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温もり ルーフェイア・シリーズ05  作者: こっこ
Chapter:02 神話
16/16

Episode:16

「ほら、これやるよ」

「え?」

 あたしの目の前に、小さな包みが差し出される。


「これ……?」

「いや、いちおうその――俺からな」

「くれるの?」

 あたしがそう言うと、困ったように彼が頭を掻いた。


「だ〜か〜ら、俺からだって!」

「えっと、何が……?」

「だから、誕生日のプレゼントだっつーの!」

「あ……!」

 やっと意味を飲み込む。


「えっと、その、もらっていいんだよね……?」

「お前がもらわなかったら、誰がもらうんだ」

「あ、そっか」

 イマドがため息をついた。


「ったく、どこまでボケてんだ」

「ご、ごめん……」

 自分がなさけなくなって、なんだか泣きたくなる。

 でもその前に、イマドが包みをあたしに持たせた。


「開けられっか?」

「う、うん」

 リボンをほどいて、包み紙を破らないようにそっとはがしていく。中から箱が出てきて、それもそっと開けた。

「あ……♪」


 自分の顔がほころぶのが分かる。

 出てきたのは、可愛いキーホルダーだった。


「ごめんな、ンなちっちゃいモンで。

 まさかお前が、あそこまで大金持ちのお嬢さんだとか、思ってなくてよ」

「ううん、いい。これで、いい……」

 どうしてだろう? 悲しくないのに、涙が出てくる。

「大事に、するから……」


「ンなたいそうなモンじゃねぇって。

 それよりそろそろ、戻るか? いい加減暗くなっちまったし」

 言われてあたりを見回すと、確かにもう日が落ちて、空に星がまたたいていた。

 吐く息も少し白い。

「――そうだね」


 優しい潮騒の音を聞きながら、学院への連絡船に乗った。ほかに乗客はいない。

 船の後舷へ出てみると、街の明かりが遠ざかって、暗い海の上にゆらめいた。

 振り仰ぐと、煌く星が目に飛び込む。

 海にまたたく灯と、空にまたたく星。


 この光景を忘れたくない、そう思った。


Fin




◇あとがき◇

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。明日より第6作「表と裏」の連載となります。いままでどおり、毎日“夜8時過ぎ”の更新です。

明日は恐れ入りますが、こちらか筆者サイトのリンク、または検索サイト内よりお願いします。

感想・批評、メッセ等大歓迎です。お気軽にどうぞ。

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