Episode:08
◇Rufeir
――どうしてこの船が、ここに?
それがあたしが、いちばん最初に思ったことだった。
一見豪華なだけの、普通の船。でも、あたしには分かる。これは間違いなく、シュマー家のやつだ。
こんな連絡、まったく受けてなかった。だいいちこんなに目立つマネをして、いったいなんのつもりなんだろう?
そのうち船から、人が降りてきた。うち、何人かは見覚えがある。
出来れば気づかないことを祈っていたけれど、ムリだったみたいだ。そのうちの一人がしっかりとあたしの姿を認めて、こちらへ歩いてくる。
あたしよりずっと年上の青年。髪も瞳も同じ色。
「ねぇあれ、兄弟?」
「ううん……」
じっさいは、従兄弟だ。けどここで、そう言うわけにもいかない。
でもそれを知ってか知らずか、彼はまっすぐこちらへ来ると口を開く。
「グレイス、ちょうどよかった。頼まれていた物を持ってきたところだ」
「その呼び方はやめて。それに届け物なら、学院宛に送ればすむでしょう? なんでわざわざ、こんなことをするの?」
つい声がとげとげしくなってしまうのは、自分でもどうしようもなかった。
けど彼、あたしのいうことなんか聞いていない。
「ケンディクに二家族駐在させることになったんだ。なにかあれば、そこへ連絡を取ってくれればいい。学院の通信網は、まったく信用出来ないからな。
それと届け物一式は、これからちゃんと学院へ持っていくさ。君に持たせたりはしないよ」
友達が一緒にいることなんて、まったく気にしない。あたしが必死に事情を隠してるのに、それをわざと表に出そうとしてるみたいだ。
案の定、最初からある程度事情を知っているイマドはともかく、シーモアもナティエスもミルも訝しげな顔をしている。
しかもまだ、話は終わらなかった。
「それから、一度ファクトリーへ帰ってくれないか? 夏の精密検査をしていないだろう?」
「長期休暇でもなかったら、帰れるわけないでしょう? それにこんな話、ここでしないで」
どこまでぶちまける気なんだろう。
「別に構わないだろう。どうせ誰に分かるわけじゃない。
――すぐに帰れないなら、とりあえず採血だけさせてもらえないか?」
挙句に言いながら、専用の入れ物を取り出している。
彼は学者だ。主に医学系を修めていて、あたしや母さんといったシュマーの中でも血が濃い総領家の、主治医も勤めている。
だから一応、あたしの身体を心配してはいるんだろうけど……。