Episode:03
◇Seamor Side
ケンディクまでの連絡船の中、隣の美少女をシーモアは、なんとなく眺めていた。
不思議、としか言いようのない少女だ。
こうしていると華奢で儚げで、とても独りで生きていけるようには見えない。だがひとたびバトルとなれば、並ぶもののない戦女神と化すのだ。
(ほんと、アンバランスってやつだね)
まさにその一言に尽きた。
しかも性格にいたっては繊細としかいいようがなく、すぐ泣き出してしまう。
ただこれは周りの話では、シエラへ来る前が何かいろいろたいへんだったとかで、その反動もあるらしいが。
(けど、このカワイさで泣くってのは、やっぱ反則だなぁ)
たとえ彼女に非があったとしても、こちらが悪者にされてしまいそうだ。
船が揺れる。
もうそろそろ、ケンディクの街に着く頃だった。
「ルーフェイア、着くよ」
言って、気がつく。
少女は泣いていた。
(まさか、さっき言ったことで?)
思わず心配になる。ふつうならどうという言葉ではなくても、この少女は傷ついてしまうことがあるのだ。
もう少し、自信を持っていいと思うのだが……。
「ゴメン、あたしなんか言っちゃったかな?」
「ううん、違う、違うの。
あたしこんなふうに、友達と出歩けるようになるなんて、思ってなかった……」
シーモアの問いに、ルーフェイアはそう答える。
聞きようによっては、以前イジメたことを責めているような言い方だ。だがこの少女には、そういったイヤミなところはない。
本気で嬉しくて泣いている、と思って間違いないだろう。
(……言ってくれるねぇ)
とても同い年とは思えないほど華奢な少女にこう言われると、とても意地悪など出来なくなってしまう。
何より、あれだけの騒ぎをすべて水に流してくれているのだ。これ以上こっちから何かするのは、シーモアにしてみればプライドが許さない。
「ばーか。行くよ」
照れ隠しにわざとそう言うと、シーモアは荷物を肩にかけた。
「あ、ごめん」
涙を拭いて、ルーフェイアもついて来た。