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温もり ルーフェイア・シリーズ05  作者: こっこ
Chapter:01 遠出
2/16

Episode:02

 たったそれだけしか経っていないのに、あたしの生活は激変した。戦場にいたことが夢だったようにも思える。

 身内と離れたのも初めてだ。もっとも他のシュマー家の子供は、たいてい生まれた直後から親と別に暮らしてるから、あたしはかなり甘いのだけど。


 ただ確かに生活は平穏になったけど、その分カンが鈍ってしまいそうで、けっきょく毎日訓練施設に入り浸って、太刀を振りまわしてる。しかも校舎裏の訓練施設を禁止――これ以上魔獣を退治するな、だそうだ――されて、訓練島まで出るハメになっていた。

 まぁこの方が、思いっきりやれていいんだけど……。

 どっちにしても上級生になって、また戦場へ出るまであと最低四年、よほど気合を入れておかないとボケてしまいそうだ。


「なに見てんのさ」

「え?」

 シーモアに訊かれて、はっと我に返る。考え事に熱中してて、かなりぼうっとしてたみたいだ。

――戦場だったら死んでるな。

 自分に呆れてしまう。たった半年でこの調子だから、先が思いやられた。


「なんか面白いもんでも、あったかのい?」

「何見てたか、よくわかんない……」

「聞くんじゃなかった」

 シーモアが処置ナシ、って顔で肩をすくめる。


「まったくあんた、変わってて面白いよ」

「どういう……意味?」

「そのまんまさ」

 そのままってつまり、あたしが普通と違うから面白いっていうことなんだろうけど……。でもあたしってそんなに、変わってるんだろうか?


――たしかに戦場育ちの分、そのへんは極端だろうけど。

 そんなことを思っているうちに窓の外は、本土がだんだん大きくなってきて、砂浜が見えてきた。


「ここ、きれい……」

「ああ。夏なんかこの海、泳ぐのにサイコウだよ」

「こんなとこで?」

 世間って、案外ヒマなのかもしれない。


 でもそういえば、あたしは終わってから中途入学したからやってないのだけど、年間のカリキュラムの中に水泳が入っていた。

 思ってた以上に、シエラはのんびりしてるらしい。

――MeSがこんなふうで、いいんだろうか?

 まさかシエラへ来る前は、MeSがこんなのんきなところだなんて、思わなかった。命のやりとりをしないで済むぶん戦場よりマシ、なくらいだと想像してたから。


 でも、来てよかったと思う。

 こんなふうに友だちと街へ出るなんて、一生縁がないと思ってた。だいいち友だちが出来るとさえ、あたしは思ってなかった。

 きっと死ぬまで、あの戦場でだけ過ごすとばかり……。

 急に涙があふれてくる。


「ほら、ルーフェイア着くよ……ってゴメン、あたしなんか言っちゃったかな?」

「ううん、違う、違うの。

 あたしこんなふうに、友達と出歩けるようになるなんて、思ってなかった……」

 涙を拭きながら、慌てて説明する。

 聞いたシーモアが、ちょっと複雑な表情をした。


「ばーか。行くよ」

 それだけ言って歩き出した彼女の背を、あたしは慌てて追いかけた。




◇ご質問への回答◇

システムの都合上、直接返信できませんでしたので、こちらで。

ルーフェイアの太刀について、第1作ではタシュア先輩からもらった、第2〜4作では兄の形見となっている、との指摘メッセージを頂きました。

はい、そのとおりです。というのは第1作で出てきた太刀と、第2〜第4作で出てきている太刀は、別物のためです。

この件については少し先の話で、なぜ変わったのか出てきますので、申しわけありませんがお待ちください。

ご質問、ありがとうございました。

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