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温もり ルーフェイア・シリーズ05  作者: こっこ
Chapter:02 神話
12/16

Episode:12

◇Rufeir

 話して……いいんだろうか?

 あたしは悩んでいた。

 自分がシュマー家だと言うのは、どのみちイマドには話さなければならないと思っていた。

 だからそれは、別にいい。


 だいいち今でも、イマドはあたしの特異体質に併せた薬を持ってくれていて、何かあったときは対応してくれることになっている。

 でも……その先は別だ。

 聞けば、いやでもあたしにまつわる一連の流れに、巻き込まれるだろう。

 そんなことに、イマドを巻き込んでしまっていいんだろうか?


――グレイスは死神。

 そう、昔ファールゾンが言っていたのを思い出す。

 でもそんなあたしに、イマドが意外な言葉をかけた。


「『グレイス』は、ンなに珍しいのか?」

「知ってる……の?」

「お前の普段のラストネームが、ホントはミドルネームだってことはな」


 どうやら母さんから聞いたらしい。

――またお節介して!

 ほんとうに母さんと来たら、油断も隙もない。


 あたしの本名は、ふだん学院などで使っているのとは、少し違う。グレイスは実際には、ラストネームではなくミドルネームだ。

 ルーフェイア=グレイス=シュマー。それが本当の名前だった。


 シュマー家と言うのは、軍関係者の間ではわりあい有名だ。かなり長い間続いている傭兵の家系で、子弟を戦場で育てることで知られている。

 ただ家の人間は実際にはシュマー姓を名乗らないから、ちまたじゃ噂だけで誰も実態はしらない、という状況になっていた。

 それにしてもいったいどこまで聞いているのか、不安になる。


「けどそしたら……何を、知ってるの?」

「だから、お前の名前だけだって。

 けどグレイスってのがメチャクチャエライのは、さっき分かった」

「そっか……」


――こんなに察しがいいなんて。

 けど、次に思い出す。イマドに隠し事は、できたためしがない。


「で、グレイスってなんなんだよ?」

 気軽な調子で彼が訊いてきた。

 どう説明するか迷う。

 だいたい、ちょっと説明して分かるようなものでもないし……。


 違う。

 それ以前にあたし、どうしてこんなにすらすら話してるんだろう?

 イマドは……関係ないのに。

 知ってほしいのと、言ってはいけないのとの間で、あたしは黙ってしまった。


「ま、さっきも言ったけど、言いたくなきゃそれでいいしな。

 けどよ……他に誰も知らないっての、けっこうつらいぜ」

 はっと顔を上げる。

 イマドと視線が合った。

 寂しいのか哀しいのか分からない、イマドの不思議な表情に、なぜか涙がこぼれた。



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