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温もり ルーフェイア・シリーズ05  作者: こっこ
Chapter:02 神話
13/16

Episode:13

「いい、の……?」

「いいって」

 その瞬間――あたしの中で何かが、ふっと軽くなる。


 ずっと辛かった。

 父さんや母さんと一緒だったころと違って、誰もあたしの本当の姿を知らなくて、でもそれを知られないように隠して……。

 こぼれる涙が止まらない。


「あたし……シュマー家の、次期総領なの……」

「――なるほど」

 なんだかあっさりとイマドが納得した。

「これだけで、分かるの……?」

「いや、わかんねぇけど。でもよ、よーするにそゆ立場なんだろ?」


 いい加減と言えばいい加減だけど、イマドなりに理解はしているらしい。

 あたしはひとつ息を吸って、話し出した。

「うちの家、ふつうは『次期総領』はいないの。

 けどあたしは……グレイスの名前を持ってるから、特別で……」


 うちの家でこれを名乗るのは、あたし一人だ。逆に言えばそれだけ、この「グレイス」という名前には重さがあるということになる。

 もともとの由来は、家の始祖メイア=グレイスから来ていた。

 遠い昔、まだ人が神と争っていたころ――彼女は神を封じたのだという。


「あれ、それって言い伝えと違わねぇか?」

「うん、少し違う」

 一般に伝えられている伝説では、神は封じられたんじゃなくて、「逃げた」ってことになってる。

「魔法の力を手に入れた人間は、軍を組織して天へ攻め込んで……」

「けど、居なかったんだよな」

「うん」


 世界を創りなおすという神に、人は逆らった。門をくぐり天へ攻め込み、それを見た神は、地上を予定より早く焼き払った。

 同時に神は天界に怪物を大量に放ち、人間を襲わせた。一瞬にして人々はパニックに陥り、散り散りになって地上へと逃げ戻ったという。

 それでも戦い慣れたごく少数は、天の城へ攻め入り玉座までたどり着いたが、そこに神の姿はなかった。


「だから、逃げたんじゃないか、って話だろ」

 イマドの言うとおりだ。

 そのあと、人は天界から魔獣に追われて逃げ戻り、焼かれてさらに貧しくなった大地のせいで、互いに争うようになった。

 そして消えた神は、いまもどこかに潜んでいるのかもしれない。そう伝説は締めくくっている。


「ただ、うちじゃ、そこが違うの」

「えーっとつまり、シュマーじゃそのメイアとやらが、封じたってなってるワケか?」

 考えながら言う彼に、うなずく。

 そして、続けた。




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