もり ルーフェイア・シリーズ05  作者: こっこ
Chapter:01 遠出
9/16

Episode:09

「いいかげんにして。採血だったら後でして、凍らせて送るから。

 それにあたし、採血しにここへ来たわけじゃないの」

 早々に会話を打ち切って引き上げようとする。

 けど。


「――よく見るとなんだ、その格好は? ずいぶんな安物を着ているな」

「ファールゾンっ!」

 さすがのあたしも、思わず怒鳴りつけた。


 彼に悪気がないのは分かっている。研究ばかりで世間の常識をまったく知らないだけだ。

 でも、言っていいことと悪いことがある。

 ただ当のファールゾンは、なにを怒鳴られたかさえ分かっていない。


「だってそうだろう? グレイスともあろうものが、そんなそのあたりで売っていそうなものなど。

 こっちへ戻ればひとつも不自由はしなくてすむのに、君の考えていることがわからないよ」

「……ファールゾン=ゼニア?」

 あたしの声が、刃を含む。


「ん? なんだ、怖い顔をして?」

 次の瞬間、あたしは動いていた。強烈な左の回し蹴りを食らって、あたしより大柄な彼が吹っ飛ぶ。

 イマドが口笛を吹いた。

 それを後ろに聞きながら、お腹をかかえて転がったままの彼に、あたしは歩み寄る。


「早く帰ってもらえる?」

 これ以上、みんなに嫌な思いをさせたくない。

「帰ってくれないなら、あたしも考える」

「うぐ……いやだから、君にはそれは、ふさわしくないと……」


 あたしはもう一歩進み出た。

「何も分かってないのに、何が言いたいの?

 それよりこれ以上みんなに嫌な思いさせるなら、容赦できないわ。今ここであたしが何をしても――どこからも文句は出ないのよ?」

 この恫喝に、ファールゾンの顔から血の気が引いた。

 実際、いまあたしが口にしたことを実行しても、本当に文句は出ない。そのことは彼も知っている。


「分かったなら、少しは慎んで。

――だれか、ファールゾンを連れていってくれる?」

 少し離れたところで成り行きを見ていた家の者に声をかけると、彼らは慌てて走り寄ってきて彼を連れていった。

 それを見届けて、みんなの方へ振り返る。

「あの、ごめんね。うちのが、なんかヘンなこと……」

 許してもらえるとは思えないけど、ともかく謝った。




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